第534話 宴 ヒロユキパーティー

 《ジュンパク席》


 「いえーっい!またミーの勝ち!」


 ジュンパクの前の机には大量の空の木のジョッキが置かれている、どうやらここではジュンパクが飲み比べ大会をしてるみたいだ。


 「ジュンパク団リーダーの右腕としてここで負けるわけにはいかないんだよねー!へいへーい!」


 酔い潰れた男冒険者達はパーティー仲間に担いで持っていかれる。


 「さぁ!席が空いたよー!つぎはだれぇ?」


 ジュンパク自身もかなり酔いが回っているみたいだ。


 「次は私がいくよ!」


 「おー?女の子〜?名前は?」


 「マキです!よろしくお願いします!」


 マキの身長はジュンパクより高く、スラッとしている。

 

 「ふふん、女だからって手加減はしないよ?だってミーはどっちもだから!」


 「はい!(あぁ!憧れのジュンパク様が目の前に!酔ってるジュンパク様も可愛いしかっこいい!)」


 ミクラルの冒険者なら誰もが聞くであろうヒロユキパーティー。

 気がつけばその一人一人にファンクラブがつくほど有名になっていた。


 「よーし!注いで注いで!」


 「(あぁ、幸せ、私ここで死ぬのかも)」


 「ほら!えーっと、マキちゃんだっけ?やるよー?」


 「は、はい!」


 その後、先にジュンパクがかなり飲んでるとはいえ、良い勝負をしたマキだった。



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 《ヒロユキ席》


 「……」


 「…………いきます!」


 「……来い」


 ヒロユキの席ではお互いに木刀を持って模擬戦闘が行われていた。

 木刀と言っても普通の剣ではなく太刀をイメージして作られたものだ。


 「はぁ!」


 「……甘い」


 ヒロユキは綺麗に相手の木刀を弾き、首で寸止めした。


 「くっ!……参りました」


 「「「「おおおお!」」」」


 「すげーぜ!あれでヒロユキさん20人抜きだ!」


 その試合をお酒の肴にして飲む者や本気で見て学ぼうとする者、人それぞれ楽しんでいた。


 「……名前は?」


 「カブって言います……」


 「……お前は強くなる」


 「っ!はい!アニキ!」


 「……アニキはよせ」


 そう言ってヒロユキはカブに背を向けた。


 「……」


 ヒロユキは星が出てき始めた空を見上げる。


 「(アニキ……か……あの時、俺の名前を呼んだのは……)」


 「次!お願します!」


 「……」


 心の中でモヤモヤしながらも、ヒロユキは挑戦者の相手をするのだった。


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 《たまこ席》


 「ありがとね〜レナノス♪」


 「ふん……」


 たまことレナノスはお祭り騒ぎの場所より少し離れた所に料理とお酒を持ってきていた。


 「それより〜、これからどうするの〜?」


 「魔神が死に、魔族が居なくなり、魔物の大半も消滅した……これからは人間の世界が続くだろう」


 「不満〜?」


 「あの方が……ウジーザス様が決めたのだ、私はそれに従う」


 「そうね〜」


 たまこは木のジョッキをレナノスに構える。


 「……」


 「飲めるはずよね〜?」


 「飲めるが酔えない、私は魔法機械だからな」


 「馬鹿ね〜、こう言うのは雰囲気を楽しむのよ〜」


 「…………」


 レナノスはもう一つの木のジョッキを持った。


 「魔族と人間の中立の立場の私は今回の件は素直に喜べない」


 「喜ばなくていいのよ〜、この場で私達だけでも死んでいった魔族達を思いながら飲みましょう」


 「……うむ」


 そう言ってレナノスとたまこはお互いのジョッキを当てた。


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