第16話 ダンジョン 1
謀反の騒動も一段落し屋敷に帰ると、ハリカに神の飲み物、コーヒーを淹れてもらい三人でリビングのソファーで寛いでいる。
なぜこれが神の飲み物と言われているのかは未だに分からない。
しかし、この飲み物は癖になる。
別に美味しくはない・・・と思う。
この習慣性と言うよりは依存性があるとも言える飲み物は誰かの策略のような気がしてならない。よし、領地を取り戻したら、この飲み物を流行らせ税をかけよう。
「御主人様、アルコールはお召し上がりになられないのですか。」
ブルーネット巨乳メイドのエイレム・デミレルが俺の前に立ち話しかける。
「俺未だ15歳になったばかりだ。まだ味がわからないな。」
「あーそうでしたわね。隣りに座っても?」
エイレムの所作は妖艶で人目を引きつける。
目が離せなくなる。
「どうぞ。ところで、今度クランで訓練を兼ねてこの近隣のバケモノを討伐しに行くんだけどエイレムも行くだろ?」
「はい。勿論ですわ。」
「ハリカは留守番宜しくな。」
俺は斜め前のソファーに座った赤毛偽乳メイドのハリカにお願いする。
「え?なぜ?」
「当然だろ。お前はクランメンバーじゃないだろ。」
「え?どうしてですか。ボクもクランメンバーですよぉ。」
「だって、クラン辞めるって言っただろ。」
「辞めないって言ったじゃないですかぁ。」
「それはメイドの件だろ?」
「両方ですぅ。私も連れて行って下さい。」
「直ぐ辞めるというようなやつはいざという時信頼できない。信頼し合えないと背中を預けられないんだ。」
「もう辞めるとか言いませんからクランに入れて下さいぃ。私の身体を好きにしても良いですから。」
「じゃあ(仮)で。でも、身体は良いよ。俺巨乳好きだから。」
「え〰、仮メンバーですか?暫く我慢します。そこ、エイレム!勝ち誇った顔しないで!」
「 (* ̄ ̄ ̄ ̄ー ̄ ̄ ̄ ̄)フッ.」
「ところで、エイレム。俺はレベル1らしいんだよね。レベルがあるってことは頑張れば上がるってことだよね。」
「でもギフトがないとレベルは普通の人の粋を超えないという話ですが。」
「普通の人ってレベルいくつ位?」
「普通の人でレベル5くらいでしょうか。」
「え?僕って普通の人の5分の1?弱いな、頑張らないと。二人はレイラ王女が12と14って言ってたけど12と14じゃかなり違うの?」
「違いますわね。二つ違えばかなり変わりますのよ。だから不思議なんですの。御主人様があのレベル10を超える衛兵達に勝ったのが。」
「う〰ん。偶々だろ。それじゃ、俺寝るから。おやすみ。」
「「おやすみなさいませ、御主人様。」」
自室と決めた二階の角部屋のマスタールームへ行きキングサイズの広いベッドに横になる。
ベッドに横になると考えてしまう。
どうしてレベル1なのにレベル10を何人も倒せたんだろう。
どうして、攻撃する時も避ける時も相手の速度が遅くなるのだろう。
王女はギフトじゃないと言うけど不思議だ。
そもそもギフトは相手のレベルを知ることができると言うけど、俺には相手のレベエルはおろか自分のレベルさえわからない。
だとすれば、やはり、俺にはギフトはないのだろう。
ギィ〰ッ
ドアが甲高い少々不快な音をさせながら開いた。誰か来たようだ。
部屋は真っ暗で見えない。いや、明かりが全く無いのに見える。見える?なぜ?
