7.

 「いや~久しぶりに楽しかったよ。こっちに来てからは晩飯はいつも1人だったからさ」

 食事の後、俺の部屋に戻りテレビの設置ついでに片付けを手伝ってもらう。

 「たまに来たらいいんじゃないか?多分、大丈夫だと思うぞ」

 「それも悪くないね。帰りにお母さんに交渉してみるよ。一食いくらかで」

 この物件のいいところは一緒に食べたかったり作るのが面倒なら頼んでおけばいいし1人が良かったりいらなければ勝手に外で食べて来たり部屋にキッチンがあるのでそこで料理すればいい点だ。選べるというのは結構、楽だと思う。そもそも選べること自体珍しいことじゃないだろうか。

 騒がしい食堂も嫌いじゃ無い。ちょっと変な人たちだが悪い人たちでは無いことや。僕を助けようとしてくれる人もいることが分かっただけでも安心できた。

 「もし部屋が空いたら俺もここに引っ越して来ようかな」

 冗談とは思えない久志の言葉に俺も悪く無いと思って頷いた。

 「2人ともロリコン教師がみんなにお土産買ってきてくれたわよ!」

 階下から大きな声で和美さんが呼んでいる。ロリコン教師ってそんなでかい声で言わなくても・・・そうだけど。

 「まだ新キャラいるの?もうお腹いっぱいなんだけど」

 久志の言葉に苦笑いしつつ紹介するよとだけ言って連れ出した。

 



 「おはよう、今日の講義は何時からだっけ?」

 「喜べ、今から急いで支度すればギリギリ間に合うぞ」

 そう久志に言って俺はすぐに着替えを引っ張り出す。眠そうな顔をしていた久志もつられて飛び起きる。

 結局、昨日は夜中まで久志に住民紹介と宴会が行われた結果、俺の部屋に泊まることになった。和美さんが久志を部屋に呼ぼうとしていたような気がしたが気のせいだろう。連れ込めなかった怒りはパンフリに全て集中していたようだが大丈夫だろう。いつも通りだ。

 「とりあえず着替えはこれ使え!」

 「サンキュー!」

 無駄口を叩く暇もなく着替えを済ませキッチンのパンのロールパンを2つ掴むと1つを久志に放り投げリュックを背負う。

 「やべ、教科書!」

 「俺の見せてやる!行くぞ!」

 慌ただしく部屋を飛び出す。音に気がついてお母さんが顔を出す。

 「2人とも朝ごはんは?」

 「ごめんなさい!パン食べたから今日はいいです!行ってきます!」

 「だから昨日、程々にして寝なさいって言ったでしょ。行ってらしゃい!気をつけてね」

 言うことを聞いておけば良かった・・・後悔してももう遅い。幸いにもこのペースなら間に合いそうだ。

 「昨日は楽しかったけどオチがこんなことになるとはな」

 「まったくだよ」



 「今日は二人一緒にギリギリセーフだったけど朝まで一緒だったの?」

 休憩時間に千尋が声をかけてきた。

 「昨日、テレビ持って帰ったついでに飯もご馳走になったんだよ」

 「あんた料理できたっけ?」

 「いや、こいつの下宿先、食堂が付いててそこで飯が食えるんだけど俺も一緒に食べさせて貰ったんだよ」

 「へー便利だね。私も今度、お邪魔しようかな。家帰って一人分の料理するの面倒なんだよね。結局、まとめて作ることになるから一週間、同じメニューになったりするし」

 「多分、大丈夫だと思うよ。食材費は貰うことになるとは思うけど」

 「ところで話は変わるけど二人はサークルとかは決めたの?」

 千尋に言われてそういえばチラシを何枚か貰ったことを思い出す。

 「言われてみれば何も考えて無かったな。明日の午後は講義も無いし見学に行ってみるか、一緒に行くか」

 「私も何も無いからいいよ」

 「俺も問題なしだ」

 よく考えてみるとアパートの住民を除けばこの二人とばかりいる。これでは高校時代と変わらない。勿論、それが悪い事では無いと思う。ただせっかく知らない土地に進学したのだから新しい出会いを求めるのもいいことだと思う。

 特にアパートの住人は変わった人が多いので同じ大学の普通の人と仲良くなっておいても損は無いだろう。

 「じゃあ明日、昼飯も一緒に食うか」

 「そうしようよ。文也もいいよね」

 特に断る理由もないので頷いておく。

 結局この日は午後の授業は三人ともバラバラだった為、帰りは一人で帰った。







 


 

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