冬の大会への決意


 「ナイスシュートのどか!」


 色々とあった文化祭からあっという間に時間は過ぎて、もうすぐ冬になる頃になった。文化祭以来私は部活の練習に打ち込んでいるから二人に進展があったかどうか、それはわからない。


 まあ見る限り一切進展はしてなさそう。やっぱり翔って臆病者だなあ。


 かくいう私も、あんなことをしておいて何もしていないんだけど。だけど……それにはちゃんと理由がある。


 「随分と調子がいいみたいじゃん。予選ものどかの活躍で順調に勝ち進んでるし!」


 「いやあそれほどでも!」


 試合形式の練習が終わり、一旦私たちのチームが休憩となったところで三年生の先輩から声をかけられる。この人はこのチームのキャプテンで最後の最後まで部活をやりきると決めた人で、この季節にも引退をすることなく続けている。


 「ほんと、頼りにしてるから。私はこの大会負けた時が高校サッカー終わりだし……優勝して終わりたい」


 「もちろんですよ! 任せてください! ……でもほんとあっという間ですね、先輩がもうすぐ引退って。確か先輩は高校卒業したらプロになるんですよね?」


 「うん、一応ね。でものどかは海外に行くかもしれないんでしょ?」


 「え!? そ、その話どこで……」


 「監督から私相談受けたから」


 「な、なるほど……」


 そう、私は海外に行くかもしれない。元ドイツ女子代表で、今はスカウトをしている人が私に関心を示していると監督から聞いている。もちろんこれからの活躍次第なところはあるけど、それでも高みを目指せるチャンスは得ることができた。


 だけどそれは日本から旅立つってこと。……翔とも会えなくなる。


 「早ければ二年からなんでしょ? 多分それって冬の選手権で大活躍したらってことだよね」


 「そうらしいです。でも親は高校は出とけーって言ってますけどね。うーん、どうしたらいいんですかねえ」


 「行くべくだと思うよ」


 即答だった。先輩は一切間を置くことなく、私の顔を見てそういった。


 「世界にはすごい人たちがたくさんいるし、レベルの高い環境に行けるのなら行くべき。もちろんのどかが最終的には決めるべきことだけどね」


 「なるほど……」


 プロになる先輩が言う言葉には重みがあった。高みを見てきて、これからそこに挑む人だからこそ。きっと先輩もチャンスがあるなら行きたいとも思っているんだろう。


 「でもまずはのどかが大会で活躍しないとね。そうしないとせっかくかかった声も消えちゃうから。だから優勝を導く活躍、期待してるよ」


 「はい! ありがとうございます!」


 話しているうちに、私たちのチームの番になりグラウンドに走る。そうだよね、まずは活躍をしないとどうにもならない。それに、私はもう一つ優勝して活躍しないといけない理由がある。


 これは自分なりのけじめ。きっとさっさとしてしまえばいいんだと思うこともある。だけど……自分が納得できるところまで言ったら、ようやく何も抵抗なく言えると思うから。


 「すごい! のどかもうハットトリック決めて!」


 きっとドイツに行くよりもそっちのほうが原動力になっているのかもしれない。実際今すごく調子がいいし。……ドイツにいけば会えなくなるってのに。どこかで、私を追って来てくれるって思っているのかも。


 「……よし! 次も決める!!!」


 厳しい戦いなのは分かってる。もう私に分が悪いのも分かってる。それでも諦めたりはしない。だってドラマティックな展開にはピンチが付き物だもん。このピンチをもし乗り越えられたら……望み通りになるのかもね。


 「やば! のどかまじで絶好調だ!」


 その心意気が私をどこまでも奮い立たせる。きっとこれは大会が終わるまで続くんだろう。勝負が終わらない限り……。


 「……よし!」


 そして今日の練習では、たくさんゴールを決めることができた。負けることもなかった。きっとこのままいけば大会だって優勝できる。そしたら私は……。


 翔に正面から、大好きだって伝える。


 ☆☆☆


【幼馴染の金髪ギャルとの同棲がめちゃ楽しい】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054895242588


新作も投稿し始めました。よければこちらもご覧ください。


コロナの影響で大学が春学期全てオンライン授業となったため本当にやることがないので投稿頑張ります。

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