第3話

――“デメリットを取得すればポイントが増える”からだろう。


つまり、このキャラ設定は自身にとってプラスに成る物は、ポイントを消費する事に成り。逆に自身にマイナスに成る物は、ポイントが増加する。

 そんな風にバランスを取っているのだ。


 何が、“説明で疲れたから質問は受け付けない”

 単にこの事を全員に伝えたくなかっただけだろ。


 だから、わざわざ『アビリティ』に【ヒント】何て物を用意して、40も消費させて首絞めて、その上でエサ神器を目の前にぶら下げたんだ。

 爆弾デメリットをその身に抱えこむ様にな。


 ・・・あの神様は中々にエグい仕掛けをしてくれたものだ。


 身体の無い魂だけの今の状態じゃあ、声を発する事が出来ないから周りにこの事を伝える事は出来ない。

 仮に伝えられても、キャラ選択で何を選ぶのも自由だから、そいつが勝手に自爆しても、そいつ自身の自業自得になんだろうな。


 “ポイントは、計画的に使え”ともあの神様は言っていたしなぁ。


 はぁ、周りを気にしても仕方ないか。

 あまり気のりはしないが、取り敢えずあの神様の思惑通りに【ヒント】を取るか。

 じゃないと、なんか他に俺の気付かないデメリットもありそうだし・・・


 俺は、『アビリティ』の項目を開き【ヒント】を選ぶと、“取得しますか?”の文字とはい・いいえのボタンが浮き出てきた。


 その選択で、はいを選んだ瞬間。

 どこからか、あの神様の愉快そうな笑い声が聞こえた気がした・・・多分、幻聴だろう。



 【ヒント】の『アビリティ』を取得した事で、俺の今の総ポイントは100から60まで減り、『アビリティ』の項目の【ヒント】の部分は灰色の様に薄くなり、もう選択する事が出来なく成った。


俺は、再び『キャラ』の種族項目の【エルフ】を見てみる。


 【エルフ】 消費30

 説明 耳が長い、顔が美形[ヒント:森の精霊の子孫。基礎魔力が高く、バランス感覚が優れている。]

 選択しますか? はい・いいえ


 よし!予想道りに【ヒント】が機能して、更なる情報が開示された!

 予測が間違っていたらっとか考えて内心、冷や冷やする部分ではあった。

 なので今は、無事に成功して心からホッとしたぁ。


 うっし、じゃあ次にデメリットの方も観てみるか!


 時間の制限があるのでいつまでも、気持ちを緩めている訳には行かない。

 俺は直ぐに気持ちを切り替え、いいえを選択して【エルフ】をキャンセルすると、『アイテム』の項目から消費ポイントが書かれていない【魔剣】の一つを選択してみる。


 【死滅の魔剣 デス】 消費[ヒント:P570追加]

 説明 死の力を持つ魔の剣[ヒント:死の力は振れば発動。選択して発動出来ない。対象は常に所有者も含む。1日1回振らないと所有者が死ぬ。所有者は変更できず、捨てる事も出来ない]


 ・・・最悪だ。

 ランダムか、範囲なのか解らないけど、最悪の場合は自滅するだけで、振らないとやっぱ死ぬし、誰かに譲渡する事も、捨てる事も出来ない呪いの剣かよ。


 あ、やっぱポイントも増加するみたいだな。

 てか、570も追加されんのか・・・余程、その死の力とやらは強力なんだろう――自滅する可能性が在るけど。


 それから俺は、【ヒント】で追加された情報を知る為にまた色々と見直してみると様々な事が分かった。


 やっぱり、俺の予測は正しかった。

 消費ポイントが書かれていない物は全てデメリットで、ポイントが付く。

 増えるポイントはまちまちだけど。凶悪なデメリット程、増えるポイントが多くなるのだと思う。

 例えば、装備して歩くだけで寿命が減る腕が、650増加する。

 転生した際に強制的に腕に装備され、簡単に外す事が出来ないおまけ付きだが。


 転生後の寿命がどの位あるのか解らないし、物語ではエルフとかは長命らしいが【ヒント】でもその辺り書いていないから、種族によって差が出るのかも怪しい。


 まぁ、地球の長寿の方は100歳くらいまで生きる人がいるけど、1歩で1年減れば100以上歩けば死ぬな。


 逆立ちして移動や、魔法で身体を浮かばせて移動出来れば、とか考えたけれど、姑息な手があの神様に通用するとは思えないので、僅かな移動でこの腕を付けた人間は死ぬだろう。


 この重い対価で、650は多いのか?少ないのか?解らないな。

 


 そして、そのポイントが一番消費する【神器】にも落とし穴が在った。

 

 【神器 神剣ファゼル】 消費 1億

 説明 神の剣 [ヒント:神の力を一部宿した剣。神が認めた物しか使えない。]


 どういう風に使えないのか解らないが、ポイントを消費しただけじゃあ神に認めて貰っていないだろうから、ゴミ同然だな。――結局、デメリットでポイントを掻き集めても1億には届かないかったからどうでも良いが。


