第3話 迷宮
迷宮都市アルトリアに着き、苦痛の旅を終える。
『自動再生』もあるため傷は残っていない。
迷宮都市アルトリア。
冒険者や商人で溢れかえっており、領都よりも賑わっている気がする。
アルトリアは、四方から中央に伸びる大通りがあり、多くの店や宿やがひしめき合っている。そして小路と家屋がその間を埋めるようにして建っている。
そんな街並みより目立っているのが街の中央にある、迷宮を囲うようにして作られた神殿だ。これは勝手に迷宮に入って事故につながるようなことがないようにと、入場者を管理するために作られた。
「よしっ、まずは宿を探すぞ」
旅中の暴力などなかったように、アルヴ様は宿探しを始める。
溢れかえるような人混みの中を進み、やっとのことで宿を確保する。どの宿も満室だったがなんとかここが空いており、二部屋確保できた。二部屋しかないので、男二人、そして僕と女子二人の二組にわかれることになった。
部屋に荷物を置き、早速冒険者ギルドに向かった。
さすがは迷宮都市のギルド。
六階建ての木造建築で、領都のそれよりも一回りも二回りも大きかった。
そんな大きなギルドでも中には人、人、人。
まるで年末年始のショッピングモールのようだ。いや、ここのギルドはショッピングモールかもしれない。ギルド内を見渡せば、酒場や食事どころ、ちょっとした武器屋や防具屋、冒険必需品のお店などが併設されていた。
そして迷宮都市だからか、人族が多いものの獣人やエルフもちらほらと見かけられた。竜人は滅多に人前にでないのでここなら見かけるかもと思っていたが、いないようだった。さすがにそうそう見られるものではないか。
閑話休題。
ここには一応クエストボードはあるものの依頼の数は少ない。あるにはあるが報酬の少ない低級のクエストが多く人気がないものばっかりだ。
なら冒険者はどうするのか。それはクエストボードの隣にある換金表を見れば分かる。
迷宮で得た魔物の魔石をギルドに買い取ってもらうのだ。
魔石だけでなく素材の買取もしているので、それらを換金することによって生計を立てているのだ。
「ま、だいたいそんなもんか」
魔石の換金表を見て、そんなもんかと納得する。価格は領都と変わりはない。多少低いぐらいだ。
そしてその横にある、階層ごとの魔物の分布をみれば、やはり浅い層には弱い魔物が、深い層には強い魔物がいる。
今の実力だと十五階層までは進めるだろうか。
「今から潜ってもなぁ……明日から潜るか」
「なら今日はもう自由でいいわね」
「ああ。金は使いすぎるなよ」
「分かってるわよ」
ゴブリンの一件で財布が潤っているとはいえ、余計な出費は抑えたほうがいいだろう。
「カグラ、私と一緒に街でも見て回りましょう」
「私もご一緒していいですか」
「ええ、もちろんよ」
「それなら俺は武器屋でも見てくる」
「武器屋か……俺も行こう」
僕はルーシャ様とゼシア様と一緒に観光をすることにした。
雑貨屋や本屋、カフェなど様々なお店から、小路などの生活感が溢れる場所に行ったりしてアルトリアを楽しんだ。僕にとっては初めて異世界というものに触れ感動した。
翌日。
僕たちは早速迷宮に潜り始めた。
◇◇◇
一階層は魔物がいない鉱石があるだけなので、地図を片手に二階層へと進んでいく。
そしてついに五階層。
やっと一般的な魔物が出始める。しかしこのパーティーにとっては雑魚なので準備運動がわりに魔物を倒す。
そうして進み十階層につき十階層ごとにあるボス部屋に着く。
それなりに大きな空間があり、床には大きな魔法陣があった。
足を踏み入れると魔法陣が光り出し召喚魔法が発動する。
現れたボスはオークジェネラルだった。
ランクはCからBランクほどと新人にとっては少々手強い相手だ。しかしこのパーティーにとってはちょうどいい相手だろう。
「『
