第3話橙の電車3

 伝染病棟は他の棟から隔離されているだけでなく、各共同部屋にも自由に入れない。とくに重症患者がいるナースステーションの近くには近寄れない。だがかえでも私も比較的出入りが自由な部屋にいる。二人とも8人部屋でカーテンだけで夜は仕切られる。私の部屋は年配の人が多い。

「これ何?」

 かえでが私のベットを見つけてやってくる。

「紙人形や」

「何するの?」

 私はいつものように食事用の階位テーブルに紙人形を並べてぶつぶつ言って人形を動かす。

「これは忍者だよ」

「だから黒い色なのね?ひろしには兄弟がいる?」

「妹がいる。この病気は妹もうつったけど、半月で治ってここから出た。それを貰った菌が強かったと。それよりあそこに行こう?」

 一日に一度はここで橙の電車を見ないと落ち着かない。

「かえでは?」

「ああ、私?私は独りっ子よ。1か月に2度おばあちゃんが来る。この話は今はしたくないんだな」

 私はいつもの橙の電車の電車を描いている。

「私ね、そう長く生きれないのよ」

「どうして?」

「ここの医者が入院した時におばあちゃんに話していたわ。でもそれより長く生きているわ。ひろし勉強しているんだね?」

「ああ、5年生の教科書を貰ってきたって」

「私なんて勉強しても将来がないので」

 何と悲しい目をしているのだろうか?


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