第36話 覚醒

 目が覚めた・・・

 目が覚めたときにはすべてを理解していた。

 俺は死んでいたこと。

 生き返ったこと。

 しかし、実は死んでさえいなかったこと。

 レイラ王女が言っていたフェムトについて。

 わからないことはフェムトが教えてくれる。

 いろんな事を教えてもらった。

 この世界がでかいボールの上にあること。

 月に神がいること。

 なぜこの世界にバケモノがいるのか。

 神の世界とこの世界の関係。

 科学というものについて。

 いろんな事を理解した。

 レイラと直ぐに連絡が取れることも知った。


『レイラ、目が覚めたぞ。どこにいる?』

『王宮よ。今、戦争の報告で忙しいから終わったら行くから。』

『寂しいぞ。』

『え?エイレムがいるはずよ。ハリカは自宅に帰ったけど・・』

『何?エイレムがいるのか?レイラ、明日ゆっくり来ていいぞ。』

『すぐに行く。終わったらすぐに行く。心配よ。』

『俺が心配なのか?俺は大丈夫だ。』

『違う。心配なのはエイレムよ。』

『そうか後でな。出来る限るゆっくり来いよ。』

『はい、はい。』


 俺は、エイレムを探した。動かなくても探せることを知った。レーダーと言うらしい。

 見つけた。今のソファーで寝ている。


 ソファーの横へ転移した。


 服の上からでもわかる巨大な胸がその存在を主張してくる。

 俺の揉み揉みを期待している。

 俺はその期待に答えなければならない。

 ゆっくりと両方の胸を掴む。

 そして、揉みしだく。

 エイレムの目が開いた。

 目が合う。

 俺はエイレムを見つめ微笑んだ。

 エイレムも微笑み返してくれた。


「きゃ〰〰〰〰〰っ!!!おっ、おっ、おば、ぼば・・」


 絹を裂くような悲鳴が屋敷中に響き渡る。微笑み返したその笑顔はまるで幽霊でも見たかのような恐怖の表情に変わっていた。

 あっ、そうだった。俺は死んだと思われているんだった。


「エイレム、俺だ。死んでないぞ。」

「ほ、本当ですか?生き返ったのですか?」

「そうだ。嬉しいか?」

「はい。」

「だったら、一緒に風呂にでも入るか。」

「もう、朝ですよ。起きる時間ですよ。でも眠いです。寝てても宜しいでしょうか。」

「俺は眠くないぞ。」

「それはそうです。御主人様は死んで・・いえ、ぐっすり寝ていたのですから。」

「仕方がないな。ベッドに来い。一緒に寝るぞ。」

「はい。お邪魔します。」


 ベッドに入るとすぐにエイレムの寝息が聞こえてきた。

 は、はやすぎる・・

 仕方がないので服を脱がせて裸にした。

 む、胸が・・

 寝ても猶、横に広がりつつも弾力を持って小高い山を維持しているおっぱいが存在していた。

 仕方がない。

 仕方がないんだ。

 だって人間だもの。

 俺はおっぱいを揉むことにした。


「何してるの?」


ギクッ! 「ひっ!」


 突然の声がに驚いた。悪いことをしているわけではないが、驚きのあまり素っ頓狂な声が出てしまった。


「い、いや・・こっ、これは、な、なんだ・・マッ、マッサージだ。エイレムからどうしてもと頼まれてな・・」

「何言い訳してるのよ。別に入れてもいいのよ。私の前で出来るものなら・・・」

「何か怒ってらっしゃらないですか、姫様?」

「何でエイレムは裸なのよ。」

「エイレムが寝ぼけて突然脱ぎ始めたんだ。本当だ。寝ぼけてたから本人は覚えてないとは思うんだケド‥ゴニョノニョ…」

「本当でしょうね。私は寝るから私の背中マッサージしてて。」

「え?背中?背中ですか?背中と言うと何の起伏も面白みもない、マッサージしている者は何の喜びも感じられないという背中ですか?」

「そうよ!その背中よ。早くマッサージして。私徹夜だから眠いからねるけど寝ても止めないで。」

「俺も眠いんだけど・・」

「あなた死んでたから眠くないでしょ。」

「死んでたって・・失礼な。確かに死んでたんだろうけど。い、いや生きてたらしいぞ。」



 あれ?もう寝てるし。

 結局、マッサージはしないで眠ってしまった。


「きゃぁ〰〰ッ」



 突然の悲鳴。


「何だ?どうした、何が起こった?」

「な、な、何者かがワタクシを裸にしています。犯されたかもしれません。もうお嫁に行けません。こうなったらその不埒な輩に責任をとって結婚して頂くしかございませんわ。その不埒者を捕まえます。御主人様も協力して頂けますか。」

「お、おう。協力するぞ。」


 ん?エイレムが俺の腕を掴んでいる。


「はい。捕まえた。責任とって結婚して下さい。」

「え〰、俺は不埒者じゃないぞ。その不埒者は他にいるんだろう。」

「ワタクシは目が覚めてましたので。御主人様がワタクシの服を脱がせるのをしっかり感じてましたわ。」

「クッ、卑怯者め!仕方がない。」

「煩い。二人共朝からイチャイチャしない。王様が呼んでるから皆で王宮に行くから。早く着替えて。」


 仕方がない。着替えるか。

 朝食を食べたかったがエイレムも一緒に寝ていたので朝食があるわけがない。

 こうなったら、領地を取り戻した暁にはメイドを雇わないと。ん?