 ああ、他のチートっぽい物も同様で。

 剣に意思が在って所有者を選び、不適切なら剣が消えたりする物や、扱いを間違えれば自身に危険が及ぶ物とか、全体的に酷い物ばかり並んでいたな。


 寧ろ、比較的安全なデメリットを3,4個取ってポイントを加算すれば、手に入る物もあるのでこちらの方が始末が悪い。

 


 あと落とし穴はチートっぽい物以外の他の『スキル』や『アビリティ』にも在った。

 特に『アビリティ』の【魔法の才能】がやばい。


 【魔法の才能】 消費10

 説明 誰でも持っている。[ヒント:ラフォールの世界の魂なら標準で持っている。無いと魔法の行使が一切出来ない。]


 はい。俺たちが行く異世界の名前は“ラフォール”と言うらしいです。

 ――じゃなくって、俺たち外部の魂だから【魔法の才能】を持っていないし、無いと魔法が使う事が出来ない!

 【ヒント】が無かったら、危うく取り逃すところだった。


 だって、他にも似た【火魔法の才能】とか、【光魔法の才能】とかあるんだぜ。

 こっちの消費が一律20ポイントだから、こっちを選んだ方がお得な感じがする。――けど、こっちはただその属性の魔法が上達し易くなるだけの物だ。


 また『スキル』に【魔力操作Ⅰ】とか在るけど、これも前提に【魔法の才能】が必要。

 “ラフォール”と言う名の異世界で魔法関係を使いたいなら【魔法の才能】が無いといけない基本の『アビリティ』だ。


 と言った感じで、デメリットは無いが前提を満たさないと意味が無い物も結構あって、下手をすると前提が無いので使えないゴミ設定で異世界に転生してしまう可能性すらあった。


 【ヒント】があって、マジで感謝だけど。

 こんな感じに“キャラ設定”を仕組んだあの神様は鬼畜だな。

 

 ◇◆◇◆◇


 さて、大雑把にではあるが“キャラ設定”の項目に目を通して、必要な情報は得られたはず。

 

 あとは本格的に必要な物を選択して行けば良いだけ。

 あの神様が言っていた時間も残り僅かだろう。


 色々見たお陰で、2パターンまで設定の内容は絞り込めているのだけれど・・・

 その2パターンで今俺は悩んでいる。

 

 一つは、デメリット無しのほぼ前の世界と変わらない俺で転生する。

 もう一つは、デメリット込みでポイント増やし、『アビリティ』『スキル』『アイテム』をしっかりと整えて転生する。の二択だ。


――正直に言って、どちらにも踏ん切りがつかない!

 

 初めのパターンは、周りの環境次第では即死ぬかもしれない――だって俺、もやしだし。

 後者のパターンは、比較的に安パイなデメリットを選ぶ予定だが、デメッリトには変わりなく、それが原因で同じく死ぬ。


 残りのポイントが60しかないので、どうしてもしっかりとしたキャラ構成にするには前提条件を満たしたりする為にポイントが掛かる。

 デメリットを背負わない構成は、『スキル』の【槍術Ⅰ】・【体術Ⅰ】と『アビリティ』の【ヒント】に『アイテム』から【銅の槍】・【1000リシル】、最後に『転生先』の【ルルアットの近くの街道付近】だ。


 【1000リシル】はお金で、“ノーラス王国”の通貨だそうで日本円で大体、1万円くらいだそう。そのノーラスお国領内にある“ルルアット”って町が【ヒント】で観る限りは割と安全そうな場所だそうだ。


 レベルやこの“キャラ設定”の所為でゲーム感覚に陥り易いけど、これはあくまで現実の出来事。

 人間、生きて行く為にはお金が掛かるし、住む場所の治安が悪いと何が起こるか分かったもんじゃない。

  武器に槍を選んだのは、歴史の本で農民でも槍を持てば結構人を殺せる記述を思い出したからで、【体術Ⅰ】も残りのポイントで取れる物だったからだ。


 てな、感じの事を考えた上でこの構成を考え付いた。


 ただ、【槍術Ⅰ】と文字の後ろに数字が書かれている様に、その能力の性能をポイント消費で上げられるのだが、ポイント残りはゼロなので上げる事は不可能だ。

 果たしてⅠの性能とは、どのぐらいな物なのか?【ヒント】でもよく分からなかった為に不安だ。

 『スキル』の性能は使い込めば上がるらしいが、使っている途中で死んじゃえば、何の意味も無い。


 ・・・それと、構成以外・ ・ ・ ・の事も考えるとなお安定の度合いが悪い。


 俺たちが行く、“ラフォール”の現地知識は、ほぼ皆無だ。

 【ヒント】のお陰で、少しは考察できたけど、実際の目で確かめるとまた違うものが有るだろう。『アイテム』に【異世界の常識本】なんて物が在るが、消費が30と割と高めで手が出しづらい。

 

 元の常識のままに行動したら、犯罪でした!なんて事も起こりかねない。

 現地民に話を聞く・・・なんて物語じゃあ都合よく行くけど、現実だとなぁ~。

 素直に答えてくれる人もいれば、適当に答えて煙に巻く人とかもいるだろうし、知らない異世界人に話しかけるのはハードルが高い。


 そんな常識の問題と――こちらが、一番頭が痛い問題でそれは・・・

 

 俺と同じく転生するクラスメートの事だ。

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