第32話 王都城門外の戦い

 ホテルの入り口の外には人間の服を着た二足歩行の猿がいる。俺の両親を殺し、親戚を殺し、領地を奪い、家を奪い、妹を攫った憎き猿の仲間がいる。


「お前らぁ、人間じゃねぇー、たたっ斬ってやる!」

「そりゃ、猿だし、人間ではないよね。」

「ハリカ。月の温泉には連れて行かない!」

「ケッ!」


 猿に向かって怒りに任せ斬りかかる。

 ここにいる猿は手が皆四本ある。

 四本の剣を持つ猿。二本の剣を持ち盾も持つ猿。

 皆、俺を襲撃し始める。


 最初の一匹の猿が四本の剣で襲って来る。

 全ての剣が見えているので楽に避け、『聖剣マレキュラー』で襲ってくる毎に一本づつ腕を切り落とし全ての手を切り落とす。

 勿論、赤いバーもなくポイントも貰えないので足の腱を切り逃げられないようにし殺さず放置。後で情報を得る。これで、次から心置きなく戦える。

 すぐに次の猿が攻撃してくる。更にもう一匹。前と後ろで挟み込み攻撃する。

 左下の手で盾を持ち、残りの全ての手で剣を持っている。

 俺は相手の剣戟を受けることはしない。

 ただ怒りに任せて剣で叩き切る。頭の先から股間まで真っ二つにする。

 返す刀でもう一匹を股間から頭の先まで切り上げ真っ二つにする。

 これで三匹。

 もう一匹後ろから斬り掛かってきた。

 左右から一匹づつ 、前から一匹。

 つまり四方から一斉に襲ってきた。


 相手の剣が届く前に回転しながら猿の胴を横に薙いでいく。

 防御することも剣で受けることもさせない。


 気づいた時にはもう遅い!


 猿の上半身は下半身からずれ落ち、残った下半身は崩れ落ちる。


 これで七匹。

 残り三匹。


 俺は猿に向かって走る。

 猿の色が無くなる。

 景色がモノクロームになる。

 猿の動きがほぼ止まる。

 まず、エイレムの胸をひと揉みし、また、猿に向かって走る。猿も動き始めようとしているがほぼ動きが止まっている。少しずつ、足が動き、少しづつ俺に近づいてくる。

 俺の射程圏内に猿が入った頃には猿は剣を少し振り上げていた。俺は剣を斜め上に切り上げる。斜め上に切り上げられた剣は猿の顎に侵入し耳の上から抜けていく。後には頭頂部がずれ落ち露出している脳が見える。

 寸刻後、猿は糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちる。


 残り二匹。


 猿は剣を構え逃げ出した。


「エイレム、燃やしていいぞ。」

「承知しました。」


 猿は炎に包まれた。俺は最初に戦った手を無くした猿に尋問する。



「今、双頭の猿はどこに居る?どの辺りを進軍しているんだ?」

「そこは知っているのか?しかし、教えると思うのか?」

「では、俺の妹はどこだ?」

「妹?」

「バラミール領で攫った領主の娘だ。」

「あー、あいつか。」

「どこにいる?」

「さぁな、今頃双頭の総統に慰み者になってるんじゃないのか。」

「あいつは総統なのか。そうか。だとしたら、双頭の猿と一緒にこっちへ向かっているということだな?」

「な、なぜ分かった?」

「お前、言っただろ。双頭の猿の慰みものになっているって。一緒にいるってことだろ?」

「し、しまったぁ〰、バレた。総統に何と言い訳しよう。よりにもよってあいつの兄で、しかも、フェムト持ちの仲間にバレてしまうとわぁー。総統に殺されるゥー。どうしよう・・・・なーんてな。そんな訳はないだろ。しかし俺の演技はどうだった?人間にも真似できないだろ?なんてったって猿真似・・・って、悪かったな、猿真似で!ちくしょぉー殺せぇー。」

「大丈夫だ、言われなくてもお前は死ぬ。そのうち殺して下さいと懇願するようになる。妹の居所を言え。言わないとまず手の爪を一本一本剥いでいって・・」

「御主人様、ちょっと・・」

「な、何だ、今良いところだちょっと待て。」

「いえ、やつには手がありませんよ。」

「だからなんだ。」

「だから手の爪はありません。」

「は?も、勿論知っていたさ。当然さ。勿論さ。あ、足の爪だ。言い間違えたんだ。」

「はぁ、嘘くさい言い訳ですね。」

「は、ハリカァ〰、煩い。」

「ハリカ、本当のことでも言っては駄目ですよ。」

「エイレムまで嘘だと思ってるのか。今晩は姫と二人で、二人っきりの部屋で持ちつ持たれつだな。」

「御主人様、そんな連れないことは言わないで下さいまし。サービスしますよ。」

「そ、そうか?ジュルっ!じゃ、じゃあ、エイレムは罰としてその恥ずかしい胸でサービスしろ。ハリカは一人で隣の部屋だ。」

「え?ボクもサービスしますよ。」

「お前はサーベスの為の恥ずかしい胸を持っていないだろ?裸でうろついても誰も見ないぞ。男が歩いてると思うからな。ぷぷっ。」

「ひ、酷いです!ボクにも恥ずかしい胸はあります。」

「それはお前の主観だろ。主観的に恥ずかしいと思うだけで客観的には恥ずかしさはないぞ。」

「御主人様、早く拷問の続きをなさらないと。夜が明けてしまいますわ。」

「そうだ。そうだった。くそぉっ、ハリカのせいで・・」

「え〰、ボクですか?」


 俺は拷問を続ける。

 痛くして吐かせるか、それとも、痛いことをするぞと精神的に脅して吐かせるか。

 こいつにはどちらが効くのか。

 既に腕が4本無くしている状況では精神的脅しは聞きにくいかもしれないがまだまだ切れるものはある。


 まずは精神的に攻める。


「おい、妹はどこにいるのか、総統はどこを進軍中か話せ。」

「いやだね。」

「時間がない。お前は殺さずここを出してやる。」

「そんな甘いことを言っても俺は話さないぞ。」

「いや、普通はお前が生きたまま帰ってきたのなら情報を漏らしたと思うだろうな。だからお前は仲間と離れて生きていくしかない。」

「そうなったら、そうなったで仕方がない。話さないぞ。」

「話さなければ脚を5センチ刻みで切っていく。ここを出る頃には足がなくなっているかもしれないぞ。それでどうやって生きていくんだ?生きたままバケモノに食われたいのか?」

「くぅ-・・」

「その後は目だ。目を刺して目が見えなくなるぞ。その後その目をお前に食わせてやる。次は頭だ。頭を切り意識を残したまま脳みそを食わせてやる、味わえ。脳を切り取っても簡単には死なないらしいぞ。喋る気になったか?」

「御主人様、既に、死んでます。」

「血が手から出尽くしたのかもしれないな。」

「アスラン、血は全部亡くならなくても死ぬのよ。勉強になったわね。」

「どんな勉強だよ。」

「さぁ、転移するわよ・・・あれ?・・・まだできないわ。田中さん、どうなってるの?」

「原因は他にあったみたいだね。歩いて行くしかない。原因は調べておくよ。」

「お願い。さぁ、皆、歩いて行くわよ。間に合うかしら・・・」

「あ、ここには非常階段があるからそこから出ればすぐだよ。」

「本当?田中さんありがとう。」


 俺達は、非常階段を使いすぐにダンジョンを脱出する。そこは教会の別の扉へと繋がっていた。


「転移できないと国軍の部隊に追いつけないかもしれないから急ぐわよ。」

「どうするんだ、レイラ。馬車はないぞ。」

「勿論走るのよ。行くわよ。」


 俺達は真夜中の王都を走り出した。






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