2話

 「サイアクだぁぁ~」


 はい、どうも。

 絶賛自分の選択に後悔して落ち込み中の俺、なつきです。


 先程、俺は性別が変化した事に驚き、不用意に奇声なんて上げてしまった。

 魔物がそこら辺に居るかも知れない、危険な森の中でだ。


 なので、ショックから立ち直・・・って無いが、何とか我に返って魔物の事に気が付いて、直ぐに荷物を麻袋に突っ込んで担ぎ上げ、急いでその場から逃走した。


 今は、さっきの場所からそれなりに離れた大きな木の幹に腰を下ろし、休憩中。

 

 荷物が重いってのも在るけど、身体が女の子に成ってしまったからなのか?

 それとも、エルフと言う種族だからなのか?

 どちらか片方――いや、両方ともなのかも知れないが、今の俺は体力が無さ過ぎた。


 少し走っただけなのに、直ぐに息が上がってまともに走れなくなってしまったのだ。 

 転生前は、そこまで体育の成績が良い訳では無いけど、もう少し長い距離を走れていたはずだ。


 「うぅぅ・・・あれもこれも、全部あの時、こんなのを選択したばっかりに」


 俺がこんな事に成ってしまった原因は『ステータス』にも記されていた

 ――【神様の気まぐれランダム設定!】の所為だろう。


 これは“キャラ設定”の『キャラ』の項目に在った、唯一のデメリット物だ。


 そもそも、『キャラ』は転生後の姿や種族を変更できる項目。

 よくゲームとかで、本編開始前に自分が操作するアバターを好きにカスタムしてから本編がスタートする事がある。

 それに似た物だろう―と俺は捉えていた。

 

 なので、別にその項目でランダム設定があっても不思議とは思わず。

 寧ろ、何でデメリット分類されているのだろうと、疑問に感じた。

 

 ・・・でも、高々容姿がどんな風に変わるか分からなくなるだけで、20ポイントも貰えるなら、得では無いか?そんな風に俺は考えてしまい。

 軽い気持ちで選択してしまったのだった。


 「・・・はぁ~、もう考えるのはよそ」


 ネットゲーの女性アバターを操作している中身のプレイヤーは、大半が男だと言う話だ。それが、現実の俺の身に起きてしまったと考えれば、少しは慰めになる・・・のか?


 そ、それに性別が変わった事で、同じ転生者のクラスメートに一目で俺だとバレる心配はないだろう。・・・無いよね。

 ――逆にバレた時のリスクがヤバい気もするが、今は置いておこう。


あと、ここが神様が言う通りのファンタジーな世界なら、もしかすると性別を変える魔法の薬とか有ったりもするかも知れない。 


 「うん、まだ希望はある。

 ――けど、今の所そのファンタジー要素が性別が変った事と、ステータスが観えるだけなのだが・・・」


 そう、俺はまだ他のファンタジーな要素をこの眼で観てはいない。 

 この眼に映るのは、青々とした葉を繁らせた木々ばかりだ。

 

 先程から落ち込んではいたものの、ちゃんと辺りの警戒してはいた。

 一応ここは、ファンタジーな生物の代表――魔物が出る危険な森だという話なのだから。


 けれど、その危険な魔物は一向に出てくる気配が無い。

 ――突然現れて、即戦闘開始とか言われてもこちらとしても無理なのだけど。


 某有名RPGみたいに、HP2,3程度の青いへらへら笑うアレが出て来てくれるなら話は別だが。


 それはあくまでゲームの中のお話で、現実だと物事がそんなにうまくはいかないのは当たり前。――現に俺が女性に成ってしまったのが良い例だ・・・ぐぅ、心が痛い。

 

 ・・・で、でだ。


 初のエンカウントする魔物が、必ず弱いという保証は存在などしない。

 運が悪ければ、クマみたいなデカさの魔物かも知れないのだ。


 てか、普通の動物であるクマにでさえ、俺は勝てる気がしない。

 例え、転生前の男の姿であっても、遭遇したならば逃げの一択しか思い浮かばない。――あれ?直ぐ逃げたら襲われるんだっけ?

