第472話 伝承・新たな力!

 

 「師匠はどうしてここへ?」


 「ホッホッホ、散歩をしていたら山に大きな音がしたのでな、確認しにきたのじゃ」


 「お騒がせしてすいません」


 「良い、ところで儂は気絶していたのか?」


 「はい、ごめんなさい、クナイの方も前と違って新しくなってて……まさか師匠が2日寝込むとは思わなかったです」


 「ふむ、儂も数々の毒をくらってきて鍛えられてるはずだが、ここまで強力だとはな」


 「あ、はは……それと、もうひとつ」


 アオイはお酒を飲みながら話を続ける。


 「?」


 「さっきの紋章を知ってるかどうのってどういう事ですか?」


 「ふむ、これか」


 師範の手の甲に紋章が浮かぶ。


 「はい、何か懐かしいような……」


 「懐かしい?」


 「いえ、自分でも変なこと言ってると思ってるんですが、そんな感じがするんです」


 「ホッホッホ……これも運命なのかもしれぬの、教える前に聞きたいことがある」


 「はい?」


 師範もお酒を1杯飲み、口を潤す。


 「アオイ、正義とは何だと思う?」


 「え?」


 「……」


 アオイは聞き直してしまったが、師範は黙ってアオイの目をじっとみる。


 「…………そうですね、僕が思うに正義とは……」




 「“心に決めた道”だと思います」


 


 「ほう?」


 「正義に答えなんてないと思います、例えば、この山に居る魔も……アヤカシで【団子蜘蛛】が罠をはっててそこに【丸鉢蝶々】がかかってるのを見て蝶々を助ける人が居るとしたら、団子蜘蛛の方が可哀想だと言う人が居ます……お互いに間違っていないと思うんです僕は」


 「それぞれが決めた道を歩いてる結果だと?」


 「そうです、どっちも間違っていないからそこで喧嘩が起こる」


 「お主はどうするんじゃ?」


 「そうですね……時と場合によりますが相手の主張に合わせる事が多いです、だけど」


 「だけど?」


 「絶対に譲れないなら土下座してでも通します……全力を出してダメならキッパリと諦めます」


 「…………」


 「師匠?」


 師範はアオイの言葉を聞いて目を閉じて少し考えた後、クワッ!と目を見開き


 「ぐわっはっはっはっはっはっはっは!」


 高らかに目に涙を浮かべるほど笑い出した。


 「師匠!?」


 「はっはっはっはっはっはっげほっげほ!がはっ」


 「師匠!?むせてますよ!?」


 アオイは慌てて師範のお猪口にお酒を注ぎ、師範は喉の調子を整える為にまたお酒をぐびっと飲み干す。

 ……アオイの行動もどうかと思うが……


 「まさかこんなガキに教えられるとはな」


 「ガ、ガキ!?」


 「良い、正義とは何か?その答えを儂は何百年も探していた……そりゃ見つからぬはずじゃな、人間、魔族の1人1人の数だけ正義がある」


 「ど、どうして魔族の事を!?」


 「儂も、魔族なんじゃ」


 「え!?」


 「アオイ、手を」


 「は、はい」


 アオイは右手を師範に出す。


 「グローブはとれ」


 「あ、はい」


 アオイは装備を元の宝石の状態に戻したのでパンツ一丁になった。

 胸は左手で手ブラして隠す。


 「…………なぜ裸になる」


 「すいません……この装備各所パージが出来ないので」


 「まぁいい……」


 師範はアオイの手を取り目を閉じる。


 「…………」


 「…………」


 「お前の正義を信じておる」


 紋章はより一層大きな光りを放ち師範の手からアオイの手へ移っていく……そしてアオイの中に入ってくる師範の記憶。


 「ま、まさか師匠が……」


 光が無くなり紋章が移ると師範は苦しそうに脂汗を流し出す。


 「師匠!」


 「良い……少し休めば良くなるだろう……それよりも……感じているはずだ、どこに行けばいいか」


 今のアオイにはその意味が解っていた。


 「紋章は……その人によって力が変わる、お前の力は……」


 そう言い終わる前に師範はいつの間にかベッドに横になっていた。


 「!?」


 アオイの姿はもう無い……


 ご丁寧に机の上にあった料理は片付けられて、代わりにお茶とコップが置いてある。


 「『神速』…………か」










 そして______










 「疾風参上!」

 

 


 六英雄__《女神》のアオイが誕生した。





 

 

 

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