第456話 魅了された出来事

 チップに魔力を通すと浮かび上がり壁に映像を映し出す。


 映像には白い長い髪のツインテールに真紅の目、それに白衣を着た自分の姿が映っていた……大方、鏡を前にしてるのだろう。


 「ほう、うまく撮れてるじゃないか」


 {記録、1日目、ついに私は簡易的に記録出来る魔法を発見した、せっかくの記録だ、今ここで作り方を記録した後、すべての資料を抹消しようと思う……なーに、これが成功していたらこの記録に残り、失敗していたら失敗作の作り方などいらないから処理した事になる、合理的だ}


 昔の自分はそう言って“私の記憶にない場所”でチップの成分や作り方、魔法陣の書き方などを説明しだした。


 「なるほど、こう言う事をする時にも便利だな」


 説明した後に資料を焼いているのが見える。

 これでこの研究は“実験中”と言う事だけ残って後は謎になるだろう……相変わらず独占欲が強いな私は。


 それから自分の1日の行動が記録されていた。


 「切り方は今後の課題だな、目で見たもの全てが記録されてしまっている……今の私には便利がいいが、いらない部分まで映ってしまっている、トイレなどはいらないな」


 流石に寝ている時は記録していないのと飛ばしと見直し、そして一時停止機能があるのは救いだった。


 「これは……長くなりそうだな」


 私が1日16時間起きていたとしたらその分見なきゃ行けない、別に何でもない日はそのまま流してみれば良いか。





 __そして映像を見ていくうちに自分の事がわかって来た。




 「私はグリード城の魔法研究技術者の1人で言えば全て揃う研究材料を使いながら楽しく魔法研究をしていた……」


 今の日常とは全く逆、次々に出てくる魔法の情報に心躍らせ毎日仕事に励む自分の姿。


 「これほどの記憶をどうして無くしたのか」


 それはいずれ解る事だろう……


 


 「【勇者召喚】……」



 

 この魔法は禁止されている以前に発動条件が難しい、だがこれを


 「やったと言うのか、グリードは……私は……」


 この情報が他の国にバレたらグリード王国は滅びるだろう、残念ながら私達は勇者の装備を作るために全員働き詰めで召喚は見れなかったが私はどうしても勇者の存在が気になっていたんだろう、全ての服に監視映像が見れるように秘密で仕込んでいた。


 「フフッ他の技術者の目を盗んで入れてるのが丸わかりだ、まぁ私の目だしな」


 次々に入れられていく高性能魔法、この装備さえ着用していたら私でさえ超人になれるだろう。


 「しかし、なぜこんなにも戦闘に特化した魔法を組み込んでいくのだ……」


 私たちにはなぜ勇者が召喚されるかは知らされていない。

 お伽話で単純に考えると魔王を倒すためだが……


 「以前から城の中でその様な焦りもなかった」


 とすると王国会議……か。



 さらに見続けていると




 {「大変だ!勇者の中に1人!女がいたらしい!」}



 慌ただしくなる研究所。

 作っていたのは男の装備3着。


 「魔法陣は私たちが書いていて完璧だったはず、どうして女勇者が産まれた……」


 私は“災の女勇者”よりそちらの方が気になった。


 「まさか本当に居るというのか……【神】が」


 何だかんだあって女勇者は殺されずに気絶しているらしいので急ピッチで残りひとつの装備が改造されていった。


 先に出た2人の勇者を興味本位で1人、部屋で監視していた私だったが……



 {まずはリュウトと言う青年からだ、フフッ、そろそろ私達の装備の性能に驚いているだろう}


 ウキウキでリュウトの装備に付いている映像を出すと


 {!?}

 「!?」


 きっと私は今、過去の自分と同じ反応をしたと思う…………それもそうだ、魔力を流せばどんな平凡な人でも超人になれる装備なのに……



 「なぜ……脱いで格安の出来の悪い装備を着てるんだ!?」


 リュウトは部屋でわざわざ買った装備に着替えていた……

 いや、クインズでは確かにあの装備は良いものだが市販と城で作った物では天と地ほどの差があるぞ!?

 100ある機能を20しか使えなくしている!


 過去と今の私の怒りをよそに映像越しのリュウトは一言。


 {「いや〜流石異世界の防具!初めて着たけど重たいぜ」}


 ブチッと切られる映像……過去の私が怒りで切ったのだろう。

 あれだけみんなで頑張って作った装備が蔑ろにされているのだ、怒らないわけがない。


 {アイツはダメだ、ヒロユキという少年を見よう}


 ヒロユキを見ていく過去の私……


 {ふむ、どうやらヒロユキの方には城からの使いが来てるみたいだな、あんなに若いのに城の使いとは……よほどの天才なのだろう、そういう人材は私は見逃さないはずだが、ここ最近忙しかったからな}


 だが此方も同じだった……


 {「ヒロユキさん!そんな装備に頼ってちゃ強くなれません!早く脱いで買ってきた安いやつをつかってください!」}




 {私達の作ってきた意味!}

 「私達の作ってきた意味!」



 なんだコイツらは!強くなるならない以前に一度は試せ!

 せめて有り難みを分かってから変えろ!


 「はぁ……」


 過去の私も脱がれた装備の映像を切ろうとした瞬間__



 {「ヒロユキさんと私のラブラブ生活は覗かせませんよ、ミカさん」}





 {………………え?}



 !?、どういう事だ!?

 ユキと言う人物はそういうと映像を“あちらから切った”


 私は彼女に会っていた?いや、この昔の私の反応からしてそれはない。

 むしろ、この監視映像は私が独自に見つけた魔法だ、切り方すら分からないはず……


 「何者なんだ……彼女は」


 それからと言うもの、ヒロユキの映像が出てくることは無かった。


 

 勇者より一気に彼女に興味がいく。


 

 きっと過去の私もそうなのだろう、最後の装備を改造していっているが心ここに在らずという感じだ。



 












 だが____









 それすらも__









 気にならない程の出来事が起こった__






 {「これ、着るの……?仕方ないか……」}





 {…………}

 「…………」



 映像に魅入る過去と今の私……その先には美しい女性が居た。


 「美しい……」


 魔法の事以外で美しいと思ったのは初めてだ。

 これが恋というならばそうなのだろう。












 私はその女性……【アオイ】から目を離せなくなっていた。














 

 

 

 

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