第452話 奴隷№5


 「ウホァァア!」



 「はぁぁぁあ!」



 巨体からブンブンと重たい風を切る音を出しながら攻撃してくるのを避ける。

 皮肉なことに、1度死にそうになった事もあるおかげか冷静に対処できているな。



 「隙あり!」



 「ウホッ!?」



 攻撃をするのに隙があったので腹を斬り込むと!そのたくましいお腹の筋肉から血が出てくる。

 くそ!普通の人なら死んでるぞ!



 「ゴガッ、ウホッホ」



 「そんな物には当たらな__!?」



 その大きな拳を活かしたパンチかと思い横に避けたが巨人はそのまま僕の足を掴んだのだ!

 油断した!いくら獣化してるとは言え相手は獣人!あちらからすればこっちの動きも読まれるほどマイペースに見えていたと言う事か!


 

 くそ!対人なんした事ないのが仇となった!



 「ウゴァ!」



 そのまま片足を掴んだまま地面に何度も叩きつけられる!



 「ガッ、ハッ!グハッ!っ!」



 「ガァァァァァア!」



 「っ!」



 なんで力だ!巨人は僕の片足を持ちぐるぐると回して投げ飛ばしてくる!

 


 「くそっ!」



 迫り来る壁に埋め込まれた鉄格子が見えたので咄嗟に両腕をクロスさせガードしながら鉄格子にぶつかる。



 「ぐ!」



 硬い鉄格子は僕で折れ曲がり中にいた2匹のベルドリが騒いでいる。



 「くそ……せっかく治ったのにまたボロボロだ」



 本当にここ最近は“骨が折れる”な。

 


 「ウホホホホホ!」



 少し離れてる巨人は筋肉で硬そうな胸板を叩いて雄叫びをあげている。



 「新しい装備もボロボロ」



 あの時と同じだ、だが気分は不思議とスッキリしている……まったく……

 


 「“神に見捨てられた”とか言ってたけど、神様は俺にもう一度チャンスをくれたんだよね」



 神は言っているのだ、ここで乗り越えろ、と!


 

 「ウボァウホウホ!」



 ズシンズシンと四足歩行で巨人は僕の方へ向かってくる!



 「アイツは良い奴なんだろうけど、そっちがその気なら容赦しない!」



 まさか、連続でこれを使う様な日がくるなんて……



 「【限界突破】!」



 ゴールドの冒険者でも使える最大の超級魔法を発動させ真っ正面から走って行く!



 「ガァァァァァア!」


 

 「はぁぁぁぁぁああ!」



 拳と拳がぶつかり合い。



 「ウホ!?」



 「僕の勝ちだ!」



 巨人の拳の方から血が出る。

 気のせいか?以前よりも限界突破で得られる力が増してる気がする……解らないけど好都合だ!

 


 「ウホオオオォ!」



 「させない!」



 ガシッと両手を握る……握力勝負か!上等!



 「ウホオオオオオオオオオオオオオ!」



 「はぁぁああああああああああああ!」



 お互いとギリギリと指の骨が軋む音がする。

 限界突破使っていても握力勝負は互角!いやそれ以上か!



 「掴む力が……強い!」



 「ウホオオオオオオオオオオオオオ!」



 「ぐぁぁぁぁああああ!」



 押されるクソ!真っ正面から受けなければ!……いや違う。



 思い出すのは35番さんの笑顔。



 「僕は……その笑顔に見合う……男になるんだぁぁぁぁぁぁあ!!!」



 「ウホッ!?」



 身体の芯から力が湧いてくる!

 


 「今ここで!君を真正面から堂々と倒さないといけないんだぁぁぁぁあ!!!!」



 「ウ、ウホ!?」



 『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおりゃぁぁあああああああああああ!!!!』



 バキバキっと相手の骨を砕く感触が手から伝わってくる!

 勝った!



 『これが!35番さんを思う、愛の力だぁぁぁあっ!』



 「!?、35番だど!?」



 「はぁぁぁあ!」



 「っ!?」


 

 そのまま指の骨を折って無くなった握力を見た後相手の顎を殴り気絶させた。

 


 「はぁはぁ……」


 

 「…………」



 {お見事!}



 パチパチパチパチと向こうで拍手しているのが聞こえる。



 「さぁ……はぁはぁ……勝ったぞ!」



 勝った……生き残った……だが、相手は僕の1番やりたくないことを見抜いていた。



 {いえ、まだ相手は生きています}



 「っ!?」



 そう、死んでいないのだ……気絶させただけで息はある。

 


 「…………」



 {どうしました?まさかあなたも殺せないと言うんじゃないでしょうね?}



 「…………」



 僕は落ちていた剣を取って近づいて行く。



 {そうです、決着を……}



 そして剣を振りかぶると!



 「っ!」



 巨人は僕の足を掴んだ!しまった!起きるのが早____



 「35番を……知ってる……ど?」



 だが巨人は地面を向きながら僕だけ聞こえる声で話しかけてきた。



 「……知ってる、僕の生きる意味だ」



 「そう、が……」


 

 「っ!」



 {早くしないからそうなるのです}



 巨人は僕の首を掴んで締めてきた!



 「くっ!この!」

 


 「ここまでしが!できない!」



 「!?」



 「おでは、よわいがら……相手をごろす事がでぎない」



 ゆっくりと首を持っている手の握力がなくなって巨人は僕の肩に手を置く。



 「だけど、ごれじゃダメなんだ!なにも守れない!」



 巨人は涙を流しながら僕の剣を持ってる手を動かして自分から首に突き付けた。



 「お、おまえ!」



 「さっぎのごどばが本当なら!ごごでおでを殺していげ!」



 「な、なにを!」



 「お前はおでど同じだ!自分じゃわがっでるけど殺すごどを躊躇う!おではお前にずべでを賭ける!」



 「っ!」



 「だがら、ごごで捨てていげ!弱い自分を!」


 

 「っ!」



 「おでが!お前のずべての罪を背負う!だがらづよぐなっで!____35番を守ってくれ!」



 「うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ

あああああああああ!」
















 ____気がつくと俺は黒い巨人の首を突き刺していた……



 

 

 


 










 「あ、が……ど……う」















 あぁ、礼を言うのは僕の方だ……強くしてくれて……










 ありがとう。









 


 

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