第478話 本題に入る

 

 と、言ったものの、自分が昨日寝ていて起こすわけにもいかないので起きるまでに師匠からお裾分けしてもらった泥マグロのブロックを簡単に焼いてご飯にお味噌汁、そして漬け物を添えて和風のブレイクファーストを作った。


 ご察しの通り、元居た世界とは使ってる材料も作り方も違う……漬け物に関してはこっちの方が楽だけどね、魔皮紙に巻いといて放置しとくだけだから。


 「ふぁ〜おはよう〜」


 「あ、おはようございます、たまこさん」


 匂いで起きたのかテントからたまこさんが出てきた。


 「あら〜?みんな待たせちゃったかしら〜?」


 「いえ、ちょうどなのでどうぞ」


 ちなみに今は家の中にあったまる机も外に出してる……え?家で食えばいいじゃないか?

 うーん、確かに……ま、いっか!


 すでに席についている師匠とトミーさんは律儀にみんな来るまで食べないで待ってる。

 この2人ほんと和食合うな……何というか映えるって奴。


 「あら〜?トミーさんも食べるの〜?」


 「あぁおい?大将が俺のために作ってくれたもんだ、食うのが当たり前だろ?」


 「ふ〜ん?」


 「さっさと座れクソガキ、大将を待たせるな」


 「アオイちゃんだっけ〜?どういう関係なの〜?」


 「あ、はは……実は僕もよくわかってないけどそんなに気にしてないだけかな?」


 気にすると止まらなくなるしな……


 「そう〜」


 たまこさんも座ったので俺も座る。

 みんなお箸で大丈夫かな?と思ったけどたまこさんは獣人だし師匠も言わずもがな……残るはトミーさんだけどまぁ武器をあんなに扱ってるんだし大丈夫でしょう。

 そのうちこの人箸で剣とか受け止めるんじゃないかな?


 「いただきます」


 俺がそう言うと3人ともお辞儀をして箸を持った。


 「それで本題なんですけど、相手3人の紋章の力ってなんなのですかね?」


 俺はお味噌汁をすすって話し合いモードに切り換える。

 こういう時、焼き魚はベストだ、箸で身を少しとってご飯に乗せて食べるだけなので話しながら食べるのは区切りが出来て最適。


 「そうね〜、誰から聞きたい?」


 「とりあえずじゃぁあのメタリックな獣人から」


 「いきなりその人なのね〜……彼の名前はレナノス、紋章の力は『影』に関係してる効果よ〜」


 「ほーう、影ですか」


 「1番印象に残ってるのは『影移動』ね〜、彼は影の世界に入って影から影に移動するの〜」


 「影の世界……」


 なんか厨ニくさい話だな……いや、今に始まった事じゃないか。


 「影がある限り彼からは逃れられないわ〜」


 「へぇ、じゃぁ今ももうすぐ近くに来てたりして」


 「……」


 「……」


 あ、やば、フラグたったかな?


 「それに関しては大丈夫じゃ、先程の勇者に渡したこれじゃが」


 「あぁ、お守りの小瓶?」


 よくお土産でありそうなすっごい小さなボトルのやつ。


 「これをほれ、嗅いでみ」


 「ん?……くんくん……生臭い?」


 なんだろう、魚の腐った臭いがする。


 「流石料理をしてる身じゃの、普通は嫌がるんじゃが」


 ふっ、甘く見るなよ俺を、後で料理をしようとおもってそのまま魚魔物を出して放置してしまった数はいざ知らず……人間食ったパンの枚数を覚えているか?


