第7話橙の電車7

 微熱が出た。

「うつすことはないが、まだ菌が残っているみたいだな」

 1か月に一度診断をしている医者が独り言を言っている。

「今日はベットで寝ているのよ」

と看護婦が部屋に連れて帰る。

 しばらくしてかえでの毛糸の帽子が入口から入ってくる。

「来ないから迎えに来た」

「熱が出ている?」

「私なんかしょっちゅうよ」

「だけどうつらないって」

「私もうつらないわよ」

 かえでは私のベットに腰かけて新しい画帳を見せる。

「6冊目?」

「提案があるのよ」

 目がキラキラしている。

「私とひろし君が物語を交互に書くの」

「絵は描けないよ。橙の電車しか」

「えは私が担当する。考えただけでわくわくする。まず今から1ページ目を私から書かせて?」

 それから黙って2時間ばかり文章と絵を描く。かえでの書き出しは病院から抜け出して外に出るという話。ひろしとかえでが描かれている。かえではいつもの毛糸の帽子を被っている。


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