第12話秘密基地4

 久しぶりに父が見舞いに来た。渡されていた着替えを出して入れ替える。父は嫌いではないがじっくり話したことがなかった。入り口に昼食をすましたかえでが一人で車椅子をこいできている。私の記憶では父は毎晩遅く酔っぱらって帰ってくる。残業だと言っている。だが寡黙な人だ。

 練習問題のノートを母から預かってきたようだ。

「絵ばかり描いていたら偉くなれんぞ」

 1時間座っていてそれでけ言って帰っていった。

「お待たせ。押すよ」

 私はかえでの車椅子を押して非常階段に行く。今日は日曜日で誰もいない。

「優しそうなお父さんね?」

「ほとんど話さないよ」

「お勤め?」

「区役所に勤めている」

「ひろし君はお父さん似かな?」

「どうして?」

「男前だと思う」

 そういうと車椅子から立ち上がって手すりまで歩く。

「凄いな」

「ベットの中でも歩いているのよ。交換絵物語見てくれた?ひろし君ってもう夢精した?」

 最近どんどん過激になっている。

「パンツにねっとりしたものが朝残っているって?」

「ああ」

「もう立派な男の子だわ。私も始まっている。子供ができるらしいよ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る