妹のいる食事

「ただいまー」


「お帰りなさい、お兄ちゃん」




俺がリビングのドアを開けると透き通った声が聞こえてきた。その声の主は菜月だった。いつもは仕事で夜遅くに帰って来ることが多いので、この時間帯に家にいるのは珍しい。




「うぉ、菜月か。びっくりした。あと今日、早いな」




「うん。今日は午前で仕事が終わったから。でも、明日は学校が終わったらすぐ、ラジオの生放送があるの」




4月から菜月の生放送のラジオが始まった。放送日時は毎週火曜日の夕方6時から2時間。中学1年生で個人のラジオ番組を持つ菜月にはつくづく感心してしまう。 




「お兄ちゃん悪いけど、家に帰ったんだし、早速着替えてきて。お兄ちゃんって、いつも制服にシワが付いてるから大変なの!」




菜月は少し口を膨らませ、注意する。




「あぁ可愛いなぁ・・・」




なんては言える訳無いが、心の中で叫ぶとしよう。すると菜月が、




「な、何ニヤニヤしてるの!?気持ち悪いって・・・結構、いや、まあまあ、いや・・・ほーんの少し・・・」


「そんな微妙に言ってもらうより、ハッキリ言ってもらうほうが良いんだけどな!?」




俺はそう言い、鞄を持ち上げ2階へ上がる。そして部屋の中へ入り、勢いよくクローゼットを開ける。


俺は制服のブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを一つずつ外していく。そして部屋着を手に取り、着る。俺が帰ってからのいつもの行動だ。すると、突然ノックの音が聞こえてきた。




「お兄ちゃん?ご飯できたよ?冷めると不味いから、早く降りてきてねー」


「あー分かった。すぐ行く」




俺はブレザーをハンガーに掛け、ワイシャツを手に持ちリビングへと向かった。




「いただきます」


「いただきます!」




今日の晩ご飯は、ライスとコーンスープ。それに、グラタンとサラダだ。俺の一番好きな料理であり、菜月の得意料理でもある。




「ん~!美味い!最高だぁー!」




濃厚な味に舌鼓を打つ。ポテトグラタンの柔らかいじゃがいもと、パリパリのチーズが程好くマッチしている。




「ヤバイ!美味すぎる!最高!」


「ふふっ、ありがとうお兄ちゃん。喜んでくれて何よりです。最近お兄ちゃん、コンビニ弁当しか食べていないでしょ?ちゃんと栄養のある物を食べないとダメだよ!」




菜月が食べる食事は、自然と食が進む。で、10分ほどで完食。




「ご馳走さん。めっちゃ美味かった。ありがとよ。じゃ、俺風呂入ってくっから」


「は、早いね・・・分かった。じゃあ私、多分お兄ちゃんがお風呂から上がって来た頃には、多分自室にいると思うから呼んでください」


「おうよ」

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