番外編の溜まり場

番外編 九条すみかと過ごすお正月


 注:このエピソードは本編と基本的には関係ありません。僕が書きたいシチュエーションを書いただけです。もしかしたら……という気持ちでご覧くださいませ。


 ――――――――――――


 お正月。気分はのほほんと気楽な気持ちになり、何をするにもうんしょっと言ってしまうぐらい体がだらけている。まあここ最近働いているレストランが年末ということで大忙しだったから、その分体も休みに飢えているのだろう。


 「ふあ……眠い」


 そんな中あくび一つしながら俺はちゃちゃっとお雑煮を作る。おせちとかは材料とかを揃えたりするのが単純にめんどくさかったりということで作らなかったが、お雑煮ぐらいなら問題ない。


 なにせもう一人同じように疲れた様子の同棲相手がいるもんだから。


 「……あ、翔くん! お、お雑煮を作ってくれたんですか……お疲れなのにわざわざ……」


 こたつの中で猫のように背中を丸くしている小さな俺のお嫁さん、九条すみか……いや、それは旧姓か。佐久間すみかはお雑煮を見て目をキラキラとさせながらも俺のことを心配してくれる。


 「これぐらいなら問題ないよ。それにすみかだって元旦に日の出を写真に収めるために寒い中頑張ってたじゃないか。お互い様だ」


 「う、うう……。そ、それじゃ一緒に食べましょう」


 「もちろん」


 俺はお雑煮をこたつの上に置いて、こたつの中に入る。金銭面の関係で大きいのは買えなかったので、どうしてもすみかの足が当たってしまうのは仕方がない。


 「翔くんの足、冷たいですね。こ、こうすれば……あったかくなりますか?」


 だがすみかは自身のあったかい足を俺の足にわざと重ねて温めてくれる。二つの意味で俺はあったかい。……我が奥さんながら、本当に可愛くて優しい。


 「あ、ありがとう。それじゃ食べよう」


 「はい!」


 そしてお互いにいただきますを済ませてお雑煮を食べ始める。シンプルな味付けながらも餅はなかなかに美味しくて、結構満足できる味だった。


 「……久しぶりですね、こんなにゆっくりできるのは。最近はお互い仕事が忙しかったですし……」


 「そうだな……俺はレストランで、すみかはいろんなところで写真を撮って……なかなか時間が合わないもんな」


 「……そうですね。ですからこのこたつを買ってもなかなか一緒には入れませんでした。……でも今日はやっと二人揃ったので……」


 「っ!」


 さっきまで向かい合わせで食べていたすみかが、俺の肩がくっつくぐらいの距離まで近寄り頭をことんと俺の肩に乗せるようにした。……ふ、夫婦になってもこういうのはなかなか慣れない。


 「恥ずかしがらなくても……。も、もちろん私も少しは恥ずかしいです。でももう……お互い好きってわかってるじゃないですか」


 「……そうだな。それじゃ俺も」


 やり返すように、俺はこたつの中に潜っているすみかの手を握る。


 「!!! しょ、翔くん!」


 「なんだ? これぐらいもう恥ずかしくないだろ?」


 「う、うう……」


 もうこたつに入る必要もないんじゃないかというぐらいにすみかは顔を真っ赤にしてしまう。まあいくらあれやこれやをしたとしても、こうして恋人の時のようなことをするのはなんだかんだ恥ずかしくて、そして楽しい。


 「……でも今日はこのままのんびりと、このまま過ごしてたいです。明日からはまた夢のための貯金のためにお仕事ですからね」


 「ああ。でももう少しじゃないか。すみかの写真も好評みたいだし、それに……俺ももうすぐ上のポジションにつけてもらえそうだし」


 「ほ、本当ですか!? 翔くん、おめでとうございます!」


 すみかは満面の笑顔を見せて俺のことを祝福してくれた。俺自身この前そのことは通達されたのだが、その時の俺よりも今のすみかは喜んでいるかもしれない。……正直、今の俺はすみかに喜んでもらえたことが一番嬉しいけど。


 「それじゃあ何かお祝いをしないと……えーっと、えーっと……」


 さらにすみかは俺に何かお祝いをしてくれようと色々と考えてくれた。もちろんその気持ちは嬉しい。だけど俺は……。


 「それは俺からさせてくれないかな」


 「……え?」


 俺はあえてこたつの上に置いておいた小さな箱を手で取る。きょとんとした顔のすみかは一体何があるのか全く予期できていないようだ。もちろん俺がすみかにバレないように必死に隠していたから当然なんだが。


 「……これ、遅くなったけど」


 俺はすみかの左手をこたつの中から引っ張って、箱から取り出した……結婚指輪をすみかの左手の薬指にはめる。


 「……!!!!! こ、これ……ど、どうしたんですか!?」


 「……こっそり目標とは別にお金をためてたんだよ。……すみかにふさわしいすっごくいい指輪は買えなかったけど……俺のできる限りの気持ちなんだ」


 本当はちゃんとプロポーズの時に、結婚式とかちゃんと開いたりして……とするべきなんだろう。だけど俺たちはそうできなかった。すみかの親族のことがあったから。そのためこっそりと結婚したため機会を逃してしまった。


 ……でも今ようやく仕事がうまく行き始めて、何があってもすみかと一緒に居られる自信がついたから、このタイミングだと思って買った。

 

 「こんな俺だけど……すみかのこと大好きだからさ。あの時告白をしてから思いは変わってないから」


 「……!!! わ、私もそうですよ! 大好きです、ずっとずっと大好きですから!!!」


 すみかの笑顔は本当に素敵で、俺も自然と笑顔になる。ああ、やっぱり俺の一番の幸せはすみかと一緒にいることなんだな、と改めて実感する。


 「……そ、それじゃあ、この左手を見ていたので……こたつの上で一緒に手を繋いでくれませんか?」


 「もちろんいいよ。むしろ俺もそうしたい」


 「しょ、翔くん! ……そ、それじゃあ……」


 お互いに体を寄せ合いながら、こたつの上で手を繋ぎながら渡した結婚指輪が美しく光る。それはいつまでも続いて行きそうなぐらい幸せな時間だった。


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