第473話 力のぶつかり合い!


 アオイが登場し、空気が張り詰められる。


 「大将、お膳立てはしておいたぜ、おい」


 「え?」


 「あぁ、おい?そういや、実際にこっちの方に会うのは初めてだったな、俺はアンタの部下で六英雄の称号を持ってる……ムラサメの野郎に聞いただろ?」


 「あぁ!あなたが例の__」


 トミーとアオイが話している中、ウジーザスが遮る。


 「わざわざ『女神』を名乗るとは、意味が解っているのですか?新人さん」


 ウジーザスから放たれる殺気。

 だがアオイはそれには動じずに真っ直ぐウジーザスを見て応える。


 「そうは言ってもこの紋章を貰ったときに出て来たのがその称号だったんだから仕方ないよ」


 「そう、仕方のない事ですね……この未来が選択されたのも仕方ありません、過去は変えられないのですから」


 「それで、六英雄はこれで全員?」


 「はい、其方に居るのが、『武神』のトミー、そして此方に居るのが『珍神』のマーク、『暗殺神』のレナノス、『治癒神』のたまこ……そして私が『運命神』のウジーザスです」


 「神様のバーゲンセールってどっかの王子が言っちゃうよ?なんか紫のコアにその白い人間離れした肌とか色々似てるし、オマージュ?」


 「あなたにその力を与えた者はどうしたんですか?彼があなた如きにやられるとは思いませんが」


 「師匠なら僕の部屋で寝てるよ、殺してはない」


 「そうですか」


 ウジーザスはそう言って地面に刺さっている小さなナイフを拾って上に投げた。


 「?」


 「ではアナタも見たのでしょう、私のメッセージを」


 「うん、ここに来るまでに見させてもらったよ」


 「こうなった以上、仕方ありません、私達と協力して勇者2人を」


 「断る」


 「……だと思いました」


 「それより僕の話を聞いてほしいんだけ__」


 「大将!」


 「!?」


 異変に気付いたトミーが叫ぶ。

 目の前に居たはずのレナノスが容赦なく影移動で気配を消して来ていたのだ、ウジーザスと話していたアオイは気付かなかった!


 「ち!」


 なんとか助けようとトミーはレナノスに持っていた長槍で突き刺そうとするが


 「遅い!」


 もはやレナノスはアオイの首を捉えて数センチ先まで小刀が来ていた。

 ここから避けるのは不可能、どんな達人でも無理だろう……






 ______誰もがそう思っていた。






 「ふぅ、あぶねぇ……」


 アオイはゆっくり後ろに下がった。


 「いやー、流石暗殺神って言われてるだけあるね、ほんとに全く気付かなかった……気配遮断ローブだってここまで気配を消さないよ」


 アオイから見ると自分以外が止まっている。

 否、アオイが速すぎてスローモーションになっているのだ。


 

 神速の世界。


 元々アオイの紋章の力は《脳の活性》

 闘いの中で使われる《動体視力》や《反射神経》などを極限に強化されるというものだ。


 だが、それだけでは不十分。


 この世界に入った所で自分の身体もスローになるだけなのだが、元々装備に速さを強化する魔法は組み込まれていた。

 その魔法は魔力を流せば流すだけ早く動けるが流しすぎると速すぎて制御できないのだ。




 だが、この2つが偶然にも合致した……結果、アオイは神速を手に入れた。




 「○ロックアップと名付けようかな、いや、流石に怒られるか?」


 そんな事を言いながら周りを見る。


 「まさか、話の途中で斬りかかってくるなんて……流石忍者汚い」


 アオイはクナイを出してレナノスの腕を少し斬り傷を負わせる。


 「さて、と、どうしよ……うーん、とりあえずリーダーっぽいこの人だけ僕の家に来てもらってゆっくりと話を__」


 その時だった。


 



 ザクッ




 「え」



 アオイの肩に小さなナイフが刺さる。


 

 「な、なん……で」


 それと同時に神速に集中させていた魔力が乱れ周りが時間を取り戻す。


 「あぁ!?」


 「消えた!?ぐ、あ!」


 先程までアオイを見ていたトミーとレナノスはいきなり消えたアオイに驚き、レナノスは全身の痺れ地面に俯きに倒れる。


 「っ!!これは!さっき投げてたナイフ!?」


 ウジーザスの少し前までいつのまにか来ていたアオイは肩に刺さったナイフを抜いて傷口を抑える。


 いきなり何が起こったか分からないマークとたまこは困惑しているが、そんな中、ウジーザスは淡々と喋る。


 「流石武神の武器ですね、私を倒そうとしたので何かしらあると思っていましたが防御無効の武器とは」


 「ど、どうして」


 「アナタがそのタイミングでそこに来るのが解っていました、これが私の能力です」


 「大将!」


 アオイの異常事態に気付きトミーはアオイの近くに来る。


 「大丈夫、結構深く刺さったからある意味痛くないよ」


 そう言ったアオイの肩はもう血が出ていない。


 「装備だけの治療魔法でそこまでの回復力とは……」


 「自慢の装備でね」


 そう言いながらもアオイは少し汗を流す。

 先程の一撃は油断していたとは言えウジーザスは証明したのだ。


 “お前の力は効かない”と


 「他の2人より、まず先にアナタを殺す事にします、そうですね、どの未来で殺して差し上げましょうか」


 「出来れば、寿命で死にたいんだけど」


 「アナタの寿命も私が決めま……っ!」


 ウジーザスは突然何かを“見てしまった様に”目を見開く!


 「これは……マーク!」


 「何ですか、ボス、正直俺の存在意義が無いんでもう帰ろうかと__」


 「すぐにこの近くにある“手鏡”を取りなさい!」


 「え?あぁ、これですか?」


 マークは既に取っていた手鏡をどこからともなく手に出す。


 「っ!」


 その鏡を見てたまこの表情が変わった。


 「出て来なさい、それとも今ここでアナタたち全員を殺しましょうか?」


 ウジーザスがマークの持っている鏡に向かって話しかける、すると鏡が光出し……


 「…………」


 「いや〜バレちゃってたねアニキ」


 「ジュンパク、お口チャックしていてください、アナタが喋るとややこしくなりそうです」


 

 「みんな!?」





 鏡から出て来たのはヒロユキ達3人だった。


 

 

 


 

 

 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る