夏休み、夢を見たのどか
「のどか……俺、お前のことが好きだ!」
あまりに突然のことだった。翔から呼び出されて何事かと思えば、いきなりの告白。帝華桜蘭(のどかが倒すことを目標にしている高校)に勝ってから告白しようとしてた私としてはまさに寝耳に水の出来事だ。
「ど、どうしたの急に?」
「お前の笑顔にいつも癒されていた自分に気づいたんだよ……! 俺でよければ、付き合ってくれないか!!?」
翔からそんなことを言われてしまったら……私の顔は平然を装えるわけもなく溶けたアイスのようにだらしない笑顔でいてしまう。でも、でも嬉しくて、嬉しくて……やっと、やっと私はこの思いを遂げることができるんだと思うと……!
「こ、これ夢じゃないよね!?」
私は夢じゃないかを確かめるために、思いっきり頰をベチーンと叩いた。すると……。
「………………」
目の前から翔はいなくなり、視界には見慣れた相変わらず汚い寮の光景。
「夢だったのかあああああああああああああああ!!!!!!」
恥ずかしい! めちゃくちゃ恥ずかしい! 顔がもう焼けそうなぐらい恥ずかしい!
この前スケジュールを間違えて翔と一緒に遊ぶことができなかったのが無意識のうちにかなりのダメージを負ってしまったんだろう。うう……夏休みなんか嫌いだ。学校があれば毎日翔と会えるけど、夏休みは鬼コーチと毎日会うことになる。
……この間に九条さんは翔と親睦を深めてるんだろうなあ……。
「……でも今日は休みだし、翔を誘ってどこかにいけば気持ちも晴れるや! よし誘おう!」
そう突発的に考えた私は早速翔に電話をしようとする。だけどする直前で、一体どこに行くのがベストチョイスなのかふと思った。夏休みは翔と居られる時間が少ない。そうなれば確実に思い出に残ることをしたい。でもまだ祭りとかは開催されていないし、私自身そんなにお金を持っていないから……。
「……こういう時は恋愛の先輩に聞くのが一番だ」
そういうわけで、私は翔に電話をするのではなく、恋愛の先輩に電話をかける。
『……もしもし、のどかちゃん? どうしたのいきなり?』
「あ、美優ちゃん。ごめんねいきなり。風邪は治った?」
恋愛の先輩、もとい冬馬くんの彼女の美優ちゃんに電話がつながる。
『冬馬の看病のおかげで治ったわ。ほんと、冬馬が料理下手くそのくせに必死に看病のためにご飯を作ってくれたのはもう胸がキュンキュンしちゃった』
「そ、それはよかった。それでね、一つ相談事があって……」
『何? のどかちゃんが大好きなあのクソ野郎のこと?』
「よ、よくお分かりで……」
相変わらず美優ちゃんは翔のことが嫌いなようだ。まあ美優ちゃんしっかり者だから翔みたいな人間はどうしても相性が合わないんだろう。……まああと翔の鈍感さが嫌らしい。
『いつも言ってるけど、あのクソにはもう直接キスでもして思いを伝えるのが一番だよ。女慣れもしてないだろうからイチコロ間違いなし。私も冬馬にふとした時にキスされた時は……もう冬馬のことしか考えられない』
「そ、それはまだ無理!!!」
『でも九条さんはしてたりして』
「そ、それもない!」
た、多分ないはず。九条さんもまだ翔に告白をする段階じゃないって感じだったし。で、でももしかしたら二人の関係が進展していても……。
『九条さんがあのクソを教室から連れ出したとき、のどかちゃんは追試に頑張って受かってクソと一緒にご飯を食べるつもりが私たちと食べたじゃない。……いつまでも受け身じゃ勝負に勝てないわ。もちろんのどかちゃんなりの決意はあるだろうけど……ちょっとはジャブを入れてもいいじゃない』
「う……」
確かにあの時(雨の日にて、伝えられる思い参照)私は嫌いな勉強を美優ちゃんに協力してもらって何とか追試に合格した。そして翔と二人っきりでお弁当を食べようとしたら、まさかの九条さん登場となっておじゃんに。
九条さんは勇気を出して教室まで来て翔を誘った。対して私は……勇気を踏み出せずにいた。
……確かに、ジャブを入れることぐらいはするべきかも。
『どう、納得した?』
「うん、さすが美優ちゃん。恋愛マスターだね」
『じゃあ今日は二人っきりで恋愛映画やおしゃれな公園に行きなさい。それっぽい雰囲気にするの。九条さんに負けたら承知しないから』
「み、美優ちゃん九条さんまで敵視してるんだ……」
『……この前の期末、また負けたから』
ああ、そういえば美優ちゃんは努力の成果が実らず九条さんに総合得点20点差つけられて学年2位だったから……。十分すごいことだけど、一番を目指している人にそういうのは野暮だ。
でも九条さん本当に頭がいいよなあ……教え方もうまかったし。
『と、とにかくオススメの映画と公園、あとお店を紹介するから!』
「で、でも私そんなお金ないよ!」
『……そこを考えてなかったわ。じゃあ……』
「そ、それならいいかも!」
美優ちゃんから提案された案は、お金のない私でも何とかできるものだった。それに……それっぽい雰囲気にもなりそう。
『じゃあ報告を楽しみにしてる。頑張ってね!』
「うん、ありがとう!」
恋愛の先輩からものすごくありがたいアドバイスをもらい、私の今日すべきことは決まった。そして私は美優ちゃんとの会話を終了して、今度は翔に電話をかける。
「……あ、もしもし翔? 今日さ、二人っきりで行きたい場所があるんだけど……行かない? い、いや行こう! 強制だよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます