第34話 戦乱


キーン!


ん?突如甲高い音が・・

目を開けるとそこにはアスランがいた。


「大丈夫ですか将軍。一体何匹倒したんですか。後は任せて下さい。」

「アスラン・・助かった。」


アスランが頼もしく見える。今まで幼くただ我儘で気が強かったアスランが初めて頼もしい。ギフトの洗礼式以降のアスランは一味違う。

本当に助かった。これで生き残れるかもしれない。

しかし、援軍は少数だろう。100か200か?この数の違いは如何ともし難い。


「アスラン、援軍は何名だ?何名で来た?」

「4名ですけど?なにか?」

「4?四?よん?は?」


死んだ。助かったと思ったが死んだ。数が違いすぎる。四名ではどうする事もできないだろう。いやできない。



ドンッ!!!


突如物凄い大きな破裂音が・・


見れば物凄い大きなきのこ雲が上がっている。


「エクレム、大丈夫?」


声に振り向けばレイラ姫がいた。


「殿下?殿下、来られたんですか。どうして?お逃げ下さい。もう駄目です。もう勝てません。」

「大丈夫よ。」

「そんな訳はありません。お逃げ下さい。しかし、あの雲は?」

「あれは猿を纏めて爆発で屠ったのよ。」

「え?誰が?」

「私が?」


なぜ疑問形?


「殿下が?でも、殿下は、あいも変わらずレベル1ですよ。私はレベルが60越えているのに、そんな攻撃できませんよ。」

「気にしないで。まぐれよ、まぐれ。まぐれで猿もやっつけるから休憩していて。」


殿下を見ると只立っている、しかもなぜドレス姿で戦場に。敵も攻撃して来そうだが一切攻撃できないでいる。まるでそこにいないかのように。姫の周りでは猿がなぜかどんどん血を流して死んでいく。爆発も度々起こる。姫は手に何も持たず剣さえ持っていない。ただ突っ立っている。

横にはデミレル子爵の娘エイレムが剣を持ち猿を魔法や剣で攻撃している。胸を揺らしながら・・・エロい。

少し離れたところにはデュラン男爵の娘のハリカが揺れもしない胸をパッドで膨らませている。剣で猿を攻撃しているが、剣の腕はまだまだだ。

うーん、残念だ、胸が。

胸に目が行くくらいの余裕は出てきた。

アスランは近くにはいない。


アスランを探して追い掛けた。

アスランを見つけると猿の集団の真っ只中にいた。


「何ということだ。これがアスランか?」


アスランは何本もの敵の剣を一切受けること無く物凄い速さで動きながら猿を屠っていく。

手を落とし、頭を落とし、一匹、また一匹。あっという間に死体の数が増えていく。


「何だ、これは?人間か?」


アスランのレベルを調べるとあいも変わらずレベル1。なぜレベル1の人間がこんなにバケモノを殺せるのか分からない。なぜギフトもない人間がこんなに早く動けるのか、なぜこんなに強いのか。前回も強かったが前回見たときとは比べ物もないくらい強くなっている。助かるかもしれない。生きて家族に会えるかもしれない。希望が出てきた。

俺も猿に向かって走った。剣を構えながら・・・



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「総統閣下、大変です。」

「どうした、ヘルペス。」

「先遣隊が全滅しました。」

「ついにフェムト使いが来たのか。」

「そのようです。先程の巨大な爆発はフェムト使いの仕業だと思われます。」

「フェムト使いは既にフェムトが覚醒しているのか?」

「いえ、まだ覚醒していないと思われます。フェムトを使っているだけでしょう。」

「そうか、それならば勝てる可能性があるな。確実に負けることはない。全軍停止。ここでフェムト使いを迎え撃つ。伝令、部隊長に伝えろ。」

「では閣下、私も準備します。」

「あー、頼むぞ。ここで負ければ陛下に言い訳できないからな。」


閣下は心配性なのだろうか、俺が見ても閣下の強さは常軌を逸している。適う者などいるはずもないと思える。剣も槍も弓も銃でさえ効かない。恐れる必要などないのに恐れるのは気弱なのだろうか、慎重なのだろうか。それとも、それ程フェムト使いは強いのだろうか。


閣下の馬車を出ると既に伝令が閣下の命令を伝え終わっているようで軍列は停止し迎え撃つ準備をしている。

とはいえこちらは1万。相手は一人。

負けるはずもない、慎重になる必要もない、気楽な戦いだ。


俺は檄を飛ばす。


「お前ら、相手はたった一人だ!しかも、女性だ。しかし、舐めて掛かるなよ。もしかすると閣下よりも強いかもしれない相手だ。気を抜くな!」


そんな事はないと思いながらも檄を飛ばす意味で閣下よりも強いかもしれないと言う。

敵を待ち伏せる。

まだ来ない。緊張が高まる。待つ時間が緊張を高めアドレナリンが腕を鈍らせる。


どぉおおおおん!


