文化祭は波乱の予感


 「……というわけで、今年の文化祭は二年生のみ特進と普通科合同で行うことになった」


 高校二年のみ集められた学年集会にて学年主任からそう告げられた。通例であればクラスごとで行うのだが、教師が言うには特進と普通科の関わりが少なすぎると言うことで合同で行う運びとなったらしい。


 ……多分、副生徒会長の冬馬が彼女と一緒に何かしたいから提案したらそれが通ったんだろうけど。


 「リーダーは六人を募集する。その中で企画を考えてもらい、自主的に企画を進めていってもらう。もちろん、進歩報告等はしてもらうが。と言うわけでこの後リーダーに希望する人は職員室の前まできてくれ」


 以上、学年主任が文化祭の話を終えて学年集会も終わるとガヤガヤと講堂は賑わって文化祭の話で持ちきりになる。誰がリーダーになってほしいか、どんな企画をやりたいか、話すネタはたくさんあるから。


 そんな中俺はさっさと教室に戻ろうとする。人を引っ張っていくことは俺には向かないし、テキトーに負担の少なさそうな企画に参加すればいいと思ったからだ。


 「おい翔。どこにいく」


 だが完全に教室に向いていた足を冬馬がシュッと現れては通せんぼして止めてきた。


 「いや教室に帰るんだが」


 「学校行事に関してはとことん冷めたやつだなあ。あのなー来年受験組は文化祭は自主参加になるんだぞ。つまり実質俺らにとってはこれが最後の文化祭になるんだからな」


 「そうはそうだけど……俺はあんまりこう言う雰囲気は楽しめないんだよ」


 「悲しいやつだ。あいにく俺は美優と一緒にラブラブと企画をやるからお前の相手はしてやれない。だから多少は楽しむ努力もしろ!」


 「んなこと言われてもなあ……」


 やっぱりこう言う学校行事は楽しめる人のみで楽しんだ方がいいと思う。むやみに楽しもうとして地雷を踏んでしまうのも怖いし。


 「はあ……じゃああの二人はどうするんだ?」


 冬馬は呆れた顔をしながら、二つ人だかりのできている場所に無理やり俺を引っ張り出す。一体なにが起こっているのかと見てみれば、そこにはよく見る二人の顔が困った表情をしている。


 「九条さん一緒に企画しよう! 俺となら絶対楽しい文化祭にできるよ!」

 「なにをいっているのでしょうかこの男は! 私の方が九条さんと一緒に楽しめるわ!」

 

 「い、いや……ですから私は……」


 一人はすみか。相変わらずの人気っぷりでいろんな人から勧誘を受けていた。やっぱり合同となるとすみかの取り合いも白熱してしまうようだ。特に普通科の男がたくさんいるあたりよほど一緒の企画になりたいんだろう。そりゃ本当に関わりが少ないし当然といえば当然だが。


 「のどかは私たちと一緒の企画にするでしょう?」

 「な、なにをいっているんだ! 俺たちと一緒の企画になってくれるに決まっているだろう!!!」


 「あ、あはは……だ、だから私は……」


 もう一人はのどか。部活の仲間や俺がのどかと喋っているといつも鋭い目線を向けてくる男たちから勧誘されている。やっぱりのどかも人気者だ。だけど男の勧誘を断るのはわかるがどうして部活仲間の勧誘も断っているのだろうか?  


 「おい翔、まさかお前あれを見てなにをすればいいのかわかってないのか?」


 「???」


 「おいおい。お前が企画を提案して、あの二人と一緒にやるってことだよ」


 「…………は?」


 俺がリーダー気質でないことを知っているだろうに、冬馬は真顔でそんなことをいってきた。いやいや、絶対色々と問題が巻き起こるだろうしかなりリスクがあるだろ! そこまでしてやるべきでは……。


 「ま、お前がどう思っていようが関係ない。翔、やるんだよお前は」


 「いや全く俺の意思に基づいてないと思うんだが……あ、ちょっと待て冬馬!」


 俺が渋っている様子を全く考慮することはなく、冬馬は二人の元に行ってなにやら話しているようだ。……すると、二人の顔はぱあっと明るくなりすぐに俺の元にやってくる。え、一体なにを伝えたの冬馬? 


 「しょ……さ、佐久間くん! 企画のお話伺いました、ぜひ入れてください!」


 危うく下の名前で俺のことを呼びそうになったすみかは目をキラキラと輝かせて、


 「まさか翔が文化祭の企画リーダーやろうとしてるだなんてねえ。もちろん私も入れてくれるよね!!!」


 のどかは嬉しそうに俺の肩をポンポンと叩きながら入れてくれと頼んできた。一体何のことをいっているのかわからない俺は困惑してしまうも、冬馬が俺の手に紙を握らせてきてそれを見てみると……。


 『カフェ企画』


 と書かれていた。なるほど、つまりは料理系の企画をさせようと言うことか。……まあ、もう今更二人の期待を裏切るわけにはいかない。それに……俺も一緒に企画やりたかったし。冬馬の言う通り、来年は絶対一緒にやれないから。


 「……よし、それじゃあ職員室前に行ってくる」


 と言うわけで俺は企画を通すために職員室前に向かうこととなった。まずはこれが通らないとどうしようもないからな。……ただ、すみかののどかに断られる形となった人たちから何となーく殺意までも感じられる視線を送られている気がする。


 なんか、色々と問題が起こりそうな予感……。


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