第533話 リュウト目覚め
「おめでとうっリュウト」
「おめでとうございます、リュウトさん!」
「おめでとう、リュウト」
「ますたーおめでとう〜」
みんなが祝ってくれている。
なんでだ?
レッドカーペットに目の前には神父……ルコサさん?
「ほら、君の結婚式なんだからシャキッとしないと」
「結婚式……」
そうか。
今日は____
「おめでとう!リュウトさん!妹ちゃん!」
俺とアオイさんの結婚式!
レッドカーペットの先の扉が開くと奥からウェディングドレスを着た美しい女性が
「あぁ……綺麗だ」
一歩一歩、ゆっくりと此方に歩いてくる……そして!
______そこで夢が途切れた。
「リュウトさん、起きてください」
「…………ここは……」
「何寝ぼけてるんですか!リュウトさん!」
アカネ?それに知ってるベッドだ……ここはいつも外で使ってる魔法のテントの中の俺の部屋……確か俺は……!
「!?」
「リュウトさん?」
自分の手足を見る。
外傷に傷もなく、筋肉痛があちこちにある、だがその痛みは生の感覚。
「俺、生きてる……」
「フフッ、そうですよ、やったんです、私たち」
やった。
俺達はついにやったんだ……全ての元凶の魔神を……
「あ、あれ?」
いつの間にか涙が出てくる。
この涙はなんだ?生きてた事?達成した事?何もかもが混ざり合い涙が出てくる。
「はは、男なのに涙流してしまった」
そんな俺をゆっくりとアカネは抱きしめてくれた。
「良いんです、男なのに泣いても良いんですよ……」
「そっか……アカネ」
「はい」
「しばらくそうしててくれ」
「はい」
俺は声には出さないが落ち着くまでアカネの胸で泣いた。
………………
…………
……
「もういいぞ」
「はい♪」
アカネは俺を離す。
俺は少しボサボサになった髪をゆっくり整えて状況を聞くことにした。
「他のみんなは?ここは俺たちのいつも使うテントの中でいいんだよな?」
「はい、ここはいつものテントですよ、他のみんなはリュウトさんより先に起きて外でお祭り騒ぎではしゃいでいます♪ジュンパクさんがこう言うのは喜びがある内に盛大に祝うのが良いって言うので、私達はリュウトさんが起きるのを確認する為に交代で看病に来てたのですが、もう交代する必要ないですね」
「フフッジュンパクさんらしいな……みんな怪我とかしてるんじゃないのか?」
「安心してください、なんとクロエさんとたまこさんも来てくれてたんですよ、彼女達が中心になってみんなを治癒してくれました」
「おぉ!まさか六英雄と神の使徒が!」
それはすごい!彼女達の治癒魔法は他の魔皮紙とは比べ物にならない、まさに次世代といった方がいいくらいのレベルだ。
ん?待てよ?まさか!
「六英雄が来たって事は!」
「あ、気付きました?フフッもちろん来てますよ」
「っ!」
俺はすぐにベッドから飛び起きて支度をする。
「ほらほら、急がなくても大丈夫ですよ、といっても私を含めてみんな妹ちゃんに会ったら押し寄せるようにてんやわんやになってましたけど」
「そりゃそうさ!あの人の声を聞けるならみんな話すだろうなっとっと」
あまりに急ぎすぎて靴を履く所でバランスを崩した。
「おっと、危ないですよ」
アカネが支えてくれる。
「……ありがとな、アカネ」
「ん?いきなりどうしたんですか?」
「いつも支えてくれて」
「フフッ、お互い様です、なんならこれから一生支えてあげても良いんですよ?」
「ハハッ、それは遠慮しとくよ、俺は心に決めた人が居る」
「…………そうでしたね、冗談ですよ」
………知っている、アカネは冗談じゃ無いんだ。
それは恋をしている俺が一番よく知っている。
みやも、少し違うがあーたんも、俺に抱いてる感情は分かっている……だけど、俺は好きなんだ、あの人が……
何も色を感じなかった俺に色を与えてくれたあの人が!
だが、俺がこれからする計画は____
「女王殺し……」
「?」
「アカネ、魔神は倒した、次に倒すのは『女神』……サクラ女王の抹殺だ」
「…………はい」
「グリードの女王を殺すんだ、人間の敵になる」
「ついて行きます」
「…………」
そう、返事はこう来ると解っていた。
でも、俺は突き放せない……弱いな俺は……
「色がない人間……」
「ん?何ですか?」
「いや、何でもない、さて!しんみりしてしまったな!早く行こう!」
「はい!」
みんなには話していないが、俺は色を見るのに他の人と違う。
テントの扉を開けると確かにお祭り騒ぎだ!
「おぉ」
時刻は夕暮れ時で周りが少し暗くなっていて、砂浜に置かれてる大きな机には様々な料理が!
それをつまみにみんなお酒を飲んでどんちゃん騒ぎだ。
「すごいな」
「はい♪なんて言ったって今回はこれだけの大規模戦闘なのに死人は0!みんな心の底から勝利を祝ってます」
「0!?すごい」
いや、それで良いのだが正直、死人は覚悟していた……だけどそれが無いなんて!
「確かにそれは心の底から喜べるな!」
俺も全てが終わって安心したからか腹がなる。
「フフッ、腹ごしらえしてからでも遅く無いですよ、それに____」
「?」
お祭り騒ぎをしていたジュンパク団の人の1人が「あーーー!」と俺を指差して大声を出す。
「グリード王国の英雄リュウトさんだ!みんな!リュウトさんだぞ!」
その瞬間、周りのみんなが俺の周りに集まってきた。
「あ、はは」
「やっぱりこうなりましたか……」
「やっぱり?」
「ヒロユキさん達も同じです、みんな私達の事を噂で知っていて……要は有名人です」
「なんだそりゃ」
「フフッ、そうですよね」
悪い気はしない、俺はしばらくみんなと勝利の余韻を味わうことにした。
まさか、ここに居る人達で1人……“色が付いてない”のが居るのに気付くのはもう少し後の話だ。
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