第8話橙の電車8

 新しい試みは二人をわくわくさせた。梅雨になっても毎日画帳を交互に回す。病院の外には広大な草原があって毎日冒険を繰り返す。だが今日は次の1ページを書けなくて白紙のままだ。今日はかえでは検査があって昼を済ませて非常階段に来た。初めてのピンク色の帽子だ。

「書けなかったでしょ?」

 私は黙って俯いている。

「秘密基地を教えてあげる」

 腕を引っ張ってナースステーションのところまで来て、その隣の部屋をノブを回して私の手を引っ張る。

「ここは仮眠室よ。中から鍵をかけるようになっている。ほら今閉めたから外は赤の色になっている。この後ろのカーテンの中に入って?」

 ベットが1つだけある。

「私がここを見つけたのは2年前。私のところの部屋の人がここに今位の時間に入ったの。この時間は看護婦さんが休憩に入るの。今から声を出しちゃだめよ」

 30分するとパジャマ姿の私と同室の40歳くらいの男性が入ってくる。ほとんどその後顔見知りの看護婦が入っている。かえでの手が私の手を握っている。

 看護婦は鍵を閉めるとピンク色の白衣を脱ぐと男のパジャマを下げて顔を埋める。かえでの手が熱を帯びている。5分ほどで顔を上げるとはっきりと反り切ったものが見える。大人のものはこんなにも大きくなる!裸のお尻がその上に重なる。押し殺した声がして20分ほどで看護婦はもう白衣を着る。男は1万札を渡して後から出て行く。

 かえでも私も黙ったまま外に出る。

 前日のかえでの絵はこの部屋の絵だった。ただ森の中にあった。そこに『私は何でも知りたいし何でも死ぬまでにしたい!』とか書いてあった。

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