第471話 多くは語らず、親友へ乾杯
《21:00》
ジュワァ!っと言う音を聞いて師範は起きる。
「……」
気がつくとベッドの上だった……ベッドからは魂を落ち着かせる良い匂い(アオイの体臭)がする。
「ふむ……」
部屋はくぎられているわけではないので奥のキッチンで何かを作っているアオイの後ろ姿が見える。
集中しているのか師範に気づいていないみたいだ。
「…………」
しばしアオイを後ろから見ていると視線を感じたのか振り返ってくる。
「起きましたか、師匠!」
「あ、あぁ……」
「ちょうど今全部出来たところなんですよ」
ベッドの横にあるテーブルには様々な肉料理が並んでいて、最後にアオイは今使ったばかりの揚げ物を置いた。
「これは?儂の弟子がだしている“唐揚げ”に似ているようじゃが……」
狐色で美味しそうな匂いを出しているアオイの料理を不思議そうに師範は聞く。
「これは、えーっと、トンカ……ん?豚じゃないから何だろ?うーん、《ピグカツ》って言ってメルピグのお肉を揚げたものです」
「ほう?」
「師匠、どうぞ」
アオイは丁寧にイスを引いて師範を座らせ、師範の対面に座る。
「アオイ……」
「待ってください師匠!何か話す前に」
アオイはどこに隠してあったのか古い酒瓶を取り出してお猪口を2つ出す。
「これは……」
「あ、知ってますか?このお酒ってマニアックな所にしか売ってなくて探すのに苦労したんですよ」
「………どうしてこれを探そうと?」
「どうして?えーっと、ですね……昔この近くに住んでいた人にお世話になって……その時に貰ったのがこれだったんです」
「………………そいつはどうなった?」
「………」
「そうか……」
師範はアオイの前にある猪口を1つ取り
「1杯、貰おうか」
しわしわな笑顔で優しくそう言った。
「はい!」
「ホッホッホ」
アオイは師範と自分のを注いで構える。
「かんぱいです」
「かんぱいじゃな」
お互いに一気に飲み干した。
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