突如前方で爆発後起こった。今の爆発の前方にいた数百人が巻き込まれた。

人間は我々のことを何匹と数えるが。巫山戯ている。我々こそが高等な種族、人間こそが匹で数えられるべき種族だ。

だが、1割も減ってはいない。どれだけ強くても多勢に無勢。最終的には我々が勝つ。この星は我々が占領する。

人間はここが星であるという認識さえない。遅れた種族だ。我々エイプスこそが至高だ。


突如まばゆい光が夜の闇を引き裂き、辺り一面を明るくした。刹那、先程よりも巨大な爆発が起こる。

風が吹き荒れる。大勢の仲間が吹き飛ばされる。

数千はいなくなったのだろうか。


き、来たっ!


お、男?王女だという話だ。だとしたらあいつは何でもないやつか。


「そいつは唯の兵士だ。殺せ。」


うぉおおおおお・・・


怒号が飛ぶ。


一斉に一人の男におそおい掛かる。

一斉に襲いかからなくてもすぐに死ぬだろう。

そう高を括っていた。

しかし、そうはならなかった。

男はまるで無人の野を行くが如く、まるで一人だけ違う時間軸を生きているかのように、我が兵士たちとは別次元の速度で兵士を切り捨てにしていく。男は直ぐそこにいるのに兵士の剣は届かない。剣速よりも速い速度で動いている。


い、いかん。このままでは全滅する。あいつもフェムトを持っているのか?い、いや、王女一人のはずだ。情報の間違いか?


「一斉に倒せ!」


その男は周りにいた我が軍の兵士をすべて倒した。


消えた?


その男が消えた。まさか、やはりフェムトを持っているのか?だから転移できるのか?

横の部隊が騒がしくなる。見ればその男が横にいた部隊と戦っていた。

戦い?

いや、戦いでさえない。

唯の虐殺だ。

閣下に伝えないと・・・


俺は走った。閣下のいる馬車まで・・


「閣下!」

「何だ、ヘルペス。どうした?」

「う、動きが速すぎる男が我軍の兵士を蹂躙しています。」

「何?レプタリアンの情報ミスか?別にいるのか?俺が倒す。どこだ。」

「こちらです。」


俺は閣下をその男のところへ案内する。大きな安堵が押し寄せる。これで助かった。閣下ならなんとかしてくれる。


すでにかなりの人数が倒されている。


「閣下、あいつです。」

「見れば分かる。」


閣下は暫くそいつの戦いを見つめていた。


「何だ、あいつは覚醒は愚かフェムトを認識さえしていないのか。すぐに殺す。待ってろ。」

「はっ、頼もしい限りです。」



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レイラ姫が猿たちを爆発させる。既に三回目の爆発だ。

俺も吹き飛ばされる。

しかし、飛ばされる速度が遅くなり木を足場にして地面に着地する。


まだ生きている猿を探す。

戦力を無くした猿は放っておく。


「来た、そいつは唯の兵士だ。殺せ。」


猿の怒号が飛ぶ。

確かに唯の兵士だが、何かムカつく。


襲いかかる猿の集団。

遅い!

色が消え去り薄くなっている。ほぼ動かない集団の間を俺は剣を振るい猿を切り裂きながら進んでいく。

殺しても殺しても減らない数。曝される屍の数は増えるというのに襲い来る猿の数は減らない。一体何匹いるのやら・・

この剣は普通の剣と違い何匹切ろうと切れ味が落ちることはない。研ぐ必要もない。

レイラの話ではこの剣自体が物や敵に当たっているのではないから切れ味が落ちることはないとのことだが詳しいことは理解できなかった。

近くの猿を全て屠る。


「一斉に倒せ!」


また猿の怒号が飛ぶ。


一斉に倒せと言うが既に周りには居ない。

少々離れた場所にいる集団まで走る。


一瞬で集団に辿り着き屠り始める。

何匹倒しただろうか。

ん?

視線を感じた。

見ると双頭の猿が居た!

こちらを見ている。

直ぐに向かいたいが、周りの敵を倒さないと動けない。

周りに居た敵を全て屠る。

双頭の猿へ向かう。

怒りがこみ上げてくる。

恨みがありすぎる。

両親を殺された。

妹は攫われたままだ。

叔父も、メイドも、警備のおじさんも知人が沢山殺された。

恨みしかない。

怒りで集中力が増す。

世界の色が無くなる。

モノクロームの世界で色鮮やかな俺が走り、色鮮やかな剣が色のない双頭の猿を襲撃する。

突如、双頭の猿は色鮮やかに変貌する。

既に俺の剣は双頭の猿の首に到達していた。

そのまま両方の首を切り裂いた。


やったか?


しかし、首は落ちなかった。

色の無い世界で色鮮やかな双頭の猿の両方の顔が俺を見てあざ笑っていた。

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