第4.5話 少女の気持ち

心が渇く。何か足りない、満たされない、落ち着かなくて気持ち悪い。


あぁ、またこれだ。またこの時期がきたんだ。


いつもの事だ。悪い習慣。悪い癖。悪いと分かっているのに止めようとしない悪い自分。


足りない。圧倒的に満たされないんだ。


私は誰かが居てくれないと不安で不安でしかない。


それが見ず知らずの自分の身体にしか興味のない男性であろうと。


分かっているんだ。これが良くない事だって。


知ってるんだ。これは非常識な事だって。


気づいているんだ。これは止めるべきだって。


でもやめられない。やめる事なんてできっこない。私はこれをやらないと正気でいる事なんて出来ない。


もう手遅れなんだ。末期なんだ。


何度も何度も止めようとしたこともあった。だがそれは自分がより狂うだけであって、危うくなるだけで、壊れるだけだった。…いや、もうこれを始めた時点で私は壊れていたのだと思う。


だからこれはもうやめられない。やめることなんて出来やしない。


この渇きを満たす為に今日も私は人を探す。自分にとって都合の良さそうな男を探す。


路地裏に1人で歩く男を見つけた。


今回はコイツにしよう。


男に声をかける為に後をつける。


すぐに声をかけてしまおうと思っていたがソイツは歩いていると思えば時折立ち止まり、空を見上げ何度か笑っていた。


おかしなやつだと思い他の奴にしようかと思ったがもう他を見つける程私は我慢ができそうになかった。


仕方なくコイツするかと思い、近寄ろうとするとソイツは歩く速度を上げた。


逃げられる!?と思いこちらも歩く速度を上げると今度ゆっくり歩き始めた。


何をしてるのかと思い近寄るのをやめて観察しているとどうもつけられていることに気づいたらしい。だがどうにもつけられているのが自分だと確信を持てないからか何度も歩く速度を上げたり下げたりしているようだ。


それの姿を後ろから見ているとあまりにもコイツの行動がアホらしく見えて自然と笑ってしまう。笑ってしまう?


さっきまで気持ちに余裕が全くなかったというのに、表情なんてもう死んでいるようなものだと思っていたのに、私は笑えていた。


だが心の渇きは依然と渇いたままだ。足りないものを欲している。満たせ満たせと自分に促してくる。


笑えて余裕は出来たが長くは持ちそうも無いこの気持ちを早く満たす為に声をかける。


「お兄さん。私の目の前を歩いてるお兄さん。」


これが私がお兄さんに声を掛けた最初の言葉だった。

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