2008年5月19日 その2
はい。というわけで。
続きまして、
親友マリが没収された携帯電話を
取り戻しちゃおう!のコーナーです。
いや、コーナーじゃない。ミッションです。
いや、ミッションってのもちょっと違うか?
ま、いいや。
生活指導担当は、社会科の
東 十条(アズマ トオカ)先生だ。
ちなみに42歳独身の女性で、
好きなKAT-TUNは田中。
でもあたしに言わせれば、いちばん顔が
カッコイイのはなんといってもE233系の
1000番台だと思う。
あれならKAT-TUNのメンバーとしても
いけるね。たぶん。
いや、KAT-TUNの話をしてる場合じゃない。
とにかく、東先生に変身して職員室に行って
席から携帯を取り戻せばいいのだ。
この1限目は別のクラスで授業中なので、
本人と鉢合わせることもないだろう。
いける。いけるよ。
楽勝だね。
顔がゆるむね。
「まもなく13番線に、
快速・南浦和ユキが参ります!」
この呪文にはやっぱり本能的な抵抗を
感じるものの、あたしはトイレの個室で
東先生に変身する。
……うおっ!
トイレから出ようとしたら、あちこちの
関節に痛みを感じた。
しまった、これが東先生がいつも言ってた
神経痛か?
いやはや大変なんだね。
ていうか、まさか中2の若さで神経痛の
辛さを味わうことができようとは。
貴重な体験だ。
貴重だけど、うらやましがられることも
なさそうだよね。
などと思いつつ、あたしは職員室に向かう。
でも他人の身体って、慣れないとバランス
取りにくいのね。
途中で2回ほどつまずいた。
さて職員室。
授業時間中なので、ほとんど先生はいない。
あたしは、あたかも毎日普通にここを
通ってますけど何か? という体で、
東先生の机に向かう。
この程度の行動でバレることはないと
思うけれど、他人の姿で入るというのは、
なかなか緊張する。
これが潜入ミッションなのだね。
オクトカムだね。
スリルとサスペンスだね。
なんて無駄に気分を盛り上げて楽しんでる
場合じゃない。
変身してる時間は10分しかないんだから、
急がないと。
……が、しかし。
東十条先生の机の、上も下も引き出しも
探してみたが生徒から没収したと思われる
携帯電話は見つからなかった。
「ありゃ、ここじゃなかった?」
これは困った。
他に置いてそうな場所といったら……
あ、生活指導室か?
ちっ、はじめからそっちに行けばよかった。
と、その時だった。
「東先生!」
うおっ!
後ろから呼ぶ声が聞こえた。
驚いて飛び出しそうになった心臓を必死に
飲み込みつつゆっくり振り向いてみると、
すぐ後ろに、情報科の
税田 摩真人(サイタ マシント)先生が
立っていた。30代の男性教師だ。
ちなみにこの先生、生徒には隠している
つもりらしいがネット上では
FLASH職人の神とあがめられていて
裏サイトでは“税田摩真人神”などと
呼ばれている。
いや、それはどうでもいいんだけど。
でも言っておかなきゃいけない気が
したから、書いた。
「例の、磯子ハツノリ君の件ですけど、
いつまで生徒に隠しておくんですか?」
「えっ、磯子君!?」
驚いて声が少し裏返った。
でも税田先生は気にせず続ける。
「そろそろ生徒会選挙も近いし、どうやら
探ってる生徒もいるようなので……」
うわあああ、なにそれなにそれ!
なにげにその話、すこぶる
気になるんですけど!
気になるけど、深く突っ込んでるだけの
時間がない!
ないよ!
もう変身してから7~8分は経つ。
ここで解けたら一大事だ。
「あぁら、ごめんあそぁせ。アタクシィ、
ちょっと急いでるものでェ」
と、お色気たっぷりの愛想笑いをしながら
そそくさと出口に向かった。
しかし。
「東先生! ちょっと待ってください!」
ぎゃあ、なんだ?
口調も完璧だったはず……。
立ち止まったあたしの背中に向かって、
税田先生が言う。
「その頭の上のインコ、かわいいですね。
似合ってますよ」
ぶ!
なんと、まさかの885系!?
そう、今まで緊張していて気づいて
なかったけど、あたしの頭の上には
885系が乗ったままだったのだ。
気付けよ、あたし。
つうかおまえも、気を利かせて
どいてくれよ。しかもなんだよ
似合ってるって。イヤミか?
あたしは頭上であくびをしている
のんきな鳥に恨みの念を送りつつ、
税田摩真人神には苦々しい愛想笑いを
浮かべ、ダッシュで職員室を出た。
そしてちょうど出たところで変身が切れ、
元の乙女姿にもどった。
定刻ギリギリの到着だ。アブネ。
それから周囲に誰もいないことを
確認しつつ、生活指導室に移動。
コマンド選択式なら、
「場所移動」→「生活指導室」の操作だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます