第27話 ダンジョン 第十階層:ジャングルⅡ

姫が消えた。

突如消えた。

目にも留まらぬ速さでどこかに行った、行ってしまった。残された俺達はヒルと戦う。

しかし、ヒルはLv.5、大したポイントにはならない。

『聖剣マレキュラー』でヒルを退治する。

結局『55:0:35:35』

結局一気に燃やしたエイレムがポイントが高く55。逃げたレイラ姫は勿論0ポイント。

納得いかないのが、俺とは理科のポイントが同じだということ。


「御主人様、どうかされたのでしょうか。」


少し考え込んでいたらエイレムが話しかけてくる。


「納得いかない。ハリカと同じポイントだったということが納得いかない。」

「ボクだって納得いかないですよ。まさかレベル1と同じポイントだったなんて。」

「ハリカ、朝起きた時にはスッポンポンで股間からゲジゲジが顔を出してるぞ。」

「いやぁ―、股間からゲジゲジの刑は止めてください。もう言いませんから。」

「よし、じゃあ、エイレムゲジゲジ一匹捕まえてこい。」

「御主人様、それはご勘弁願えないでしょうか。流石にゲジゲジを捕まえるのは・・」

「ボクは更に無理ですよ!股間からゲジゲジを生やすなんて!絶対に止めて下さい。やったら、もうクランメンバー辞めますよ。」

「そうか。それは良いことを聞いたな。」

「ぐぬぬぬ・・・。いえ、やっぱりやめません。そんな事をしても無駄ですよ。ボクは平気ですから。」

「ほう、平気なのか。エイレム、ゲジゲジ一匹捕まえてこい!」

「御主人様、すいません。もう言いませんからゲジゲジの刑は止めて下さい。」

「じゃあ、今晩、男風呂で俺の体を洗え。洗えるのか?男風呂で裸で恥ずかしいぞ。」

「洗いますよ。ボクは恥ずかしくないですから、男風呂で御主人様を洗いますよ。股間まで懇切丁寧に洗いますよ。恥ずかしいでしょね。男風呂で皆の前でおっ立てるのは。あ~、恥ずかしいぃ。楽しみですね。」

「ハリカさん、ごめんなさい。俺が悪かったです。もう言いませんから許して下さい。」

「ハリカ、御主人様を許して差し上げたら?」

「そうだよ、はりか。じゃあ、今晩は皆にマッサージをしてあげよう。」

「では、御主人様、今晩のマッサージ楽しみにお待ち申し上げております。」

「よし、エイレム。今晩はおっぱいを徹底的にマッサージするぞ。おっぱい祭りだ。あれ?ハリカはおっぱいがないから祭りから除外されるな。」

「失礼な!おっぱいはありますぅ。小さいだけですぅ。詰め物すれば大きくなりますぅ。」

「わかった、わかった。お前もまつりに参加させてやる。でも、詰め物しても小さいものは小さいままだぞ。」

「う〰〰」

「御主人様!次に虫が来ましたわ。次はビートルLv.30です。」


見るとでっかいカブトムシだ。

体長2メートル高さが1メートル。

ビートルLv.30が長い角を挙げた。高さが3メートル程にまで挙がる。

その角をまるで剣の様に振り下ろしてきた。

ハリカが剣で受け止め吹き飛ばされる。

ハリカが起き上がらない。


「エイレム、回復魔法使えるか?」

「いえ使えません。」

「うちのパーティー、快復しないで戦うの?消耗戦?どうするの?」

「御主人様、ワタクシが何とか動きを止めてみますので攻撃して下さい。」

「わかった。直ぐやってくれ。」

「はい。『パラライズィット』」

ビートルLv.30は少し動きを止めたがすぐに前進し始める。


「駄目です、動きが止まりません!撤退致しましょう。」

「一度戦ってみる。ハリカを助けろ。」

「はい。」


俺は走った。カブトムシの脚をめがけて剣を振る。

いつものように時が減速する。

いつものように剣だけが速度を持ち脚に接近する。

刹那ビートルの角が確かな色を持ち動き始め剣の前に立ちはだかる。

ガードされた?

剣は脚ではなく角に当たる。脚への攻撃は防がれた・・・かに見えた。

しかし、剣は角を切り裂き、更に脚も切り裂く。

角を失ったビートルは攻撃手段を無くし、脚と角を切り裂いた剣は返す刀で頭を落とす。

赤いバーは消失しビートルLv.30は死んだ。

『3:0:27:0』『回復ポーション』

『ドロップアイテムを獲得しました。このアイテムはこのダンジョンでしか使用できません。注意して下さい。本物のダンジョンでは使えません。』


回復ポーションだ。これで、ハリカを回復できる。


「エイレム、これで、このポーションでハリカを回復してくれ。」

「お任せ下さいませ。」


俺はあの不思議な出来事について考える。


「どうかされたのですか、御主人様。」

「剣が防がれた。」

「切り裂いていたではありませんか。」

「それは、武器の差だ。もし、俺の剣で来れない物質だったなら確実に防がれている。」

「そうですか、それは問題ですね。しかし、御主人様がもっと強くなれば宜しいのではないでしょうか。」

「そうだな。簡単に言うんだな。」

「御主人様は未だレベル1ではありませんか。すぐに強くなると思いますよ。」

「何言ってるんだ。俺は既に強いだろ?」

「はい、レベル1ですが。」

「エイレム、君、僕に恨み持ってない?」

「どうしてワタクシが尊敬する御主人様に!御主人様によこしまな感情を持つことはあっても、恨みを持つはずがございません。」


エイレムが回復ポーションを使いは理科を回復させる。

ハリカは元気を取り戻したようだ。


「ハリカ、大丈夫か?」

「はい。大丈夫です。死ぬかと思いました。」


結局、その後も色々な虫を倒し、巨大な蛇を倒し、巨大なムカデを倒し第十一階層へと続く階段の前へ到着した。


階段前には猿が屯していた。

猿だ。

くそっ、猿を見るとムカつく。

ジャパニーズモンキーLv.35。

全部で10匹いる。


「エイレム、ハリカここは一人で殺る。休憩しておけ。俺は猿に恨みがある。」

「御主人様、それは逆恨みというやつですよ。その猿は関係ないですよ。」

「ハリカ、煩い。首にするぞ。」

「またまたぁ、私のこと好きなくせに。」

「貧乳は嫌いだ。」

「ゲ〰、猿頑張れ!」

「だったら、猿の横に並べ、纏めて叩き切ってやる!」

「レベル1には無理ですよ。相手はレベル35が10匹ですよ。単純計算で350倍の戦力差です。御主人様、長い間お世話になりましたっ!」

「よかろう。俺が猿倒したらハリカを素っ裸にしてここに置き去りにしてやる。」

「出来るものならやれば良いんですよ。」

「もうハリカ、よしなさい。御主人様もほどほどに。」

「そうだな。ハリカはからかい甲斐があるからな。」


キィッ、キィーっ!!


ジャパニーズモンキーズLv.35が集団で襲ってくる。

物凄い速さだ。さすがはレベル35だ。

10匹の猿が一斉に俺に襲いかかる。

後1メートル。

景色が色を喪失した。

猿もモノクロに変わる。

剣だけが現実の色を持ち俺は現実の速さで一番近い猿から屠り始める。

頭の先から尻尾の先まで真っ二つに切り裂く。

恨みが・・怒りが・・無力だった自分に対する腹立たしさが・・双頭の猿への恐怖が・・妹を攫った猿への悲憤慷慨が薄れていくようだ。

更に1匹、そしてもう1匹。

次第に薄れゆく怒りが理性を取り戻させ妹の情報を調べる方法がないか、妹を探そうと言う思考に辿り着く。

今まで、そんなことなど考えず、漠然と現実を生きていたことに気づく。

妹を探す。まずは情報だ。双頭の猿の情報だ。今なら双頭の猿に勝てるかもしれないという思いはない。強くなった今だからこそ双頭の猿の強さをより理解できる。あの強さは理解の出来ない強さだ。双頭の猿は今どこにいるのだろうか、妹は今どこにいるのだろうか。

早く妹を探しださねば。

こんな地中で遊んでいる場合ではない。

全ての猿を屠った時、消えた怒りの代わりに焦燥感に囚われた。


『0:0:350:0』


俺だけが350ポイント獲得した。


「エイレム、ハリカ、俺はここでダンジョンでの訓練はやめる。妹を探しに行く。」

「御主人様、ここは、そのための第一歩ですわ。違いますか?ここで、訓練するのも領地と妹さんを取り戻すためでしょ。訓練もしないで取り戻せるのなら前回のバラミール領遠征で取り戻せたのではないでしょうか。あの将軍さえも問題にしなかった猿のボスには今行っても無駄死にするだけだと思いますわ。」

「そうですよ。御主人様最弱のレベル1なんですから。それで、戦えるはずないじゃないですか。」

「そうだな。ハリカの言うことも最もだ。」

「ど、どうしたんですか。ご主人さまならここで『ハリカ首ィ』とか言うはずですよ。宇宙人に攫われていい人になっちゃいましたか?」

「素直になっただけだよ。そうだな今行っても無駄死にだ。助け出すこともできなくなるな。今は訓練だ。」

「そうですよ、御主人様。一緒に訓練頑張りましょう。」

「ハリカ、偶にはいい女だな。」

「『偶には』は余計ですよ。」

「よし、第十一階層へ行くぞ」

「はい。」

「行きますわよ。」


俺達は先へ進んだ。

姫は未だに戻って来ないが・・・








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