第526話 【神殺の毒】

 

 「ぐ、ぁ……」


 魔神の手から剣が落ち、ガランガランと音を立てる。


 「これは……」


 胸には小さな針が……


 「【神殺の毒】っ、私の作れる毒でももっとも強力で残酷な毒っ」


 「貴様……」


 どこからともなく出てきたのは『みや』、元魔王で今はリュウトのパーティーメンバーだ。


 「が、は」


 魔神が膝をつく。


 「なるほど……最初からこれが目的……」


 リュウトはみやに肩を貸してもらいながら魔神の言葉を訂正した。


 「いや、これは最終手段だ……俺はこの毒に頼らずにお前を倒すつもりで全力を出していた、だけどお前には敵わなかった、完敗だ」


 「ぐ……」


 「こんな形で決着をつけてしまってすまないな……だけど俺も負けるわけにはいかないんだ……どんな手を使おうとも」


 「貴様はそれでも!」


 「あぁ、今日限りで【勇者】を名乗るのはやめるよ、元々俺には大層な肩書きだったしな」


 「っ!!!!!」


 リュウトとみやはヒロユキの元へと歩いていく。


 「ぐ、がぁぁぁぁあ!ぁぁぁあ!」


 魔神を襲う激痛。


 身体を変えればいいと言うものではない、まるで魂がヤスリで少しずつ削られていくかのような拷問。


 同時に身体にも変化が現れる。


 脳と心臓に負担を受け、全身が痙攣し何も考えられなくなり目の前が真っ白になっていく。


 「こんな!こんな事で!」


 鎧で顔や腕など隠れているが剥き出しの胸の肌が溶け始めているのが見える。


 「ぐわぁぁぁあ!あ!あ!ぁぁぁああ!」


 身体を変えるがすぐに同じ症状に襲われ、また変える。


 「我が!こんな!」


 元々身体を変えればここに転移するようになっていたのだろう。

 リュウト達からしたら右から断末魔が聞こえてきては消え、左から断末魔が聞こえてきては消え、四方八方から魔神の苦しむ姿が見えている。


 「……」


 「これが……【神殺の毒】……」


 「うんっ……私の中の毒を全て使った究極の毒……これでもう私は毒を使えなくなるっ」


 「すまないな……俺の力が足りなかった」


 「ううんっいいの」


 「ヒロユキもすまない、最初から魔眼を発動させての戦闘、俺がもう少し強ければもっと早くに隙を……」


 「……いや、お前はよくやってくれたよ」


 そう言いながらフラフラとしているリュウトの足並みに合わせて3人は出て行こうとする……


 「がぁぁぁぁあ!あ!ぁぁあああああああああああああ!」


 尚も叫び続ける魔神を背に……


 あまりのおぞましい光景故にこれ以上見ないように背を向けた3人


















 だが、彼らは間違っていた。








 見るべきだったのだ、見届けるべきだった、魔神の最後を









 ドンっ!








 みやは背中から誰かに突き飛ばされたような感覚を味わった。




 「えっ……」


 「みや!?」


 「……!?」



 リュウトに肩を貸していたみやはその衝撃で前に倒れ足腰が弱っているリュウトはその場に倒れる。


 

 「あ、あれっ」



 そのみやの背中には“魔神の大剣”が刺さっていた。



 そして魔神は唱える。






 「【目撃封】!寄越せ!貴様の力を!」






 大剣が禍々しく光りだし、みやの『分析』の力が封印された。



 


 

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