【資料】修正前後の文章(抜粋)



 本編の中で指摘があった文章の一部を、過去の修正履歴と共に切り出しました。文の雰囲気が変わっていく様子をご確認くださいませ。


 誤字や脱字、稚拙な表現などをそのまま晒す為、男の私がスカートを履くぐらい恥ずかしいのですが、大丈夫です(何が?)。


 もし参考にしたい方はご覧になって下さい。



――――――




(…… 中略 ……)




 文書を伝えるプロアナウンサーがそれに、声に(→を)出してチャレンジしてみたとする。まず非常に追いず(→づ)らい文章に手こずる。訂正の矢印を追いかけるせいで、視線が前後に揺さぶられるのだ。彼らでも途中でつかえるのは間違いない。なんとか読めたとしても、機械的に文字を音にできただけ。読んだ本人の頭にも、聞かされた方にも『意味』が入ってきていない。


 それほどこの紙の解読は、難解なものだった。(→それほどこの紙の朗読は、難解なものだった。→それほどこの紙の判読は、やっかいなものだった。)




(…… 中略 ……)




 行き場を失った文字たちの気持ちを考えてみるといい。行き詰り、息詰まり、苦しそうだと彼は思う。文字たちは繋いでいた手を千切られ、意味は孤立し、窒息させられる寸前だった。


 そうした文字たちを救うジェットコースターのレールのような矢印が、彼には天から差し出される(→示される)救いの道に見えた。移動先の文字と文字の間におさまって、文は再び息を吹き替えし、新たな意味を形成するのだ。




(…… 中略 ……)




「そりゃあ、誰だって事前に10回も原稿を読み直す時間があれば、同じことができるかもしれません。でも神浦さん、渡された原稿に目を通すの、たった1度だけって聞きましたよ? どんなに赤が入ったり急な修正でも瞬時に覚えて、対応しちゃうんでしょ? あの人しかできないですよ。流石としか言いようが無いですよ」

「そりゃあ、誰だって事前に10回も原稿を読み直す時間があれば、同じことができるかもしれません。でも神浦さん、渡された原稿に目を通すの、たった1度だけって聞きましたよ? どんなに急な差し替えが入っても瞬時に覚えて、対応しちゃうんでしょ? あの人しかできない事です。流石としか言いようが無いですよ」

「原稿渡して読ませている分には、あいつに敵うやつはいないだろうさ。意固地になって便利なものプロンプターを使わないコダワリとか、自分で勝手に原稿を赤入れしちまうクセ・・――それがどれだけ危ない事かわかってるよな――があるにしてもだ。アナウンサーでそんな暴挙が許されるのは、うちには神浦ひとりしかいない。だがな、あいつはもっと馬鹿なんだよ」

「原稿渡して読ませている分には、あいつに敵うやつはいないだろうさ。意固地になって便利なものプロンプターを使わないコダワリとか、自分で勝手に原稿を赤入れしちまうクセ・・があるにしてもだ。それがどれだけ危ない事か、誰にだってわかるよな? アナウンサーでそんな暴挙が許されるのは、うちには神浦ひとりしかいない。だがな、あいつは馬鹿なんだよ」




(…… 中略 ……)




『マコトに電話。今日は夕飯、食べるのかどうか』(→『マコちゃんに連絡。今日は夕飯、食べるのかどうか』)



(…… 中略 ……)




 もともと人付き合いも、後人を育てるのも、人を管理するのも得意ではない。彼が唯一、得意として誇れる武器が折れてしまえば、彼はもうこの社会で戦えないだろう。


 そんな迷いは、彼をさらに憂鬱にし、職場での周囲との付き合いを、ますます薄っぺらな物(→もの)にしていた。




(…… 中略 ……)




 神浦はオフィスの柱に備えつけられた、アナログ時計を見た。(→神浦はオフィスの柱に備えつけられ、正確に時を刻む電波時計を見た。)




(…… 中略 ……)




なつって、うれしいね。だって――」


 空気が、何か懐かしい澄んだ空気が、神浦の幼く、さらさらとした髪の間をすり抜けていった(→坊主頭の脇を通り抜けていった)。そこには風があった。そしてもうその場所は、見慣れたスタジオではなかった。




(…… 中略 ……)




 海の公園のベンチに、男女が座っていた。


 男は神浦だった。彼はおもむろに立ち上がると、女性に向き直った。彼は舞台の王子のようにひざまずくと、頭の中で完璧に覚え、何度も暗唱した愛の言葉を唱えだした。

 男は神浦だった。彼はおもむろに立ち上がると、女性に向き直った。ひと呼吸の間を取るあいだに、ごくりと唾を飲み込んだ。意を決してひざまずくと、彼は頭の中で完璧に覚え、何度も練習した愛の言葉を唱えだした。




(…… 中略 ……)




「……さあ、とりあえず夜の店を予約(→今夜行く店の予約)をしてくれないか。あいつとまた、夜を明かして呑まにゃならん。お前も来るだろう?」




――――――


以上です。

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実録!「語りの人」リテイク記 まきや @t_makiya

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