第2話

 「――特典はキャラ設定です!」


 そう神様は俺たちに声高らかに宣言した。

 ・・・姿が見えていないので、想像でしかないのだが、たぶん神様は結構なのドヤ顔をしているに違いない。

 ――そんな風に感じ取れる、声色ではあった。


 俺は若干そんな神様の姿を想像して呆れつつあったが、神様はそんな事お構いなしにテンション高めに話を続ける。


 「ではでは!この手のゲームをやった事が無い人もいる様だから、ちょいと説明して挙げよう!!あ~話を聞かずに勝手に触って、おかしな状態で転生してもボクは知らないよ~」


 おっと、あぶね。ゲームとかで観る画面に似てたから、適当に触ってみようとか思ってた。

 神様の注意を受け、俺は焦り気味ウィンドウから意識を少し外す。


 「うん、うん、ちゃんと話を聞く事は良い事だよね!それじゃあ話の続きをするよ。

 まず、君たちの前に出た画面に映る姿、それは転生した時の姿だよ。死ぬ直前のまでのケガとかしていない健康な時の身体をモデルに反映させて貰いました。」


 神の言葉でウィンドウに映る姿を観ると。確かに黒髪で身体の線の細い、冴えない少年の自分が映し出されている。


 「それがデフォルト――何にも一切手を加えていない状態。・・・あっ、一応は異世界の共通語を話したり、書けたりする様にはしておいたから、それ以外は生前のままだよ。」


 お!マジか!それはありがたいな。

 異世界に行って語学をゼロから学ぶとか、かなり厳しそうだし。俺、外国語が苦手だったからなぁ~――いや、でも共通語か。

 もしかして、地球で言う所の英語とかと同じで国や地域によっては、話が通じなかったするかもしれない。


 「おお!良い所に気が付くね!そう、共通語はあくまでその異世界の人の多くが喋れる言葉だけど、種族や一部の地域じゃあ言語が違ったりするからね。」


 あ~やっぱ、俺の思考とか読まれてる感じか。

 神様が俺の思考を読んで話をした事に、ドキリとしたが神様はそんな俺に構う事無く、話を続ける。


 「――でも、その問題を解決する方法があります、それが画面に書かれた5つの項目さ!

 上から順に、『キャラ』『スキル』『アビリティ』『転生先』の5つが書かれているよね。


 『キャラ』は、種族や年齢、体型に顔の形、それと性別なんかの転生した時の姿を変える事が出来るよ。


 『スキル』は、簡単に言えば技能かな。生きて経験した上で身に付く物を異世界では『スキル』と呼んでいるよ。この『スキル』の中に言語に関する『スキル』もあるから必要と思えば取ってみれば良いんじゃないかな。

 因みに『スキル』は異世界でちゃんと努力すれば。『スキル』が成長したり、獲得する事も在るから。


 『アビリティ』は、才能の事かな。『アビリティ』を取って措けば『スキル』の成長や獲得が早かったり、『アビリティ』がある人の方が若干だけど、上手かったりするよ。


 『アイテム』は・・・その名通り『アイテム』だね。好きな物や服装が選べてそれを転生した時に持たせてあげるよ。


 『転生先』・・・もう解るでしょ」


 長い説明に飽きたのか、それとも疲れたのか解らないが最後は随分と短く御座なりだった。・・・けれど、神様の説明のお陰で何となくこのキャラ設定で必要になりそうな事は解った。


 「あっ最後に、各種の変更または取得等にはポイントが掛かるから。その左に消費するポイントが書かれていて、君たちみんな初期ポイント・ ・ ・ ・ ・はみんな平等に100です。画面左の一番上に表示されているから確かめてね。

 ――それと変に期待していたら困るから言うけど『スキル』と『アビリティ』とかは君たちが期待するアニメやマンガみたいな異世界を無双できるチートな物は無いから諦めてね!!」


 ・・・まあ、そうだろう。

 転生させてくれるだけでも、結構ありがたい事だ。

 その上にチートの能力も付けてくれる――とか、話が出来過ぎていて逆に疑う。・・・でもなぁ、この神様もなんか隠してるっぽいから油断はできない。


 「さて、ボクからの説明は以上かな?じゃあ実際にやってみようか。取り敢えず1時間ほど?待つからその間にしっかりと考えてキャラ設定してね。

 ん?ああ、何か勘違いしている子が居るので話すけど、君たちはただ異世界に転生して貰うだけ。――別に勇者とか英雄になって世界を導いて欲しいとかは無いから。

 まあ、目指すのは自由だけど・・・そんな事よりもボクは、ポイントは計画的に利用する事をオススメするよ。」


 あ、なるほど英雄願望をお持ちの方がいらっしゃったのね。

 気持ちも解らなくはないけど・・・リアルでやっちゃうと痛い奴だよなぁ。


 「え~、もう良いかな?ボクはもう説明で疲れたから、後は質問は受け付けないよ~!