見ると、ブルーネット巨乳メイドのエイレムがネグリジェ姿で忍び込んできている。
大きな胸を揺らしながら忍び足でベッドへと近づいてくる。
偲んでさえ揺れる豊かな胸が真っ暗な中はっきりとなぜか見える。
「エイレム。」
俺は声をかけ注意を促す。
「あれ?分かりました?」
「見えるよ。忍び足で歩いていくるのも揺れる胸も。」
「え?見えるんですか?明るくして見てみます?」
「いや、良いから、俺童貞だし。多分、ここで誘惑に負けてしまったらレイラ王女に殺されるから。」
「まさかぁ。」
「あのね。あの人は本当に怖いんだよ。レプタリアンを切り刻んでたんだよ。」
「本当ですか?だって王女はレベル1ですよ。」
「レベル1なのにねぇ!俺もだけど。俺と王女はレベルの例外?なぜだろうね。ギフトが故障してるのかな?」
ギィ〰ッ
再び、ドアが甲高い嫌な音を立てて開いた。
「ハリカ。何しに来たの?」
今回はエイレムが注意する。
今度は赤毛のふわふわカーリーショート偽乳メイドのハリカが夜這いに来たようだ。
「なに?エイレムも来てたんだ。じゃぁ、三人でする?」
「いや、しないから。したら俺も君たち二人も王女に殺されるよ。これ以上ないくらい残酷な方法で・・」
「大丈夫ですわよ。だったら、一緒に添い寝するだけなら良いのではないでしょうか。」
エイレム、食い下がるなぁ。
「じゃあ、添い寝だけね。俺がおっぱい触っても知らないよ。」
「いつでもウエルカムですわ。」
「え〰、だったらボクもぉ〰、お願いしますぅ〰!」
「ハリカも?このベッドに三人寝れるかな。」
「大丈夫ですよ。これだけ広いんだからぁ。」
確かにベッドは広かった。横に寝ても寝れるくらい広かった。
三人で寝ても余裕だろう。王女にバレなければ・・・
でも、一夫多妻を推奨していた王女だ。寛容に許してくれるだろう。
だけど最初に他の人としたのでは王女も納得しないだろう。
結局、俺が真ん中に寝て右に巨乳ブルーネットのエイレム、左に偽乳カーリーのハリカという態勢で寝る。
エイレムは俺の右腕を枕に自分の顔を俺の顔に近づける。
「息を吹きかけるのはやめろ。」
「え〰、良いではありませんか。ご・しゅ・じ・ん・さ・まっ!」
「今日は我慢しろ。」
左手の腕枕は信用をなくした仮メンバーのハリカにはお預けだ。
その日は両方に美女を従え平穏の内に眠りについた。
神からのお告げが教会に齎されたのは翌日のことだった。
その日、朝から教会の鐘が打ち鳴らされた。
王城からも何事かと担当者が教会へ赴き事の次第を聞き、その内容を国民へ告知した。
その内容は、神が訓練施設を作ったとのことだった。教会に入り口ができており、そこから入れば、擬似的なバケモノと戦い、勝利すれば商品がもらえる訓練施設とのことだ。
死ぬこともなくバケモノと戦う練習ができるらしい。しかも、商品が出る。
それに伴い買取ラグザなるものができ、そこで、買い取ったものや古代のアーティファクトなどを訓練施設での報酬として用意するとのことだった。
本日から三日間は訓練施設開設記念ということで豪華な商品が用意されているとの話しだ。
報酬につられて、朝から沢山の人が訓練に訪れるだろう。
俺は屋敷のリビングでメイドとともに朝食を食べながら訓練について話を切り出そうとしている。
クランメンバーは一人掛けているとはいえ三人は揃っているので問題ないだろう。勿論かけているのはレイラ姫だ。
「教会の話は聞いたな。取り敢えず俺達はこの施設に入って訓練を行う。どうせ訓練に行くつもりだったから丁度良かった。豪華賞品も捨て難いしな。早くしないと良い商品を取られてしまう。姫が来なければ朝食を食べて1時間後に出発するぞ。」
「はい。御主人様、宜しいでしょうか。」
「何でしょう。エイレム君。」
「お弁当は持参いたしましょうか。」
「そうだな。二人は大至急弁当の準備。俺は王城まで殿下を迎えに行ってくる。」
「「はい。承知いたしました。」」
――――――――――――――――――――
「ねぇ、ハリカ。」
ワタクシは先日のクーデターの日にハリカが一体何をしてご主人様の機嫌を損ねたのか気になり訊いてみることにしました。
「なによ。」
「クーデターの日に何をしたの?」
「どうして?」
「だって、ご主人様が御冠よ。あの豪放磊落を気取っていて小さいことに拘らないようにしているが為に小さい事には怒れない性分のご主人様が怒るという事はかなりの事をしたという事でしょ。」
「辞めるって言った。」
「何を?」
「メイドとクランの両方を。」
「両方?また何で。あっ、そうか。御主人様がレベル1だと知って先が無いから辞めることにしたんでしょ。」
「うん。そうなんだ。」
「それを、ご主人様に悟られた訳ね。そりゃ、信頼無くすわよ。」
「でも、無能力者でレベル1でクラン作ったらボクが苦労するでしょ。無能力者をかばって戦ってたらボクが死んじゃうよ。」
「それをしないのが信頼でしょ。あなたは自分でいざとなったら御主人様を裏切ると公言したも同然って事に気付かないとね。」
「そうか。そうだよね。」
「信頼の回復に努めなさい。器の大きさを気取っているご主人様の性格からいえば、小さい事を引きずることは出来ないからその内許されるわよ。」