 でも寝たふりはもっとダメだってテレビで言ってたような・・・


 え~まぁ、クマの話は脇に置いておいて。

 今は魔物の話を続けよう。


 突然、遭遇した魔物が強い魔物だった場合。

 現状の俺だと逃げ切る体力も無く、かと言って立ち向かう術も無い。あっという間に殺される未来が待っているのは間違いない。

 

 「なので、他のファンタジー要素の『スキル』でも確かめてみるか」


 この森と俺の性別を変えたアレを選択し、増えたポイントで俺的にはしかっりとした『スキル』の構成をしてみた。


 まず、転生先にこの森を選んだ事で近接戦闘系の『スキル』は【短剣術Ⅰ】と【体術Ⅰ】を選ぶ事にした。


 理由としては。

 ここは危険な森で人ての全く届かないに未開の地。

 当然のことながら、森の中を整えてくれる人などは存在しない。


 つい転生直前まで、山奥のキャンプ場に居たので尚判る事だが。

 こちらの森はあのキャンプ場があった山奥の森と比べ、足場も悪ければ、自生する木々も間隔もめちゃくちゃに乱立している。

 そんな場所で、持った事も無い武器をド素人の俺が振り回すなど、危険極まりない行為だと考え。


 森でも無難に動けて、取り扱いが比較的に簡単なナイフとそれに対応する【短剣術Ⅰ】と、あって損は無いだろうと【体術Ⅰ】選んだ訳だ。

 ――だが正直、幾ら刃物であるナイフを持った処で魔物がすぐ目の前まで迫ってきたら、まともに対処できる自信が無い。


 なので、一番のベストは相手の攻撃が届かない場所からの攻撃――遠距離戦闘で魔物の対処したいと考えている。


 だから一応として【投擲Ⅰ】を取ってはいるのだが、そこまで期待はしていない。

 

 幾ら【投擲】のレベルが上がったとしても、流石に現代の銃火器ほどの威力が出せるとは考えられないし、威力目的で取った訳でも無い。

 俺が【投擲】を取る事で、物を投げた時の命中率が少しでも上がればと言う考えで取った『スキル』なのだから。


 そこら辺に落ちている石を魔物の眼か顔に命中でもさせる事が出来れば。

 流石に凶暴な魔物でも、眼に石がぶつかれば怯んだりするはず。

 その隙に俺が逃亡できれば良い。


 要は、【投擲】はチャンスを作る牽制用の『スキル』として取得したのだ。

 


 では、本命はと言うと。

 もちろん


 「ファンタジーの定番中の定番――魔法だ!」


 現代で、ファンタジーの物語に何が必要ですか?と質問されたら、多くの人間がこう答えるだろう。


 ――魔法と。


 それくらい、ファンタジーな世界に於いて魔法とはド定番な存在だ。

 俺もやはり、ファンタジーな異世界転生と神様から聞いた時、一番最初に思い浮かんだのも“魔法”だった。


 だからか、危険を承知で増加させたポイントもほぼ魔法の『スキル』につぎ込んだ。

 必須『アビリティ』の【魔法の才能】も取り、各属性の魔法の『スキル』も取得した。


 そして、なにより俺が“キャラ設定”の項目の中で一番目を付けていた【錬金術】も問題なく取る事ができ、それを学ぶため【初級錬金術セット】も麻袋の中に入っている。


 【錬金術】

 ゲームだと、回復アイテムであるポーションは勿論の他、数多くの便利な道具を創り出す能力とされていて。

 前の世界の現実では、卑金属を金属に変えようとしてたり、永遠の命について研究してたりする、怪しい分類の学問と言われていた。

 では、この世界ではどうかと言うと。

 


 どちらかと言えば、ゲームに違いのかも知れない。

 専用の道具を使う事で、ゲーム同様にポーションとか道具を作り出す事が出来るらしく、ゲームと違う所は【錬金術】が魔法の『スキル』の分類に分けされる所だろうか。


 何故なら、この【錬金術】の『スキル』を使う為には、他の魔法の『スキル』も必要な上に、ただ習得しておけば良い訳でも無い。


 各属性にそれぞれにレベルが求められ。【火魔法】・【水魔法】が4レベル以上で、【土魔法】・【風魔法】は3レベル以上が必要とされている。


 この条件をクリアした時、初めて【錬金術】は使う事が出来るようになっている。


 そして【錬金術】が使える様になれば、固有の魔法として[分解]と[構築]の2つが使える様になるらしい。


 この2つの魔法は字面通りの効果で。

 対象を魔力で[分解]し、再び同じもでも別の形の物好きに[構築]する事が出来る魔法だ。――ただ、自分以外の生物に対しては、その対象があまり動いていない事と、自分よりもレベルが低い事などのいくつかの制限が掛けられている。

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