第13話秘密基地5

 隣のベットの女性が退院が決まった。もう2日前からかえでが色々なものを貰っている。最後の朝私も車椅子を押して部屋に入った。すっかりベットは片づけられていて本棚も空になっている。着物を着た母親が鞄を下げている。かえでを押してナースステーションのエレベターの前に行く。ここは柵があってこれ以上はいけないようになっている。若い医師が涙目で立っている。

 かえでがしっかり抱き合って手を振る。それから非常階段に行く。

「姉さんは19歳で母親のスナックを手伝うようよ。あそこにいた医師、秘密基地で何度もエッチしていたのよ」

「へえ!」

「分かるわ。姉さんも5年もいて何度も個室を行き来していたの。18歳の時に彼を秘密基地に誘い出した。秘密基地は長い入院患者の伝説の部屋なの。姉さんはおぼこで死にたくないっていつも言っていた」

「処女!?」

 これは彼女の週刊誌の知識だ。

「結婚する?」

「女が入院患者の場合はほとんどそのままお別れらしいよ。看護婦の場合は結婚が多いと」

 女同士の話をしているようだ。

「患者同士は?」

「それも別れる」

と言われて私はかえでの顔を見た。

「私はきっと出れないと思う。だからどうしても私はここで果たすわ」

 かえでは10月で12歳になり中学生になる。だが小学校に一度も通ったことがない。


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