「そうだよね。真当になった振りをして信頼を回復してみるよ。」
「それ腹黒いよ。バレたら今度こそ首よ。」
「でもエイレムも腹黒いよ。かなり御主人様の悪口言ってるし。」
「本人に気づかれなければ言ってないのも同然よ。それに悪口ではなくて性格の分析だわ。」
この娘は昔から計算高くて腹黒いから少しくらい痛い目に合った方が性格が真っ直ぐに強制されて結果オーライかと思ったんだけど治ってないわね。駄目だこりゃ。
「ただいま。」
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
「途中で殿下と会ったから戻ってきたよ。弁当の準備できたか?」
ご主人様は、殿下と仲良く帰って来られました。本当に仲が良くて少し焼けてしまいますわ。
「はい。もうできます。少々ソファーにお座りになられてお待ち頂けますか。」
「なるはやでね。もう待ちきれないよ。急がないと良い景品を取られちゃうぞ。」
「ASAPね。エイサップでね。」
「姫、なんだそれ?」
「できる限り早くよ。」
ワタクシはハリカに対してほんの少しの優越があるので気が楽ですが殿下に対しては少し気が引けてしまいます。だって、ご主人様は殿下の事が一番大事みたいで、身分の関係もあるのでしょうけど殿下には頭が上がらない御様子です。少し嫉妬してしまいますわ。
――――――――――――――――――――
「田中、ダンジョンの方はどうだ?」
「せんぱーい、聞いてくださいよ。間違えて本物のドラゴンのキメラを最下層に配置してしまいました。」
「あれか、先日、バラミール領で君が間違えて卵を送ってしまったが、本来送るべきだった成獣か。あれ送っちゃったの?マジ?馬鹿なの?あのダンジョンのバケモノは全てバーチャルだよ。バーチャルなのに本物のキメラ送っちゃったの?バラミール領に続いてギュリュセル王国も全滅させる気?」
「先輩、落ち着いて下さい。送ってしまったものは今更怒っても変わりませんよ。」
「じゃあ、どうするんだ、田中。」
「国民に任せましょうよ。国が滅んだら運命だったということで。やっぱり、国の尻拭いは国民がしないと。」
「国の尻拭いじゃなくて、お前の尻拭いだろ。」
「てへっ。」
「可愛く言ってもお前の責任は減らないぞ。そうだ、お前の尻拭いは国民に任せるか。」
「国民にですか?」
「レイラ王女に任せるんだ。」
「あーレイラ王女なら何とかできるかもしれませんね。呼びましょうか。『レイラ姫、月基地まで大至急お越しください。』呼びましたよ。」
「なによ、どうしたの?アスランの所で寛いでたのに、早くしてこれからダンジョンに戻るんだから。」
「すまないな。早速、仕事だ。」
「仕事?今日はだめよ。ダンジョンに潜るんだから。」
「丁度良かった。実は、ダンジョンの敵はARで表示されるんだが、この田中が本物のキメラを最下層のボス部屋に送り込んだんだ。そこで今回の君への司令だ。君にはそのキメラを倒してもらいたい。」
「丁度良かったわね。で、報酬は?」
「報酬は、今回の訓練施設開設記念の豪華賞品を貰えるぞ。」
「え?それ普通。誰でも貰えるでしょ。」
「だったら、刀あげようか?『聖剣エクスカリバー』とか?」
「え”〰っ、性剣セックスカウパー?」
「何だよ、そのスケベな剣は!違うよ。良く切れる剣だよ。」
「でも、鈴木さんが普通の剣に名前を付けるだけでしょ?」
「まぁ、そうだけど・・・って失敬な!現在の地球の科学力では本物のエクスカリバーより切れると思うぞ。」
「まぁ、アスランが持っている剣も良く切れるわよね。あれもあなた達が与えたんでしょ。」
「そうだね、君が首チョンパされたときだね。」
「( ̄ ̄ ̄ ̄□ ̄ ̄ ̄ ̄)チッ、悪かったわね。仕方ないでしょ。だって、人間なんだもの。」
「みつを?」
「兎に角、倒してくるわ。最下層まで何階あるの?」
「田中、何階まで作った?」
「えーと、30階です。今後は横に広げる予定です。」
「じゃあ、ミッションに挑んでくるわよ。ミッション『キメラを倒せ』といったところね。」
「レイラさん、宜しくね。まぁ、上手く行けば二日くらいで最下層まで到達できるはずだから。」
「そんなに掛かるの?じゃぁ、弁当たくさん持っていかないと。あっ、カップラーメン頂戴。それとレトルトのカレーある?」
「良いよ。給料から引いとくね。」
「うわぁ!荷物が沢山だ。何か、アイテムボックスとかないの?空間拡張技術とかで内部が拡張されたバッグとか?」
「何だよ、そのドラ○もんの四次元ポケット!?」
「ないのか、残念。」
「あるよ。でも10ポイント貯めたらあげるよ。景品ね。今回の達成で1ポイント。スタンプカード作ろうか?」
「えっ、本当?嬉しい!・・・って私は子供かぁ!」
「あーはっはっは、じゃぁ、今日のカップ麺とカレーはただで良いから。」
「本当?ありがとう、有り難く貰っていくわ。」
レイラ姫は大荷物を持ち笑顔で座アースへと帰っていった。
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