第12話 傭兵ラグザ

 俺達は屋敷を出発し貴族外の中を歩いていく。

 王女やメイドも貴族だとばれないように普通の平民服を着込んでいる。

 レイラ王女もブラウンヘアー偽乳メイドのハリカ・デュランもブルーネット巨乳メイドのエイレム・デミレルも地味な茶色いオーバーオールのようなスカートで胸の部分は袋状になったブラウスが胸の大きさに合わせてはみ出る服を着込んでいる。

 地味だが凄く官能的に見えてしまう。

 いや、ハリカは偽物だが・・

 それが、歩調に合わせて揺れる、揺れる、ハリカ以外。ハリカの胸はびくともしない。ここで地震が起これば壮絶な風景が待ち構えているだろう・・・ハリカ以外。

 そんな時に限って地震は起こらずちょっとアクセントの効いただけの平穏な日常が継続されていく。

 貴族街は先日のレプタリアンによる襲撃などまるでなかったかのように壊れた屋敷もなく平穏な日常が続いている。

 空は晴れ雲ひとつ無く晩秋の涼しい風が吹く。

 どうやらレプタリアンは直接王城に侵入し王を殺害し国を乗っ取るつもりだったのだろう。


 閑静な貴族街を暫く進めば城壁が見えてくる。そこに平民街へと続く門がある。

 門は警備の兵士が二人常駐し貴族街へ入る人間を監視している。


 平民服に包まれた俺達が徒歩でやってくると衛兵が平民服を着た俺達を胡乱げに見てくる。

 貴族街から平民服を着た者が来る、それに、貴族はあまり徒歩では出歩かないからだ。

 しかし、貴族街から来る者はほぼ貴族かその家族と決まっているので衛兵も横柄な態度は取らない。

 一人の衛兵が姫がいることに気づき声をかけてきた。


「これは、殿下でしたか。どうかされたのですか、馬車にも乗らず、そんな格好で。」

「この妾のフィアンセのアスランが酔狂にも徒歩で傭兵ラグザまでいくと言うので仕方なくな。本当は馬車が良いわよ。この格好は平民街で目立たなくするためよ。」


 フィアンセと聞いて傭兵が俺の顔を見る。

 どうやら俺にも気が付いたようだ。


「これは、アスラン侯爵でしたか。先日の試合拝見いたしました。感動しました。殿下との婚約の条件を一つ達成されましたね。それと、陞爵おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」


 兵士達に見送られ門を潜り平民街に出る。

 門を潜ると瞬時に雰囲気が変わり、雑然とした喧騒が溢れ、静寂と閑静をかき消してしまう。



 ――――――――――――――――――――



「先輩、先日のレプタリアンによるギュリュセル王国の王都への侵攻は聞きました?」

「あー聞いたぞ。よくあのレプタリアンを退けたな。あのレプタリアンは双頭の猿と一緒だからな。」

「だったら、訓練用の施設を作ったらどうです。バーチャルリアリティーで敵を作りそれを倒す訓練施設ですよ。」

「あれは報酬が無いと誰も来ないぞ。」

「報酬は買取ラグザを作ってそこで買い取ったものを報酬に出すとかどうですか。」

「そうだな。で、何処に作る。」

「嫌だなぁー、先輩。やっぱ、ダンジョンでしょ。地下に作りましょうよ。」

「ダンジョンか。上に掛け合ってみるか。それで人類が生き残る可能性が高まるからな。」



 ――――――――――――――――――――


 雑然とした喧騒の中を俺達は散策しながらいろんな店を見たり買い食いをしたりしてのんびりと傭兵ラグザを目指す。


「俺は、防具が買いたいんだ。先日痛感した。防具は必要だよな。近くにあるかな。」

「はい。アスラン様。ワタクシに選ばせて頂けないでしょうか。」


 ブルーネット巨乳メイドのエイレム・デミレルは積極的に俺に親切を押し売り媚び諂ってくる。巨乳の女性に積極的に言い寄られるのは嬉しいものだ。ただ、その積極性は打算に基づくものであり、会ったばかりの俺に恋愛感情があるわけがない。俺は恋愛には超消極的だ。なぜなら上手く行ったためしがない。未だに童貞だ。

 とはいえ、よくもここまで揃えたものだと周りには思われるくらい美人で巨乳が揃っている。一人は詰め物だが・・

 二人共歩く度に揺れる胸の双丘は見る者の心に火を着ける。周りの者には要らぬ嫉妬を起こさせてしまう。

 争いの素だったりする。

 傭兵ラグザという如何にも荒くれ者の集まりのような場所に巨乳の美人を連れて行くのは気が引ける。

 何も問題が起きなければ良いのだけど・・・


 傭兵ラグザに到着した。

 石造りの二階建ての建物だ。

 中へ入ると一瞬ざわついた。

 何だ、やはり問題発生か?