 ま、もちろん「焼けばなんとかなるだろ」って事で焼いてちゃんといただきました。


 「それで、これがどういう?」


 「昔、古き友に聞いたんだが影の世界は真っ暗で視界はまったく当てにならんらしい、その時の友は“音”を聞いていたようだが」


 「むん?」


 「なるほど〜……」


 「どういうこと?たまこさん」


 「そうね〜……どこから話せばいいのかしら〜……」


 「うーん、生い立ちとかそういうのいいから簡潔に」


 「きっとあの人が影の世界で使ってるのは“嗅覚”よ〜」


 「え、じゃぁもしかして」


 「ホッホッホ、儂はレナ坊とも縁があるからの奴は昔から生臭いところは避けてるみたいじゃの」


 「そんな簡単な事なの?」


 「何万、何千万しかいない人間と獣人でも1人だと限界がある、昨日の場所から周辺を探してもかなりの人が居るじゃろう、もしもここを見つけても生臭いので後回しにするじゃろう」


 「流石師匠……」


 まさかとは思うが、朝飯を準備してるだけではなく、対策もしていたのだ……ほんとにこの人の後継でいいの?俺。


 「ほかに影で出来ること……例えば影を使って剣を出したり、人の影を具現化させて従わせて戦わせたりできるの?」


 「アオイちゃんは想像力豊富ね〜」


 「ホッホッホ、そうでないと儂が後継にした意味がないわ」


 「え?」


 「大丈夫よ〜、そんなのは今まで見たことがないから〜」


 「そ、そうなんだ」


 心配しすぎかな?


 「他に何かある?」


 「1つ、いい〜?」


 「なんですか?たまこさん」


 「アオイちゃん、相手や私たちの力を知ってどうするの〜殺すの?」


 その言葉を聞いて一斉に箸が止まり、緊張感が走る。

 それぞれの人達が何か考えている顔だ。


 「あー……えーっと」


 「それを聞かないと〜これ以上は〜」


 「あぁおい?これ以上はなんだ?クソガキ?」


 「やめんか、トミー」


 「クソジジイが俺を止めるのか?あぁ?」


 「違う、お主の大将がまだ答えを出しておらんだろう、それを聞いてからでも遅くはない」


 あぁ、これ俺責任重大じゃね?次の言葉で戦闘が始まっちゃうよ?とりあえずトミーさんがなんか殺しそうになったら止めよう。

 俺は俺の意見を聞いてもらうのが1番だ。

 それで納得がいかないなら他の事を考えることにしよ。











 「えーっと……僕の最終的な考えは六英雄全員が仲間になってくれないかな?って思ってるよ」











 「「「…………」」」


 他の3人が黙る。

 そしてたまこさんが笑顔を出して答えた。


 「アオイちゃん〜……私、あなたのこと好きかも〜」


 「え?あ、はい、えと?ありがとうございます?」


 「ホッホッホ、貪欲じゃのぅ」


 「大将がそう言うなら従うまでだ」


 「う、うん、とりあえずここで身内戦にならなくて良かったよ」


 「なら話は早いわね〜……レナノスは私1人に任せて」


 「え?」


 「今回相手は3人、その考えだと1人に1人を相手するべきだと思うのよ〜」


 「どうしてですか?」


 「だって〜1人に対して3人がかりなんて状況を相手が作ると思う〜?」


 「確かに、僕たち3人を相手するのなら3人で来ると思いますが」


 「その時、私は必ずレナノスとの一騎打ちの状況を作り出すわ〜、確実に、100%」


 めっちゃ言い切ったなこの人……でも、そんなに言い切るのなら何かしらあるんだろう、この流れって俺その方法聞いちゃダメな奴だよね?


 「あーっと、じゃぁそれで」


 「助かるわ〜」


 まぁその方があんまり考えなくて良さそうだしね。


 「残りの2人なんだけど」


 「大将、マークは俺に任せてもらっていいか?」


 「うん、お願いするよ、でも何かあるの?」


 今度はトミーさんだ、もう任せて!って言うなら任せるよ、一応何するか聞くけど。


 「ま、消去法だ……俺はウジージスには手も足もでねぇ」


 「え」


 「アイツの力は俺と相性が悪い」


 「ウジーザスさんの能力って大体予想ついてるけど一応聞くよ?なんなの?」









 「奴の力は『未来視』……文字通り未来を見て行動する化け物だ」









 







 



 

 

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