第23話別れの時7

 2度目の再検査の結果に珍しく父が来た。

「妹の私立の中学の入学面接にお母さんは行ったよ」

 診断室で説明を受けてベットに戻ると父が言った。検査は問題なしで退院は2月の初めと言うことになった。

「なぜ髪を切らない?」

「風邪ひきで」

と嘘をついた。

「おばあちゃんの部屋に机を入れた。私は今度区役所が変わる。だんだん端っこに飛ばされる」

 最後は独り言のようだ。

 かえでの部屋に入ると綺麗に布団が畳まれていて枕が乗っている。棚にピンクの帽子が乗っている。

「彼女さっき個室に入ったよ」

 あの看護婦が声をかける。

「風邪ひき?」

「高熱が出て呼吸ができなくなったの」

と言って耳元で囁く。

「君ならただで抱かれていいよ。声かけて?」

 彼女は私の部屋の担当の看護婦の話では25歳で部長とも寝ているという噂だ。これは看護婦同士が廊下で話していたのを聞いた。

 また交換絵物語を一人で描くことになる。

 非常階段に行くと橙の電車を見る。今度こそかえでは帰ってこないかもしれない。そう思うと自然に涙が溢れてくる。

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