 するとその場にいた傭兵たちが一斉にお辞儀をした。


 隣を見ると姫が手を振っている。

 俺は疑問の表情で姫を見る。


「あー、いつも利用させてもらってるからね、皆顔見知りなんだ。」


 だったら教えてくれてたら良かったのに、要らぬ緊張をした。


「いらっしゃいませ、殿下。本日はどのような御用でしょう。」

「クランを作ろうと思ってる。誰かおすすめの人はいる?義に熱く信頼できる強者とかがいいわ。」

「では、信頼の置ける当傭兵ラグザのランクの高い者から紹介いたしましょう。暫くそちらのソファーでお待ちいただけますか。」

「わかったわ。宜しく頼む。」


 俺達は近くのソファーに案内され、供された『神の飲み物』コーヒーを飲みながら呼ばれるのを待つ。


 するとソファーに座るや否や周りの傭兵が集まってきた。


「殿下、宜しいでしょうか。皆殿下のお役に立ちたいです。トーナメントを開かれては如何でしょう。その上位をクランのメンバーにされるのが宜しいかと思います。」


 俺が初めて見る傭兵が殿下に問いかける。


「でも、良いのか。メンバーの妾とこのアスランは二人共無能力者だぞ。」

「ん・・・・・・・・・・・、ん?あー、そうだ!用事だ!用事があったんだ。用事を思い出しました。これにて失礼します。」

「お、俺もだ。思い出した。カラーゲを食べないと。」

「俺も。」

「私も。」

「あー、無能力者のお守りはゴメンだな。」

「そうだな。」


 姫の発言を機に理由をつけて傭兵達は去っていった。少し本音を漏らしたやつもいる。だけど、無能力者じゃあの態度も仕方がない。

 俺達には相手のレベルはわからないけど彼らには俺達のレベルが分かるだろうから、見れば弱いと分かるのだろう。ギフトがあれば今は弱くても伸びる可能性があるが、ギフトがなければ弱いままだ。彼らの言うことも最もだ。お荷物にはなりたくない。しかし、レベルが低くても実際俺はバケモノを倒したし、無能力者でも戦えると言いたい。無能力者は関係ない・・・かもしれない。


「殿下、帰るぞ。取り敢えず二人だけで頑張ればいいんだ。」

「そうね。帰りましょう。すいません。もし良い人がいたらアスラン伯爵の自宅まで連絡もらえる。」

「はい。承知いたしました。あまり期待しないでお待ち下さい。」


 姫が受付にお願いしたので帰ることにし、俺達は傭兵ラグザを後にする。


「殿下、やはり無能力者じゃ誰もクランを組みたがらないな。」

「気にしないでいいわよ。私達の実力を内外に知らしめれば向こうからクランに入りたいって言ってくるから。」

「そうだな。俺達でも少しは強いよな。あ!そうだ。防具を買いに行くぞ。姫はもう帰宅する時間ですか?だったら俺達三人で行ってくるけど。」

「わ、妾も行くわ。除け者にしないでよ。」


 暫く歩くと武器・防具店が見えてくる。

 場所は来る時に見て知っていた。

 中へ入るとお勧め商品がショウケースの中に入っていた。


「おっ、姫、これアーティファクトだぞ。前時代の遺物だ。ジュラルミン製盾らしい。何だジュラルミンって。高いぞ、姫。この盾は透明だぞ。これもアーティファクトか。ぽ、ぽりか、ぼねーと?ライオットシールドって書いてあるぞ。」

「アスラン?大丈夫。」

「はい?」

「あなた興奮しすぎ。そもそもあなた盾必要ないでしょ。しかも、ポリカーボネートとかジュラルミンのシールドがあってもあまり役に立たないわよ。」

「えー、どうしてですか。盾がないと剣で切られたら死んじゃうでしょ。」

「死んじゃうの?死ななかったでしょ。それに盾がないほうが戦いやすいんじゃないの。」

「あのー殿下。」

 ブルーネット巨乳メイドのエイレム・デミレルが申し訳なさげに話しかける。

「何?」

「ワタクシと、ハリカは二人共ギフト持ってますわよ。殿下達がクランを結成するなら参加しますよ。殿下達よりも私とハリカの方が強いし役に立つと思いますわよ。」

「そうね。確かにあなた達はギフト持ってるしレベルはエイレムが14でハリカが12か。じゃぁ、クランに加入する?」

「はい、加入致しますわ。加入させて下さいませ。」

「私もお願いします。ん?でも、どうして殿下は私達のレベルが分かったんですか、無能力者なのに?」

「や、雇う時に聞いたのよ。」

 ブルーネット巨乳メイドのエイレム・デミレルもブラウンヘアー偽乳メイドのハリカ・デュランも加入するそうだが、二人共ギフト持っているのなら俺と姫より強そうだ。

「それじゃ、二人は武器と防具持ってるよな。だったら俺のだけでいいか。殿下はお城にあるでしょ、沢山。」


 結局、ある程度の防御力の防具だけ購入した。剣は拾った『聖剣モールキュラー』があるので購入する必要はない。


「そう言えば、エイレムとハリカは通いのメイドだろ。朝食の前に来て朝食を作って欲しいな。」


「できれば、住み込みのほうが良いのですわ。」

 エイレムは早起きするのが嫌なのか、積極的なのか・・

「ぼくも、住み込みでお願いします。」

 ハリカも住み込みを希望するようだ。

「良いけど。だったら、この御時世だから武器と防具はうちの屋敷に持ってきたほうがよいな。早速今日取りに行ってくるか?」

「「はい。」」


 屋敷に着くと購入した食品や服を屋敷に置き二人は武器と防具を取りに自宅へと帰っていった。


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