第42話 ゼンギン邸
僕たちは巨大な城壁を潜りゼンギンシティーという街の中へと入った。初めてこんなでかい城壁を見た。どこまで続いているのかと思えるくらい高くどこまでも続いていた。
ここは僕にとっては初めての街だ。
初めての異世界、初めての街。
さて、僕の初めての女性はどっちかな?
「おい、勇者、俺達は家に帰るから、お前は宿でも探せ。じゃぁな。」
「はぁ?僕金持ってないよ。当然従者が用意しているもんだろ?しかも、従者なんだから一緒にいるべきだろ。」
「だから従者じゃないって。でもお金持ってないのか。仕方ない。俺のうちに来い。領主の家だから部屋はたくさん余ってるからな。」
ふふん。こいつちょろいな。ちょろちょろだな。
この調子で妹も籠絡してやるか。
「そうだろ。そうだろ。従者は勇者を大事にしないとな。」
「こ、こいつ殴ってもいいか?」
「お、お兄様、落ち着いて。相手はレベル2よ。死んじゃうわ。」
「そ、そうだな。まぁ、子供だし。勘弁してやるか。」
僕たちは夕方の喧騒の中を目の前に見える大きな屋敷へと向かっていく。まだ遠いのにかなり大きく見える。
夕方の人が多くなる時間とはいえ、通りはかなりの人で溢れている。この街はかなり人口が多そうだ。
十数分後巨大で豪華な屋敷へと到着した。城とまでは言えないな。
「只今戻りました。」
豪華な部屋の中で、来客中だろうか、客人を接待していたひと目で領主と分かる人物に向かってボラさんが挨拶する。
「おっ、帰ったか。しかし、この前のアスラン・バラミールとの試合は惜しかったな。久しぶりの我が家だ。風呂をメイドに用意してもらえ。飯は直ぐ用意させるぞ。」
「はい。直ぐにご飯を頂きたいですね。そう言えば、レイラ姫がこのゼンギンシティーに来られてますよ。」
「一緒に来たのか?」
「いえ、門で偶々あったんです。アスラン・バラミールと一緒でした。」
「そうか、まぁ、仕方がない。あいつは王城をレプタリアンから救ったり、猿の侵攻を防いだりと大活躍だったからな。今度は姫との結婚後は公爵に陞爵されるそうだ。まぁ、姫とは縁がなかったんだ。儂が誰か器量良しを見つけてやる。」
「まぁ、期待しないで待ってますよ。」
「少しは期待しろ。早く食堂へ行って、夕飯食べろ。」
あれ、僕を紹介してもらえなかったな。何で紹介しないんだよ!
『はい、僕は勇者なんです。』『ゆ、勇者なのか?本当か?凄い!初めてみたぞ。伝説の存在だ。ウチの娘を貰ってくれ。』という会話がなかったじゃないか。娘を貰えてたのに。くそぉ!
みんなで食堂へ行った。
食堂は広く、その一角のテーブルに四人でこじんまりと座った。
「なぁ、勇者シンジ。好き嫌いはないか?」
「う〰ん、好きなのは巨乳だな。」
「誰が女の話をしてるんだよ!飯だよ。飯の話だよ。どれだけ女好きなんだよ。童貞のくせに。」
「じょ、冗談だよ。でも、童貞じゃないぞ。」
「どの辺りが童貞じゃないんだ?体中から僕童貞ですって臭いがしてるぞ。」
「そんなこと・・・あるの?」
「冗談だ、冗談。だが、お前は女に余裕がないのにがっつきすぎだぞ。」
「そ、そうなの?」
あー恥かいた。でも女性二人には受けたようだ。これがもし貧乳の女性がいたら惹かれて冷めた目で見られたんだろうな。
「で、何が好きなんだ?」
「鳥の唐揚げかな。」
「じゃあ、俺も鶏のカラーゲ。エスラとナディデは何にする?」
「私はトンカーツ。」
「私もぉ!」
晩御飯は美味しかった。この世界に来て初めてのご飯だ。これだけ腹が減りゃ美味しいに決まってる。
しかし、この世界の味付けは元いた世界と変わらない。そう言えば、言葉が通じるように神がしてくれると物語ではあるから、当然だと思っていたがどう考えてもニホンゴを話してる。
鶏の唐揚げは凄くジューシーで美味しい。
「食後は風呂に行くぞ。入るだろ?入ったことあるか?」
「俺のいた世界では風呂は普通に毎日入っていたぞ。」
「ほぉー、金持ちなんだな。」
