第491話 出発

 

 {起きたかい!良かった……}


 通信越しに聞こえるミカさんの声からして相当焦っていた。


 「{ごめん、油断した……どうなってた?}」


 だけど俺が質問をするとミカさんも気持ちを切り換えたのかいつもの調子に戻った。


 {うむ、その前に此方に送った瓶の中を分析した結果を言うよ……その霧、いや、その島の空気は意志を持っている}


 「{意志を?}」


 {正確には全てが魔力をもっていると言った方がいいかな、息をするだけで魔力が補給できるすごい島だが、その空気が身体の中を通って脳に到達すると何が起こるか分からない、魔力が無くなって魔力酔いはあるが魔力補給を常にしているとどうだろうか……}


 「{幻覚……いや、夢を見ていたかも}」


 {夢?}


 「{うん、でも、夢にしては感触とかがリアルだったんだ}」


 {なるほど、納得がいく……空気の魔力が脳に影響して夢の中だが触った感触など臭いも直接脳に信号が送られてたんだろう、確かにそれは夢ではなく幻覚に近いものがあるね}


 「{覚めてよかった……}」

 

 {察するにかなりストレスのかかる夢だったのだろう、起きる前に吐いている音が聞こえた……これがもしも幸せな夢だったならば、現実と勘違いして一生覚めない夢だったかもしれないね}


 「{え、あ……うん}」


 本当はお酒飲みすぎて吐いてたとか言えない(


 「{それよりたまこさんは!?}」


 霧の中を見渡すがたまこさんの気配がない!


 {……残念ながら音を聞いていた感じは何も分からなかった、君の紋章で居場所はわからないのか?}


 「{そうか!その手があった!}」


 紋章のマップを発動させると自分の位置ともうひとつの緑のピンが立っている、これはここに到着する前に反映させた、たまこさんの位置。


 「{居た!あれ?でもここって……}」


 たまこさんの位置は“目標地点”にあったのだ。


 {君が倒れた瞬間を狙ってレナノスという人物が影移動で連れ去ったと考えるのが妥当だろうね}


 「{うん……でもたまこさんは死んでない、安心したぁ……}」


 {安心?}


 「{うん、だって殺してないし、僕だって倒れていたのに死んでない、これってつまり相手は僕達と話す気があるって事だよね?}」


 {ま、まぁそうなるかな?}


 「{絶対そうだよ!となれば、夜に霧が晴れるのを__}」


 {その必要はない、今完成したよ}


 俺の視界から霧がどんどん晴れていく。


 「{おぉ!}」


 {その霧は空気が魔力を帯びてそれが見えている状態だ、ならばそれを見えなくすればいい}


 「{ありがとう!……あー……これはたしかに普通にしてたら辿り着かないね}」


 {?}


 霧が晴れて見えてきたのは周りを囲む大量の【ウッドリーワンド】だった。


 「{これじゃぁ、永遠と同じ場所をぐるぐるするわけだ}」


 {そして、疲れて倒れた所や君みたいに幻覚を見ている者を養分にする、実に合理的だな}


 「{ほんと、起きて良かったぁ}」


 {それより、これから先は私の独断で通信をオープンにするけどいいね?}


 「{うん、構わないよ}」


 ちなみに通信オープンにすると特定の人以外にも周りにも聞こえるようになる、つまりスピーカーモードだ。


 「さて、と、霧も晴れた事だし」


 準備運動をしてっと……


 「ゴー!」




 


 俺はテンション高く神速で目的地まで走り出した。







 なんかお酒飲んでないのに酔ってるような……気のせいか!幻覚だしね!






 

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