「『付与:身体強化』」
「「はぁっ!!」」
ルーシャ様がオークジェネラルの隙を作り、ゼシア様によって身体強化されたアルヴ様とトール様が攻撃を仕掛ける。
さすがの連携だ。僕の手助けなど必要なかった。
危なげなくボスを倒す。
すると奥の扉が開き下へ続く階段が現れる。
「ふぅー、ここで休憩してっか」
この場で少しばかり休憩することになったので、その間にオークジェネラルを解体し、換金できる素材や魔石を回収する。
十分ほどで、休憩と回収を終え、次の階へ進む。
十一階層からは魔物も強くなっていった。
しかしこのパーティーの実力だと、瞬殺とはいかないが二撃三撃で倒せる程度だ。
そして地図を見ながら攻略をすすめ、すでに二十階層のボス部屋の前まで来た。
「とりあえず今日はここまでだな。ボスは明日だ」
相手が雑魚だったとしても一日で十九階層も攻略するのは大変だった。それに時間もすでに夕方ごろだろう。
なので今日は帰って休み、体力が復活した明日に挑戦する。
「じゃあ、起動しますね」
僕はバッグからとある道具を取り出す。
これは『帰還石』と呼ばれる、迷宮のどこにいても魔力を流して起動さえすれば地上に帰れるという素晴らしい代物だ。さらに迷宮に戻るときはまた進んだところから進めるので、利便性が高く、値段も高い。
しかし利便性を考えると購入せざるを得ないので、ゴブリンの一件で得たお金で購入した。
起動すると視界が変わり地上に戻る。
「じゃあ、また明日、今日と同じ時間に集合な」
アルヴ様はそう言うと人混みの中に消えていった。
旅中の一件以降、仲が悪くなっているため冒険者として活動しているとき以外は別行動が多くなっている。
翌日、ぼくたちは二十階層のボス部屋まで戻ってきた。
ボス部屋に足を踏み入れる。現れたボスはミノタウルス。
五メートルはありそうな巨体、人の身長ほどある大剣を手に、そこに佇んでいた。
これまでの魔物とは比べ物にならない威圧が放たれる。
足が竦む。
「カグラッ! お前も『獣化』で前衛に来いっ!」
「はいっ」
だけど、逃げるわけにはいかない。
僕も『獣化』をして前に出る。ゴブリンおときは初めてだったので少し理性が飛んでいたが、今はしっかりと理性を保ちミノタウルスと相対している。
先手必勝と僕たち三人はミノタウルスに近づき攻撃を加える。
「はぁっ!」
「でぇやっ!」
「シャァァァッ!」
「グモォォォォォッッ!?」
致命傷には至らないが十分な怪我を負わせる。
僕の炎の爪は相当効いたためか、アルヴ様は嫉妬から舌打ちをしていた。
「次行くぞっ」
トール様が声をかけ、また突撃する。
それから数十分、ルーシャ様やゼシア様の援護もあって無事ミノタウルスを討伐できた。
「はぁーーー、おわったわねぇ」
皆んな疲労のためその場に座り込む。
僕はその間にミノタウルスを解体し素材を回収する。
「カグラ、あなたも疲れてるでしょ。少しは休憩しなさい」
「はい、素材の回収が終わったら休みます」
僕たちは二十階層のボスを倒して、順調に迷宮を攻略していた。
二十一階層からは苦戦するような魔物が増えてきた。ランクはCランクの魔物が多いのだが苦戦している理由はと言うと――
「「「「ギャァァァッッ!!」」」」
――とにかく数が多かった。
魔物の数が多く対処しきれないものもちらほらと出てきた。
倒しても倒しても次から次へと魔物が襲う係、休憩する暇などない。
そのため三十階層まで進むのに一ヶ月ほども時間がかかった。しかし僕たちも強くなった。
三十階層のボスはこれまで異常に強いだろう。これまで異常に苦戦を強いられるだろう。だからこそ万全の状態で挑めるように準備を整えた。
僕たちはボス部屋に足を踏み入れる。
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