真綿の呪縛

 鳥籠の扉が開いていると気付いたのはいつだったろうか。閉じ込められたままこの生を終えるのだと根拠もなく信じていたから、その日はとても驚いたというのはおぼろげながら記憶に残っている。鳥籠の中で生きる生命であるからあなたはわたしを愛してくれているのだ。

 あなたが手ずから砂糖菓子をくれるから、それを食べて生きていけばよいと思っていた。ある朝、砂糖菓子もあなたの声も聞こえなくなった。あなたとの想い出が、触れられぬほど遠くなっていく。甘い甘いあの感触を追憶する。閉じたままの瞼からこぼれる液体はちっとも甘くない。

 鳥籠の扉は、今日も開いている。気が狂ってしまいそう。なぜ? あなたはわたしを恋うてくれていたのではないの?

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故意のはなし 詠弥つく @yomiyatuku

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