第528話 気合い


 ヒロユキの手から日本刀が消えて元の黒刀に戻る。


 「……」


 「ヒロユキっ!」


 「……今のうちだ」


 「……うんっ!」


 みやは気絶してるリュウトを抱えて転移魔皮紙を起動させて出て行った。

 

 「……」


 静寂が訪れる……


 「……出てこい、魔神」


 そう呟くと魔神が無傷の身体で出てくる。


 「貴様、何をした」


 「……斬っただけだ」


 「そんな事を聞いているんじゃ無い!この空間は俺が固定している!転移の魔法など発動できるはずがないのだ!それをお前は空間を切り裂き転移出来る穴を作ったのだ!」


 「……だから何だ」


 「有り得ないと言ってるんだ!」


 魔神は尚も分析の魔眼でヒロユキを見る。


 「お前の魔力は0!そこを尽きてるんだよ!」


 「……」


 そう、魔神が見えているステータスにヒロユキの魔力は0になっているのだ。

 この空間に入ってからみやを隠すためにずっと魔眼を発動させていて武器召喚により魔力をさらに吸い続けられ、大技も使用した。


 魔力が無くなるのは当たり前のことだ____だがヒロユキは立っている。


 「……あぁ……頭が痛くて……目眩もしてて……身体もボロボロで……脳が今すぐ意識を手放せって言ってんだよ」


 「そんな事を聞いていない!我はなぜ__」


 「____だけど、それだけなんだよ」


 「は?」


 「……それだけだ……」


 「っ!」


 ヒロユキは目を見開き今までより一段と早く魔神に詰め黒刀を振るった!

 

 「……」


 魔神はヒロユキの黒刀を手で受け止める。


 「クク、少し驚かされたが勢いだけだったようだな、この程度の力しか残っていないのに我を倒そうとするとは」


 「……」


 「どうした?もう限界で声も出ないか?」


 「……兄さんが言っていた」


 「?」


 「……限界は自分で決める物だと!」


 「!?」


 ヒロユキの刀を受け止めていた手が徐々に力負けしていく!


 「な!?貴様は本当に何なんだ!【燃えろ】!」


 ヒロユキの身体がリュウトと同じように燃え出す。


 「……」


 魔神からはHPが減っていってるのが解る。


 「ハハハ!このまま燃え尽きて死ぬがいい!」


 「……燃え尽きねぇ!俺の心の炎はこんな物よりも熱い!」


 体の包んでいた炎はヒロユキの身体に入っていき力になる。


 「!!!!!」

 

 「はぁぁぁあ!」


 「ぐぁ!」


 魔神の片腕が落ちる。

 【限界突破】も強化魔法も神の武器も使っていない人間が純粋な力勝負で魔神に勝ったのだ。


 「くっ!【凍れ】!」


 たまらず魔神は距離を取って腕を再生し違う魔法を使う。


 「凍らない、俺はここで足を止めれない】


 ヒロユキはゆっくりと何事もない様に魔神に詰めていく。


 「な、なんだその力は……」


 ヒロユキの持っている黒刀が徐々に消えたはずの美しい日本刀に変わっていく____そして


 【俺を信じてくれているみんなを……親友を……兄さんを……裏切るわけには……行かないんだよ!!!!!】


 日本刀の柄を両手で持ち思いっきり振り下ろした。


 「……」


 「……」


 それは魔神を切り裂く事はなく横の何も無い所を斬った。


 「………………!、貴様!!!!!!!!」


 魔神は無傷、だが明らかに焦りを表に出した。


 そう、あり得ないことがまた起こったのだ。




 「どうやって我を““この身体に固定した””!!!」





 何度も何度も倒しても無限に出てくる新しい身体への入れ替え。


 それが出来なくなっていたのだ。


 「……」


 「答えろ!」


 「……フッ……」


 ヒロユキの身体から力が抜けていく。


 「(あぁ……まだ……終わってない……のに……身体が……言うこと……効かな……)」


 














 






 だが、ヒロユキは床に倒れる事なく、柔らかいオッパイのクッションに受け止められた。













 


 「良く頑張った、ヒロ!」














 その愛称はヒロユキが元の世界で“家族から言われていた愛称”







 「……兄……さん?」




 だが、ヒロユキの耳に聞こえてくるのは良く知ってる女の声だった。




 「あぁ、黙っていてすまないな、後は任せろ」





 

 


 

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