「いや、貧乏人でも風呂には入るぞ。」
「すごい国から来たんだな。」
「そうだぞ、敬え!」
「いや、お前が作ったんじゃないだろ。」
「それもそうだな。」
結局風呂は当然混浴ではなくボラさんと二人で入ることになった。お風呂は一人で入るには広すぎるくらい広い。
「そうか。姫に振られたのか。可哀想に。」
「そうなんだよ。剣の試合をして負けたんだよ。そいつがさっき門のところで馬車に乗っていた男だ。」
「僕だったら勝ててたな。代わりに出てやってたら嫁に出来てたぞ。」
「本気か?お前は未だレベル2だろ。俺はレベルが72あるんだぞ。お前の32倍だぞ。」
「そんなに強くて負けたのか?」
「まぁ、ギフトを使わなかったからな。剣だけで勝負したんだ。」
「ギフトってなんだ?誕生日のプレゼントで貰った剣とか?」
「似たようなもんだな。15歳の誕生日に神にもらえる不思議な力だ。」
「そんなのがもらえるのか。」
「お前も持ってるだろ。俺のレベルがわかるだろ。」
「分かるよ。力とか、魔力とか経験値とか、色々と分かるよ。」
「は?なんだ?普通はレベルしかわからないぞ。そんなに色々分かるのか?」
「分かるよ。俺は勇者だからな。普通の人とは違うんだ。どうだ、偉いだろ。」
「はい、はい。でも、まだ下は子供なんだな。」
「ど、どこが子供だよ!」
「見るからにそうだろ。」
「クッ、ま、負けているのはそこだけだ!」
「いや、いや、レベルも負けてるだろ。まぁ、頑張れ。あ~、温まるなぁ。」
風呂の後に僕専用の部屋を用意してもらった。
さすが領主の館だけあって客室も豪華だ。
ベッドの上に寝そべるとまだ眠くならず今日一日のことが思い出される。
ボラの妹のエスラの胸はデカかったなぁ。
そう言えば城壁の門であった二人も胸がデカかったなぁ。NPCでなけりゃよかったのにな。・・・ってNPC?村人その一?この世界でもゲームが流行ってんのかな。
ん?・・だ、騙された!現実なんだから村人その一なわけがないし、その場から動けないわけがない。次は、次こそは我が物にしてやる!
なんだか、ムラムラしてきた。
従者なんだから、エスラは御主人様である僕の部屋にいるべきだろ。どこにいるんだ?
そうだ!探そう。探し出そう。
部屋の外に出るとメイドがいたので訊いてみた。
「エスラに用事があるんだけどどこの部屋にいる?」
部屋数が多すぎて探すより訊いたほうが早い。
「エスラ様でしたら、そこを右に曲がって三つ目の部屋にいらっしゃいますよ。」
「ありがとう。」
コンコン
部屋をノックした。
反応がない。
ドアを開けてみた。
開いた。
鍵がかかっていなかったようだ。
中へ入るとエスラはぐっすり寝ている。
近づくと胸の膨らみが消えている。
えっ?詐欺?詐欺パッド?
よく見たら横のほうが膨れている。
どうやら、あまりの柔らかさで胸が広がり、大半が横へ移動したようだ。
童貞の僕には勉強になった。そんな胸もあるんだな。
パチッ!
エスラが目をパチパチさせる。
目が合った!
ドキッとしたが御主人様がいても従者は驚かないだろう。
「ど、どうしたの、勇者シンジ。」
「従者の勤めを果たしてもらおうと思って来たんだ。」
「従者の務め?」
「分かってるんだろ。ボクの童貞を奪ってくれなきゃ。」
「わ、私・・・今日は・・・はいらん日だから。」
この世界はなかなか科学が発展してるんだな。排卵日か。
「大丈夫だ。子供が出来ても、勇者はオッケーだよ。」
「何言ってるの!今日は、はいらん日だから駄目よ。」
「ん?何言ってるんだ?」
「だから、今日はちんちん『はいらん日』だから駄目よ。」
「なんじゃ、そりゃ。」
チャンチャンだよ、全く。
僕は気勢を削がれてエスラの部屋を後にしもう一人の女性従者ナディデの部屋を探したが見つからず、仕方なく自分の部屋へ帰って寝た。
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