幽霊が見えるようになった男の末路

半澤 溜吾郎

第1話 妻の理恵

 妻の理恵が亡くなってから3年が経った。修一は未だに立ち直れず、毎日のように理恵のことを思っていた。

 (はあ~ どうして理恵は死んじまったのか。俺を置いていくなんて…)

 理恵は3年前に事故で亡くなった。修一とのデートの待ち合わせに向かう途中、信号無視したトラックにはねられこの世を去った。即死だった。修一はその日から、人が変わったように暗くなってしまい、毎日のように理恵に会えないかと心の底から願っていた。

 (理恵、もう一度だけ、俺の前に姿を見せてくれ…)

 修一は、こぶしを強く握り、目をぎゅっと閉じ強く願った。

 「こいつ何してるんだろうか?」

 「なんでも妻を亡くして、もう一度だけ会いたいらしく毎日こうして願っているらしいぞ」

 目を閉じていた修一にそんな会話が聞こえてきた。急いで目を開けると、そこには体の透けた男が二人立っていた。一人は痩せていて小柄、もう一人はかなり体格がよく、透けていても存在感があった。修一は驚いた様子で二人を見つめ、とっさに「ウチで何してるんですか?」と聞いた。

 さらに驚いたのは2人の男の方であった。小柄な男の方は思わず腰を抜かし、その場に座り込んでしまい、体格のいい男の方は、目を丸くしてこっちを見ていた。

 「あんた、俺たちの姿見えるんか?」体格のいい男が言った。

 「見えるも何もそこにいるじゃないですか」修一は、状況が呑み込めぬ様子でいた。

 「確かにここにいるけど、俺たち… 幽霊なんだぜ!」

 「ふーんそっか… って幽霊なの???」修一はようやく状況が呑み込めた。

 今まで修一は幽霊などと言ったものに出くわしたことはなく、生涯無縁であると思っていた。そんな時に出会った幽霊たちは、あまりにも想像とかけ離れていたため、最初幽霊だとは思わなかった。

 「なんか幽霊って想像と違うんですけど?」修一は恐る恐る聞いた。

 「あー、確かに生きている人が想像している幽霊とはちょっと違うかもな。俺たちあんなに陰気くさくないし」体格のいい幽霊が笑いながら言った。

 「そうなんですか~ てか天国とか行かなくていいんですか?」

 「天国は今、大混雑してて、空きが出るまで現世の世界にいなければならないのだよ。けどまあ、現世の世界もなかなか楽しいけどね。女の子の幽霊とデートしたり…むふふ」

 小柄な幽霊がほおを上気させ、不気味な笑みを浮かべて言った。

 「そうなんですか。したら僕の妻も現世をさまよってたりしますかね?」修一は期待に胸を膨らませて聞いた。

 「亡くなってから5年経っていなければいると思うよ」

 修一はその言葉を聞き、一目散に外へと飛び出した。

 (きっと理恵がいるならあの場所だ! 3年前に行けなかったデートの場所…)

 修一は理恵を思いながら、急いでその場所へと向かった。デートの場所へと到着すると、そこには、髪の長いきれいな後姿をした、女性の幽霊が立っていた。

 (理恵だ… やっと会えた…)

 修一は嬉しい気持ちになり、思わず涙で目頭を濡らした。ハンカチを手に取り、涙を拭いてから、ふたたび彼女に目をやると…



 幽霊の男と並んで歩き始めた。

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