第4話 ステータス判定
ついに10歳になった。そして今日は運命の日だ。そうステータス判定である。
この結果によっては、僕の人生は大きく変わる。要は人生の分岐点。平穏か地獄か。忌子じゃないならば平穏、忌子ならば地獄の人生になる。だから僕は1週間ほど前からヒヤヒヤしていた。前日はすっきり眠れなかった。
ステータス判定はどこも10歳になったら行う。そして15歳になったら成人の儀式を行う。この二つは場所や家によっては盛大に行うところもあるほど子供にとって大事なものだ。
とりあえずステータスの説明をしよう。
ステータスは、自分の能力などを表すものだ。「ステータス」と言えば自分のステータスが表示される。これは自分にしか見えない。そして、「ステータスオープン」と言えば自分のステータスが他人にも見えるようになる。この機能を利用して国境を越える際の身分証明にも使われている。
ステータスには、名前・性別・種族・レベル・生命力・魔力・体力・筋力・俊敏・スキル・魔法・称号が書かれてある。スキルは多くの人が最低でも一つ二つは持っている。日々暮らしている中でスキルが発現するのだ。だから、人生経験が豊富な人ほどスキルは多くなる。
そして、魔法や称号は持っている人は数少ない。転生者は魔法や称号を持っているのは当たり前だと言う。神から貰っているのかもしれない。そういえば僕、神に会ってないんだけどな。
ともかく、ステータスは個人個人違い、種族でも差がでる。獣人は魔法も魔力も持っていなかったり、エルフは魔力が多かったりだ。
ステータスを判定するのは主に教会で行う。教会がない村などは村にある祭壇で行うそうだ。
この村はもちろん後者の方法で行う。
今、この村の祭殿には多くの大人たちが見守っていた。
「これであいつが忌子かどうか分かるな」
「ああ、忌子なら奴隷にせんとな」
大人たちは僕が忌子かどうか知るために村のほとんどの大人が集まっていた。お父さんとお母さんは神妙な面持ちだった。
今年、ステータス判定の儀式を行うのは、僕とミーツェともう一人、悪口を言っていたやつだ。
早速、ステータス判定の儀式が行われようとしていた。最初は悪口を言っていたやつだ。そう言えば名前はなんと言うのだろうか。
彼は祈りを捧げるように、膝をつき手を組む。
少しすると彼の体が光に包まれる。そしてステータスが表示される。
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イデル・シートン
男 猫人族 10歳 Lv.3
生命力:600
魔力:0
体力:500
筋力:350
俊敏:100
スキル:身体強化(1.5倍)、獣化
魔法:なし
称号:なし
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ああいう風に映るのか。周りのはんのうからしてあれが普通なのだろう。というかイデルっていう名前だったのか。
「イデル、おめでとう!」
彼の友達が10歳になったことを祝っていた。そして彼の両親も周りの大人たちも祝っていた。
次はミーツェの番だ。
膝をつき手を組むと少しして光に包まれる。
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ミーツェ・エネスタシア
女 猫人族 10歳 Lv.6
生命力:1200
魔力:0
体力:1000
筋力:500
俊敏:250
スキル:身体強化(3倍)
魔法:なし
称号:なし
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イデルよりステータスが高い。毎日修行のようなことをしたからだろうか。いや、ミーツェは元からか。
平均より高いステータスに大人たちは興奮気味だ。
「すごいじゃないか! さすがはおれの子だ!」
「すごいわよ、ミーツェ。さすがはあなたの子ね」
ミーツェの両親は当たり前という風に祝っていた。どうやらミーツェの父親はこの村では英雄扱いされているらしい。初めて知った。
「すごいね、ミーツェは。さすがだよ」
「カグラ……ありがとう。次はカグラよアタシのカグラなんだからすごいに決まってるわ」
最後に僕だ。僕は忌子疑惑があるため大人たちは緊張しつつもしっかりとこちらを見ていた。
僕も緊張をしていた。前世も含めこんな多くの人に囲まれたことはない。いや最期にあったな。
そんなことを考えつつも、僕は膝をつき手を組む。そして光に包まれる。
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カグラ・ナーヴァル
男 猫人族 10歳 Lv.7
生命力:4000
魔力:800
体力:600
筋力:300
俊敏:200
スキル:ストレス耐性、恐怖耐性、苦痛耐性(20%)、自動再生、守護、獣化
魔法:火属性魔法、●●●●●●
称号:悲惨者、界越者、転生者、守護者
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……………………あ、うん、こりゃダメだ。僕の平穏は失われた。魔力あるし魔法――一つだけ文字化けしている――もあるしスキルも称号も盛りだくさん。なんじゃこりゃ。しかも界越者? なにそれ覚えがない。界を越える……世界を越えるってことか? おそらくそんなところだろう。さらに生命力のステータスが異常に高い。なぜだろうか?
「ふふっ、やっぱりアタシのカグラはすごいわね」
ミーツェはそう言ってくれているが、このステータスはアウトだ。
見ろ。見守っていた大人たちの視線を。まるでゴミを見るような視線だ。ただ僕の両親だけは違った。
「で、どうする? 実際に忌子だったわけだが……」
「頼む! 称号も見ただろう!? いくらなんでも可哀想だ!」
「しかしなぁ……村に何かあってからでは遅いんだ」
「そこをどうか!」
お父さんが僕が奴隷にされないように交渉していた。
僕が言っても大人たちは話を聞かないだろう。
「…………まあいいだろう。何かあったら奴隷にするからな?」
「ああ! ありがとう!」
お父さんの勢いに負けたのか、僕は今まで通りに暮らせてもらうことになった。後でしっかりお父さんに感謝をしなければ。
しかしこれからの生活は大変になるかもしれない。大人たちから冷たく対応されたり同世代の子供達からいじめられることになるだろう。しかし呪われるからと近づかないかもしれない。そうなってくれれば良いのだが……どうなるかは明日分かることだ。
そしてミーツェは僕とどう接してくれるか。それも大事な問題だ。ミーツェを見てみる。
「ミーツェは、その、気にしないの? 僕が魔法が使える忌子ってこと」
「ん? アタシは気にしないわ。魔法使えてすごいし、呪いなんてどうせ噂でしょ」
「そ、そっか」
良かった。ミーツェは今まで通り接してくれるだろう。ミーツェが僕に嫌悪を抱いていたら僕は前世と同じように一人になっており家に引きこもっていたかもしれない。そして両親に甘えていたかもしれない。まあ、それはそれで良いのかもしれない。
とにかく、今日のステータス判定で僕が忌子であることが判明したが、お父さんのおかげで奴隷にされずに済んだ。それにミーツェも今まで通りに接してくれるという。どうにか、僕の人生は地獄にならずに済んだようだった。
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