第2話 苦痛の旅

 この世界には迷宮というものがある。

 自然的に発生し地上型と地下型の二つのタイプがある。


 地下型はその名の通り地下の洞窟のようになっており、このタイプの迷宮は多い。

 地上型はこれまたその名の通り地上に塔や神殿のような建造物が迷宮になっているタイプだ。


 そして両方に共通していえることは冒険者に人気ということだろう。

 宝箱からはレアな武器、地下型の迷宮の壁には鉱物があったり、魔物の素材があったりと換金できるものが多い。

 だからこそ迷宮を中心に栄えた町は多い。


 次の目的地はドステルト領にある迷宮都市アルトリアだ。

 この町は、数十年前に地下型の巨大迷宮が誕生した比較的新しい街で多くの冒険者が滞在しているため活気がある。

 巨大迷宮アルトリアは数十年経った今でも全貌が掴めておらず最高到達階層は四十二。全部で百階層はあるだろうと言われている。

 だからこそ未知のお宝がある確率が高く冒険者たちは血気盛んに迷宮を攻略し一獲千金を夢見ている。


 話が逸れたがこのパーティーは十分な実力があるため迷宮に行けば今以上に稼げるだろうということで、領都を出発するそうだ。

 僕も冒険者の生活に慣れてきたためちょうどいい頃合いだろう。


 道中は護衛の依頼でも受けようかという話になったがたまにはゆっくり行こう、ということで依頼のことを考えずにのんびりとアルトリアに向かうことになった。


 そして今、領都を出発し陽も落ちてきたため野営の準備をしているところだ。

 テントは三つ、アルヴ様とトール様とルーシャ様が立てていた。男二人とルーシャ様、僕とゼシア様で三つだ。

 そしてゼシア様が夜ご飯を作り、僕は周囲の警戒のため耳を立てていた。


「ご飯できたよ」

「おう、今行く」


 ゼシア様の作ったおいしい夜ご飯で腹を満たし、することもないので寝ることにした。

 夜番は必要ない。魔道具である『魔除香』があるからだ。これがあれば魔物は寄ってこない。これでぼっ――ソロの冒険者もゆっくり休めるという冒険者に改革をもたらした品物だ。


 僕はゼシア様と同じテントに入り寝袋に身を包む。


「カグラ、ちょっといいかしら?」

「はい? 何でしょう」

「私のテントにきなさい」


 ルーシャ様に呼ばれ、ルーシャ様のテントに入る。


「うっ」

「ふふっ」


 いきなり口元に布を押し付けられる。そしてそのまま体が麻痺してしまう。


「ルーシャ、様…… ?」

「さあ、カグラ、お姉さんと気持ちいいことしましょう」


 僕は麻痺した体を動かせず、ショタコンだったルーシャ様に体の隅々まで犯された。苦しかった辛かった。

 ルーシャ様はドSだったようで、首を締めたりして僕を愛した。

 僕を買った時から僕を性欲発散をするつもりだったようだ。だが、以前ゴブリンから助けられたため、愛しつつも苦しませることにしたようだった。


「ふふっ、気持ちよかったわね。またしましょう?」


 僕は体を僅かに痙攣させたままだ。

 僕はそのまま意識を沈める。



 僕はルーシャ様と寝ているとアルヴ様に連れていたようだ。というのも今目を覚ますとアルヴ様に手を木に縛られているからだ。


「このクソ野郎がっ」

「うぐっ!?」


 アルヴ様に殴られる。


「お前のせいで俺の評判が悪くなっちまっただろっ」

「あぐっ!?」


 アルヴ様は八つ当たり気味に僕をサンドバッグのように殴る。

 手を縄で縛られて木に吊るされているため抵抗もできない。


 曰く、僕のせいであの街でアルヴ様の評判が悪くなった、仲間を置いてくことにしようとしたのは僕が警戒を怠ったから。

 理解不能な、ただの理不尽な嫉妬だ。


 しばらく殴り続けられアルヴ様も落ち着いたのかロープを切ってテントに戻っていった。


 僕は痛む体に鞭打ってテントに戻ろうとしたが、ゼシア様も僕がいると邪魔だろうと思いこのまま眠りにつくことにした。



 翌日、ゼシア様やルーシャ様に心配されたが問題ないと答えた。

 そして朝の支度も終え、再び歩き出す。


 寄り道やゆっくり歩いたため、すでに日が暮れ始める。

 この調子だと明日中には到着するだろう。


「アルヴ、あなた昨日の夜、神楽になにしたの?」

「あぁ? 何もしてねぇよ」

「それならなんでカグラは外で寝てたの。私と寝てたはずだけど」

「知るかよ。寝ぼけてたんじゃねーのか?」


 ルーシャ様がアルヴ様に昨日のことについて言及する。

 しかし、アルヴ様は知らないと言い続けている。


「カグラ君の寝相はいいです。宿で寝てる時も動いてませんでした」

「だそうよ」

「トールがやったんじゃねーのか?」

「なぜ俺にっ」

「トールは一度寝たら起きないわ。昨日もう寝てることは確認済みよ」

「ちっ。ああそうだよ、俺がやったよ」

「カグラになにをしたの?」

「奴隷の仕事をさせただけだ」

「?」

「話からねーのか? サンドバッグだよサンドバッグ」

「「なっ」」

「奴隷なんだからどう使ってもいいだろ」

「カグラが可哀想でしょっ」

「カグラは気にしてないだろ?」

「はい、僕は奴隷なので」

「でも……」

「でも、なんだ? 奴隷を乱暴に扱うなっていうルールはねぇからな」

「……ッッ」


 少し雰囲気が悪くなるも、まだ旅は続く。

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