恋愛上級者からの金言


 「いやはやフードコードでご飯を食べるのもいいな。なんだか青春という感じがしてたまらない」


 「冬馬、おじさんくさいことを言わないの」


 「あはは、ついつい。いやーそもそも美優と一緒にいるだけで青春だ!」


 「も、もう……」


 ショッピングモールにはフードコードがつきものだ。そのため俺たちがそこでご飯を食べるということになったわけだが、なぜか今冬馬と美優さんのイチャイチャを見せつけられている。なんだこれ、新手の拷問?


 「や、やっぱり二人は熱々だね。どうしてそんな風な関係になったの?」


 「どうしてって……そりゃあ両思いだったからかな。でも俺が告白しなかったらそれは実らなかったんだろうけど」


 「そうそう。つまりは冬馬の勇気あってこその私たちなの。……」


 なんで美優さん俺の方を見るんですかね。今の会話で俺に関係することあったか?


 「そ、そうなんですね……。素敵な関係です」


 「く、九条さんに褒められるなんて……嬉しいやら悔しいやら……」


 「?」


 そうか、美優さんはすみかのことを一方的にライバル視しているらしいから悔しさもあるわけだ。でもそのライバルに認められて嬉しい気持ちもあって……複雑でめんどくさい感情だな。


 「お、ベルが鳴ってる。九条さんと橘さんのも鳴ってるね。それじゃあ取りに行こう」


 そしてまさかの俺と美優さん以外の面子が先に料理を取りに行くことになり、大変気まづい状況になってしまった。ああどうしよう、なんか喋るにしても何にも案は出てこないし……。


 「……あんた、どっちかに告白しないの?」


 「!?」


 美優さんからいきなりとんでもないことを言われた。……これがからかいであれば今までないことはなかったが、今回美優さんの顔は真面目な表情なので雰囲気が違う。


 「い、いやそういうのは……」


 「まああんたがどっちも好きじゃないってこともありえるのか。でも二人ともあんたことめちゃくちゃ好きそうだけど」


 「え? それは友達としてでは?」


 「…………と、とことんバカというか……鈍感というか……。さっき、まあ何を買ったかは言わないけどそこでの買い物で二人がずっと翔翔翔言ってたのよ。私からしてみれば、あなたたちの方があっちちよ」


 「へ、へえ……」


 何を買ったのかがわからないためなんとも言えないが、美優さんと冬馬よりもすごいって……え? イヤイヤ流石にないだろ。


 「で、いつ告るの?」


 「い、いやだから告るとかは……」


 「なんとなくでもそう思ったら早めにしておいた方がいいわ。三年生になればそんな暇はなくなるし、あの二人に関しては特にそうなるんじゃない? ……私には関係ないけど。いうんだったら、さっさといいなさい」


 「は、はあ……」


 嫌われている割にはなんか恋愛上級者としてアドバイスをもらった。……でも俺はそのアドバイスをもらっても生かすことができない。だって……。


 「そ、そもそも恋ってなんなんですか」


 「……あ、あんたそこからなの……?」


 そう、俺はイマイチ恋というものがわかっていない。それを言うと美優さんは呆れた顔をしてはため息をついてしまう。そして一旦呼吸を整えると、こういった。


 「恋ってそりゃ、ずっとこの人と一緒にいたいと思うことよ。それ以外にある?」


 もっと色々と複雑なのかと思っていたが、美優さんから返ってきた返答はかなりシンプルなものだった。


 「そ、そんな単純なものなんですか?」


 「ええ。現に私は冬馬と一緒にいたい。ずっといたいから」


 「な、なるほど……」


 となれば、俺は恋をしていることになる。だけど……告白をすれば今の関係が壊れてしまう可能性は大いにあって……ああもう、ごちゃごちゃする! さっさと言えればいいのに……人間の心はなんてめんどくさいんだろう。


 「お待たせしました二人とも」


 そんな風に頭で悩んでいる中、すみかたちが戻ってきた。タイミングがいいんやら悪いんやら……と思いながら俺もちょうどベルが鳴ったのでカウンターに食事を取りに行く。美優さんも同じく。


 「それじゃあ、いただきます」


 そして全員料理が揃ったので早速食べ始める。特別美味しいと言うわけではないが、やはりある程度万人が美味しく食べられるように調理されているフードコードの料理はすごいと思う。


 「しっかしいつの間にか夏休みももうすぐ終わりかあ……。あとは夏祭りぐらいが残っているイベントなんじゃないか?」


 「そうですね翔くん。……私、すっごく楽しみです!」


 「私も私も!!! 翔、当日は覚悟しておいてよね、絶対いいもの見せてあげるから!」


 「お、おお」


 一体どんないいものが見れるんだろうか。……ま、それは当日に期待しよう。


 「俺たちも祭りに行くからどうだ、一緒に行くか翔?」


 「冬馬、私は二人っきりで行きたい」


 「ん? そうか、なら仕方がない。悪いな翔」


 「俺なんにもいってないんだが……」


 そりゃ彼女優先になるだろうけど。まさか俺が一言も発せずに決まってしまうとは。……まあでよかったかもしれない。改めて気持ちを確かめるには、二人と一緒にいった方がいいだろうし。


   ――――――――――――

 読者さまへお願い


 第五回カクヨムコンに参加中です。


 読者選考を通過するためにも、ページの↓のほうの『★で称える』やフォローで応援頂けますと、とてもありがたいです。


 加えてお知らせです。


「完璧美人のクーデレ後輩が俺をめちゃくちゃ甘やかしてくるけど絶対に惚れたりし……ない!」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891975181


 という大学生のラブコメを投稿しました。よろしければこちらも読んで頂ければ幸いです。


 それでは今度ともよろしくお願いします。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る