 それじゃ、キャラ設定を頑張ってね~!!」


 ◇◆◇◆◇


 さて、どうしたものか?


 取り敢えず時間も限り在るので、さらっとだけど色々と触って確めた。

 ――で、解ったのだけど、このキャラ設定は中々にエグい!!


 まず、物の説明が酷い。

 例えば、『キャラ』の種族を選択し、その中の【エルフ】を選ぶと消費ポイントに説明に“選択しますか?”の問いと、はい・いいえの決定ボタンが浮かぶ。


 そこまでは良いのだが、そこの説明に書かれているのが


 ――耳が長い、顔が美形。

 

 だけだぞ!おい、なんだその何の得にもならん説明は!!

 説明なんだからもう少し具体的に書けよ!


 因みに、他の項目の物も同じ様な説明で、説明の意味を果たしていない物ばかりだった。


 ただ、『アビリティ』の項目に気に成る物が一つだけ存在していた。

 それが、【ヒント】と言う『アビリティ』で説明が“ヒントが見えるようになる”だ。

 

 推測だが、この『アビリティ』を取れば、キャラ設定の項目の説明に何かしら変化が起きると思う。

 根拠としては、この【ヒント】の消費ポイントが40と高く、選択した後のキャンセルは不可能。初期100しかない俺たちにとっては厳し目の設定になっている事から割と重要な『アビリティ』だと察する事が出来る。


 なのでこの【ヒント】を取り、残り60ポイントでちゃんと理解した上で選択するのか、ギャンブルみたいに一か八かで選ぶのか考えろと言う事だろう。


 しかし、これは本の序の口で・・・本番は、マジえげつなかった。


 あの神様は、確かにチートの『スキル』と『アビリティ』は無いと言っていたけど――『アイテム』の項目にそれらし物が存在した。


 それも【神器】シリーズだ。

 剣や弓の武器から盾や鎧の装備に、生産とかに使いそうな道具まで各種取り揃えているみたいだ。

 他にも【聖剣】や【魔剣】等の中2心を擽る物も存在している。


 使いこなせるか、どうかは一先ず置いとくして。

 持っているだけで、何かしら効果が期待できる物であるのは想像に固くない。

 チートは無いっと言って措きながら、これはどういう事なのか?


 答えは簡単だった。

 【神器】の消費ポイントが1億と桁がおかしいのだ。


 もしかすると、こんな物あるんだよっと見栄え用にディスプレイされた物か。

 ――と最初は思った。


 でも、それは少し違ってた。

 他の【聖剣】と【魔剣】を調べてると不可解な事が解ったからだ。


 【魔剣】のシリーズの中の数本に何故か消費ポイントが書かれていない物が存在していて、その『アイテム』の名前も観るからにヤバそうな名前なのだ。


 何か在るなと、睨んだ俺は他にも何かおかしな物がないか調べると。

 『スキル』や『アビリティ』、『転生先』にも消費ポイントが書かれていない物は存在した。



 ――ここで、やっと俺は気付かされた。

 あの神様が初期ポイント・ ・ ・ ・ ・等と言ったのかを。


 俺の推測が正しければポイントは増加する・ ・ ・ ・

 てか、そうじゃなきゃ初期なんて言い回しをしないはずだ。

 

 ならば、ポイントはどうやって増やすのか?と疑問が増えるが答えは既に出ている。

 ――そう、消費ポイントが書かれていない物だ。


 『アイテム』の項目の消費ポイントが書かれていない物の名前には、大体が【怨念】とか【邪悪な】とかネガティブワードが盛り込まれていて。


 『スキル』や『アビリティ』の項目にもぱっと見ただけでは解らないが、【狂化】と言う悪いイメージが出来そうな『スキル』があったり、【憤怒】や【強欲】等の七つの大罪がモチーフの『アビリティ』ありもした。


 もう解るとも思うが、これらの消費ポイントが無い物は、総じて何かしら俺らに呪い等のデメリットを与える物だと予想されるのだ。

 名前を見れば明らかに胡散臭い物が在るので誰もがこの事実に辿りつく事だろう。

 

 けど、その先の闇にここの全員が気づくか解らない。

 

 ここからは、予測だがこのデメリットがこの項目に並んでいる理由は


 ――“デメリットを取得すればポイントが増える”からだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る