第4話橙の電車4

 ここ3日かえでが姿を見せない。彼女の部屋に行ったがベットは綺麗に畳まれている。最近何度も来ているので隣のベットの若い女性が覚えてくれている。

「彼氏ね?かえでしばらく戻らないよ」

「・・・?」

「3年隣同士だけど、2月に一度の割で個室に移されるの。どうも熱が出るようね」

 隣の女性は20歳くらいでかえでと同じように帽子を被っている。

「かえでおませなのよ」

とかえでの本棚から週刊誌を取り出す。

「これは私が上げたのだけどね、女性週刊誌だけどハードなことばかりよ。子供に見せるのはどうかな?」

 ここには男と女のセックスを書いている。裸の写真は父の机の上で見つけて母に取り上げられた経験がある。だが全く興味がない。

「かえではね、経験なく死ぬには耐えられないっていうのよ。でも私も同じ意見よ。私も結婚して子供も産みたいのよ」

 まだそんな話ができる間ではない。私は本棚に分厚い画帳を見つけた。

「それね、かえでいつも描いているわ」

 これは漫画だ。ちゃんと絵には吹き出しが付いている。

「それで5冊目だっていうわ」

 漫画を描くのか?

「読んでいいけどかえでには私が見せたって言わないこと。私彼女とはいい友達でいたいから」

「はい。内緒にします」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る