 エイレムはメイドだよね。でも、一緒に寝てたから仕方がない。

 だからメイドを雇う。ん?なにかが足りない。気のせいかな。


「レイラ姫、俺さ、今度メイド雇うよ。だって朝食食べたいもんな。」

「なに言ってるの。今だってメイドが二人もいるでしょ。」

「二人?エイレムともうひとり?ん?あっ!ハリカだ!ハリカがいた!って言うか居ない!どこ行ったんだ、ハリカは?」

「あーハリカなら大事な用事があると言って帰ったわよ。」

「なら仕方がないか。何だったんだ、大事な用事って?」

「きついから眠ることだって。」

「あーなるほど。だったら仕方ないな。ハリカ首決定。」

「首にする気もないくせに。早く行くわよ。あなたが転移して連れて行って。出来るようになったでしょ。」

「おう、出来るようになったぞ。女湯まででもひとっ飛びだぞ。」

「女湯にひとっ飛びしなくていいから、早く王宮に行って。」



 王宮に転移した。

 王宮は何故か静かだ。

 中で盛大な祝勝パーティーが繰り広げられているのだろう。脅威は去った。護衛も中で祝勝会に参加しているのだろう。


 王宮の中へ入り謁見の間へと向かう。

 謁見の間に近づくに連れ次第に騒がしくなってきた。

「お!賑やかだな。祝勝会もたけなわか?」

「そうだね。朝食食べなくてよかったでしょ。」

「本当だよな。」

「早く行くわよ。でも、ハリカは良かったの?」

「勝手にメイドの仕事放棄したやつは朝食抜きだ!」

「あら、可哀想。」


 俺達は謁見の間へと入っていった。


 中では王がロープで縛られ横には王妃と、王女、王子たちがロープで繋がれ槍を突きつけられていた。

 その周りには猿が剣や槍を持っている。100匹はいそうだ。

 騒がしかった猿の話し声が、リーダー猿の振り上げた手を合図に静かになった。


「王宮は占領した。」

「どうやって占領したの?」


 レイラ姫の声が静かになった謁見の間に響き渡る。


「この応急に仲間を潜伏させていた。軍の出兵で手薄になった王宮を占拠した。潜伏させていた情報がもれなくて本当に良かった。情報が漏れたという話を聞いたから心配してたが良かったよ。」

「あっ。」

「何、アスラン。どうしたの?」

「忘れてた。タナカさんが王宮にスパイが入り込んでいるからレイラ姫に伝えてくれって言ってたんだった!」


俺は他の人には聞こえないように、こっそり耳打ちした。


「どうして、そんな大事なことを忘れてるの!」

「だって、しょうがないじゃないか。大事な混浴温泉の話が出たんだから。普通混浴温泉のことで頭が一杯になるだろうが。」

「そうね。あなたの頭がスケベなことでいっぱいだって分かったわ。」

「だろ?男はエロがあれば他は一切忘れてしまうもんなんだなぁ、これが。」

「あなた、良くハリカを責められるわね。アスラン、あなたマイナス10ポイント。マイナス50ポイントで首よ。」

「俺がいなくなったらクラン自体がなくなるだろ。」

「いいえ、クランを首じゃなくって、私の婚約者を首よ。残念だったわね。もう侯爵じゃなくなるかもね。降格よ降格。」

「そうか。だったら俺はエイレムと二人仲睦まじく暮らしていくことにするよ。」

「そ、それは駄目よ。」


「おい、貴様ら。イチャイチャするな。王を殺すぞ。王女、お前がフェムト使いだって分かってるんだお前はなにかしたら王と王妃、王子も王女も殺すぞ。」

「分かったわよ。私は何もしないわよ。私はね。アスラン、やっておしまい。」

「はい、はい。」


 俺は王の後ろに転移した。

 転移直後景色も猿も人もすべての色が消え去り輪郭だけが見える。光さえも止まっているから、見えない。しかし輪郭として認識はできる。

 以前とは全く違う。色が薄くなり、時間が遅く経過している状態とは別物だ。時間が止まっている。

 やった。これなら、これなら、エイレムの胸を揉んでも余裕で猿を倒せる。しかもお風呂も覗き放題だ。

 おっと、いかんいかん。

 猿を倒さないと。

 猿の武器を取り上げ。ロープを切る。

 切っても、ロープを見れば切れていない。だが、理解できる。止まった時間の世界では物質も動かない。動き始めた時にロープは切れる。

 な、何ということだ。


 こ、これでは・・


 これではぁ


 エイレムの胸を揉んでも胸は動かない。

 つまり胸の柔らかさを感じることは出来ないということだ。


 無、無念だ・・


 もし時間の経過が限りなく遅い場合は揉めるかもしれない。しかし、普通に揉んでしまえば、物凄い速い速度で胸を揉んだことになり、胸の皮膚や脂肪がその速度についていけず破壊されてしまうかもしれない。それは不味い。い、いや、こんな事を考えている暇はない。早く倒さないと・・







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