第15話秘密基地7

 私は最近は交換絵物語を下着を入れている鞄に入れるようにしている。もう他人には見せられない絵が描かれている。私は出来るだけかえでを迎えに行かず非常階段に行くようになっている。かえでとあの日からそれでも3回入っている。毎回かえでには週刊誌で読んだことを試しているようだ。

「ひろし君は私が嫌い?」

「そんなことはないよ」

「だったら秘密基地をなぜ避けるの?」

「このままじゃみんな変な目で見るのじゃ?」

 確かに医者も看護婦もあの部屋の意味を知っている。それに患者も時々出入りしている。

「でも誰もばらさなよ。みんな知らんふりしている。姉さんは何度も外でドアが開くのを待っていた看護婦に会ったって」

 でも黙って絵を描いている私を見て私の画用紙に青色の電車を描いた。

「これは私の電車よ。ひろし君の電車と今すれ違っている。でも今を逃したらもう2度と会えなくなるのよ」

「ここは環状線だからまた会える」

 これは母の受け売りだ。まだ一度も一周したことはない。

「ひろし君は治ってここを出る日が来る。きっと私は出る時は死んだときだけよ。私って友達ができない子なんだ。ひろし君の他にまた友達ができることってないように思う」

「でも子供ができるよ」

「心配しないでいいの。姉さんから薬ももらっているし、明日は貰った化粧を持っていく」

と言って私もパジャマのズボンのポケットに手を入れる。しっかりと私のものを握っている。

「出るまでは私を忘れないで」

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