第492話 トミーvsマーク

 《ミクラルヴォルケーノ》


 静かな山奥、だが、その中でもう戦闘は行われていた。


 「あぁおい!そんなもんか!」


 「そんなもんですよ!」


 木々を倒さずに隙間を縫ってトミーの攻撃を避けていくマークに対して邪魔だと言わんばかりに目の前の障害物を壊しながら進む丸裸のトミー。


 「逃げるだけじゃ何も変わらねーぞ!おい!」


 「あなたくらいですよ!全部物を取られていてもそんなに動けるのは!」


 「新人のお前とはレベルが違うんだよ!」


 「理屈で通らない強さだからこそ俺と相性が悪い、だから戦いたくなかったんだあなたと!」


 「じゃぁ大人しく死ね!」


 通りすがりに地面の砂を一握りしてマークに投げつけると砂の一つ一つが細い針となって飛んでいく。


 「くっ!」


 マークは周りを見ても隠れる場所がないので羽織っていた白いマントで受ける。


 「っ!」


 だが何本かマントを貫通してマークの頬をかすめていった!すかさず次の攻撃が来る前に木や岩の障害物を使って隠れながら隙をうかがう。


 「大人しく死ね!」


 「誰が死ぬもんですか!」


 「俺の隙を狙ってるみたいだがそんなもんはねぇから諦めろ!おい!」

 

 「諦めて俺も宝も見逃してもらえるならとっくに諦めてますよ!」


 そう、逃げれば良いのだ、何もかも放り出してどこか遠くへ……だがマークにはそれが出来ない理由があった。


 「(ここで逃げれば、アレをアンタは破壊するんだろうが!)」


 ミクラルヴォルケーノの秘密の洞窟の奥深く。

 そこにはマークの一族に代々受け継がれる宝があった……その宝はドラゴンスレイヤーの様な武器でもなく、キラキラと輝く宝石でもない。


 「何考えてるかしらねぇが、当たりだと思うぜ!おい!」


 トミーは近くに落ちている木の枝を拾い上げるが


 「させませんよ!」


 指が触れた瞬間にマークの手に転送された、そのまま木の枝を魔法で燃やし切る。


 「相変わらず『所有権』の力はめんどくせーな!おい!てめーら一族は全員それなのかよ!」


 「あなたの『武器化』の能力も大概ですよ!触れた物全てを武器に出来るなんて!」


 だが、お互いにどこか隙があると狙っていた。


 「(触れた瞬間に転送された……だがあの砂の時は出来なかった……何かあるな)」


 「(あの砂の針、すごい威力だったけど防御無効の力は備わっていなかった……武器化の能力にも何か条件があるのでは?)」


 「これはどうだ!おい!」


 通りすぎ様に大きな木に触ると形を変えて大砲になり発射される。


 「っ!」


 マークは間一髪弾を避けた。


 「なるほどな、テメーの力は文字通り俺が所有してる物を盗る事か、間接的な物……撃たれた鉄砲の弾とかはとれねーわけだ」


 「どうですかね、そんなものを盗ると考えたことがなかったので」


 だが、そう言いながら逃げるマークの頬には汗が見えていた。


 「(気付かれたか、流石六英雄最強の戦力なだけある!)」


 「仕方ない、本望ではないけど死ぬよりマシです!」


 マークは移動しながら魔法を発動させるとトミーの周りからおびただしい数の魔法陣が展開されていく。


 「あぁ?」


 「避けれますかね!これが!」


 パチンっ、と指を鳴らすと魔法陣から次々と剣や槍、矢やレイピアなど様々な武器が転送されてきてトミーに飛んでいく。


 「ちっ!」


 1番最初に飛んできた槍がまともにトミーの心臓を貫いた!


 「ガハッ」


 「まだですよ!」


 次に矢が肩に刺さり剣が足に刺さろうとした瞬間!


 「鬱陶しいんだよ!おい!」


 「なっ!」


 トミーはその場で前宙し足に飛んできた剣を握り後ろから飛んで来る矢を上に弾いた。


 「武器の神に武器を投げてきたお前の負けだ!おい!」


 自分に突き刺さってる槍も無理やり抜いて両手に握る2つの武器で次々と襲ってくる武器を弾いていく。


 「だが隙だらけです!」


 武器を弾いて防戦一方だと思ったマークは火の魔法で攻撃しようとしたが__


 「俺に隙があると思ったか!おい!」


 バキン!と鈍い音がした後、次々とマークに武器が飛んできた!


 「まさか!弾き飛ばす角度を調整してこちらに!?」


 たまらずマークは魔法を解いて回避に専念した。


 「おいおい!テメーの魔法でやられてちゃヤワねーわな!」


 トミーは全て弾き飛ばした後に両手に持っていた武器を地面に刺した。


 「これは……困りましたね」


 「こんなもんじゃねぇだろ?ただの自分の宝物を投げてきただけじゃねーか」


 「一応あの中にはドラゴンスレイヤー並みの伝説と言われる武器もあったんですが」


 「武器は武器だ、誰も握ってねぇ武器なんざそこら辺に飾られてるコレクションと変わらねぇ」


 「………それはそうとトミーさん……あなた、傷はどうしました?俺からみたら完全に突き刺さっていたんですが、なぜ傷が無くなってるのですか?」


 装備を剥ぎ取られ裸のトミーの身体はまるで最初から傷が無かったかの様に綺麗になっていた。


 「あぁ?んなもん聞かれて答える奴がいるかよ?」


 「装備も盗った、治療する魔皮紙もない、もちろんあなたの適性魔法魔法も治癒でもない……なのにあの致命傷を完璧に治すなんてあり得ないんですよ」


 「じゃぁ一生あり得ないと思って死ね」


 「本当にあなたって人は!……そうですか、分かりました、じゃぁこれも教えてあげる必要もありませんね」


 パチンとマークが指を鳴らすとトミーの周りの空間が固定された。


 「あぁ?おい、結界か?こんなもの__っ!」


 「出れないでしょう、あなたが相手になると聞いていてこっちも今日覚悟して用意していたんです」


 空間を固定するほどの魔法、早々すぐに展開できるはずがない……これは何日が前から仕込んでいた魔法だ、つまり!


 「くそ!未来視か!」


 「ご名答、本当なら奥の手なので使いたく無かったのですがこの未来が来てしまったのでね!」


 再度指を鳴らして魔法陣を展開する。


 「いくら謎の治癒能力があっても細切れにしたらどうでしょうかね?」


 「……」


 「次は一方的に受けてもらいます!あの世で親父によろしく言っといてください!」







 身動きの取れないトミーに向かって再度、武器が放たれた!








 

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