第453話 35番さんの為……に?


 「…………」



 「素晴らしい」



 パチパチと今度は後ろの方から近くに寄ってきているのが聞こえてきた。

 僕はその声に振り向くと____



 「どうも、私がレイロウです」



 シルクハットと正装とステッキを持った歳は40代くらいだろうか?中年のうさんくさいおじさんがいた。



 「どうも……」



 「おや?どうしました?【限界突破】を解いてもいいんですよ?」



 「解くと身体が動かなくなって奴隷刻印を入れられる可能性がありますからね」



 「はっはっはっは、それならば私は君の魔力が尽きるまで別の部屋で見ていればいいでしょう?」



 「どうだか、そこを突いて僕を油断させるかもしれない」



 「ふむ、まぁ良いでしょう、信じる信じないは自由ですが、私は前に言った通り、あなたを奴隷にするつもりはありません……ただ1つ、これを飲んで欲しいのです」



 そう言って先程の小瓶を渡してきたが、中身は先ほどと違い赤黒くドロっとしていた……まるで__



 「血?」



 「ご名答、女神様の血です」



 「これを飲めと?何の意味があるんだ?」



 「まずは神の決めた運命から逃げる事が出来ます」



 「フッ、それで?」



 「そして力が手に入ります」



 「力?魔力とか?」



 「いいえ、それがどう言うものかはその魂によって決まります……女神様のその血は__」



 「あぁ、もういい分かった」



 まったく……口を開けば神だ女神だとか……神ならまだしも女神だぞ?悪の力ってことじゃないか。



 「どうします?飲みますか?」



 「飲まなかったらどうなる?」



 「アナタは神から殺されるでしょう、そうですね、例えば“飲まなかったら私から殺されたり”」



 「っ!」



 その言葉を聞いてぼくは思いっきり男の首を切り離しに行った__



 だが!



 「これは、力のほんの一部です」



 あろう事か【限界突破】している僕の剣を片手で受け止めたのだ!



 「お前……その手……」



 その手は漆黒の鱗……いや、魔物の爪?それにしては防具みたいな……



 「不思議でしょう、ですが現実です」



 バキッと剣がその手に容易く折られる。



 「アナタには見せた方が早かったですね」



 「…………」



 「良いでしょう、もう1押ししてあげます」



 魔皮紙を取り出し映像が映し出された……そこには____



 「っ!?、35番さん!?」



 {『リンくん!』}



 身動きをとれなくなっている35番さんの姿があった!



 「卑怯だぞ!」



 「卑怯?何を言ってるのですか?私たちは『女神の翼』ですよ?…………良い加減わかってください、アナタはどんな手段、悪に落ちてでも力を手に入れるべきです」



 {『ぐぁ、きゃぁぁぁぁあ!いたい、いたいよぉ』}



 「35番さん!」



 指を鳴らされると35番さんは苦しみ出す。



 「どうしますか?このままこの人を殺してもいいんですよ?」



 {『リン君!私の事はいいから……やぁぁぁぁぁあ!いたいいぃ』}



 「解った!もうやめろ!」



 「はい」



 {『はぁ……はぁ……リン……くん』}



 「待っててね35番さん、絶対に助けるから!」



 僕は瓶を開けて飲んだ______



 「ようこそ」



 {『リン君♪』}




 「……え?」




 次の瞬間__



 「ぐぁ!ぐぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああ!!!」
















 身体をバラバラにされる様な__“魂”が無理やり切り裂かれる様な痛みが僕を襲った。

















 

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