第527話 命乞い
「みや!」
「あ、ぅ……」
「……!」
ヒロユキは状況を理解してリュウトとみやを置き去りに力を振り絞り魔神に向かっていく。
「『分析】」
「(……今、魔神は寄越せと言った!そこから考えられる最悪のパターンは!)」
「【創造】!」
「……間に合え!」
ヒロユキの日本刀は魔神を捉え、首を斬った。
「…………」
魔神の首は床に転がる____だが
「残念だったな」
新たな身体の魔神がヒロユキの近くに現れた、しかし、先程みたいに苦しんでいない。
それはつまり……
「解毒が完了した、もうアイツの毒は我には残っていない」
「……く!」
魔神はそのままヒロユキを蹴り飛ばし、リュウト達に向かって【分析】の魔眼を発動させる。
「我には必要ない力かと思っていたが、実際に使ってみると中々面白い物だな」
「う、うおおぉ!」
「だろうな、まだ立てるはずだと思ったぞ」
「っ!」
リュウトが力を振り絞り立ったところを後頭部を掴まれ床に叩きつけられる。
「お前がまだ立てることは知っていた、なぜなら我には【LV】と【HP】やらのステータスが見えているからな、この意味……異世界から来たお前達なら解るな?」
「な!?」
「……レベルの概念があったのか!?」
あろうことか、魔神は、みやの魔眼を奪っただけではなく、より大きな力として使える様になっていたのだ。
「フッフッフ、見えるぞ、貴様達の力……魔力の残量、そこの元魔王……みやとか言ったか?そいつも後少しで死ぬ」
「み、みや……」
リュウトは地を這いながらみやの元へ……
その横から魔神はリュウトを悠々と歩いて通り過ぎ、みやの背中に刺さっている剣を掴んだ__そして
「ほら、早く来ないと死んでしまうぞ」
「ギャァァァア!」
みやに剣を深く差し込んだのだ。
苦痛に気絶していたみやは跳ね起き普段出さない様な叫びをあげる。
「いたぃいたぃいたぃ!リュウトっ!たすけ、て!」
「や……め…ろ!」
「よく言う、我にはこれ以上の苦痛を与えていて、自分がいざ逆の立場になればそれか?やはり貴様達は生きる価値がない」
グッとまた剣に力を入れる。
「リュウトっ!リュウトォォッ!」
「みや……」
魔神の目にはみやの【HP】がみるみる無くなっていくのがみえている。
「だが、我をあそこまで苦しめたのは褒めてやる、久しぶりの死の恐怖だった、それを讃えてチャンスをやろう」
「チャン……ス?」
みやの背中に刺さっている大剣を抜くと血がそこから吹き出す。
「この女は元魔王でありながら貴様に惚れている、その残っている魔力でコイツを救うか、それとも魔力を使い果たしここで意識を失うか選べ、どちらかは助けてやろう」
「な!?」
「リュウ……トっ……私は……もうい……いよっ」
みやを助けるにはリュウトの持っている魔皮紙を使えば完治する__だが強力な魔皮紙ゆえに残りの魔力を全て使うことになるだろう。
ただし、その場合リュウトは意識を失い、そこにトドメを刺すと言っているのだ。
「おれ……は……」
既にみやは死ぬ寸前で周りの音も風景も見えていない。
「みや……み……や」
這いつくばってみやの元にたどり着くと、リュウトは躊躇なく魔皮紙を取り出した。
「そうか、最後は自分の命よりその女を選んだか……」
吹き出る血を浴びながらリュウトは最後の力を振り絞り魔皮紙を起動させ……
意識を手放した。
「……」
「……あれっ」
みやが起きる。
「どけ、その男をあの世に我が送ってやる」
「まさかっ……いやっ!リュウトっ!」
「偽物と言ったのを詫びよう、最後はちゃんとした勇者だった」
「だめっ!お願い……しますっ!もう逆らわないっ!逆らいませんっからっ!」
みやは涙を流しながらその場で懇願する。
「……」
「あなたの勝ちです、だからリュウトだけはっ、お願いしますっ、命だけは」
かっこ悪い。
だが、敗者はそうするしかないのだ、何をしてもダメだった、最後の毒ですら自分達のミスでダメにしてしまった。
勇者達が敵わなかった敵にみや一人で勝てるはずもない。
取れる行動はもはや命乞いしかなかった……
「どけ。」
「お願いしますっお願いしますっ……」
「次で最後だ、どけ。」
「リュウトっ……」
みやはリュウトを抱きしめる。
「せっかくの命、無駄にしたな」
魔神は大剣を振り上げ……
「2人仲良く死ね」
「っ」
振り下ろそうとした瞬間だった。
「……【目撃斬】!」
「っ!?なんだと!?」
魔神の身体は大剣ごと真っ二つに斬られた。
「……そいつを連れて逃げろ」
「っ!ヒロユキっ!」
そこには魔力も無い、身体もボロボロのヒロユキが日本刀を構えて立っていた。
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