さらば愛しのセブンティーン
住原葉四
さらば愛しのセブンティーン
「ハッピバースデートゥーミー。ハッピバースデートゥーミー……。」
今日は私の誕生日だ。周りには当然誰も居ない。バイトはしているが収入は良くないのでホールケーキなんて贅沢は出来ない。コンビニで買った私の好きなチーズケーキを買って、私はそれに蠟燭を刺す。独りなら
私は代々伝統のある家系に生まれた。県下一の豪家で明治維新を堺に名を馳せた名家だ。そんな名家とは云え私の家は分家で、本家からは
十五で家を飛び出した。そのまま居座ればエスカレーターで進級出来るのだが、私はそうはしなかった。
私が初めて付き合った彼は、今流行りのマッシュと云う髪型をしていた。ピアスもしていたし、髪も染めていた。でもその姿は私には出来ない事で、惚れ惚れしてしまった。周りの人からは考え直しなよとか、大丈夫なのとか、訊いてくるけれど、好きになったもの仕方がないし、好きでいるのに理由なんて要らないのだと私は痛感した。彼は私を優しく抱いてくれた。何かから擁護してくれるように、私を抱いてくれる彼を見ていると私は不思議と幸福感に満たされた。その優しくてでも強い手で私を愛撫するのだ。
初めての恋が良いとは云えない理由に、彼の後ろに沢山の女性が居たことだ。詰まる所、彼には浮気相手が何十人も居た。その内の独りが私だったことに気付かされたのは、彼と別れて数年後だったことに後悔する。有名なハンバーガーチェーン店でポテトを頬張りながら、女友達と少し伸びた髪の毛を弄りながら、笑う。私だけに云ってくれたと思っていた言葉は、他の誰かにも云っているのだと思うと
私は十八になる。若かった少女から一気に大人へと登る私の身体は、精神的にも肉体的にも大人とは云えない程若々しい。こんな私が大人とは到底呼べ無いのに、私は
この十七年間辛くもあったが、今の私を形成する大事な想い出だと考えれば、少しは
「おめでとう、私」
蠟燭が優しく私を包み込み、オレンジ色の光が眠りに誘う。
さらば、十七。さらば、少女の私。
さらば愛しのセブンティーン 住原葉四 @Mksi_aoi
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