第449話 こんなに強くなったけど……

 《クローバー山》


 「よーし、着いたぁ」


 「…………」


 ギルドから馬車を借りて目的の山のふもとに到着した。


 「じゃぁ、ちゃっちゃとテント作っちゃおう?手伝って?」


 俺が馬車から安いテントの部品を取り出していく。

 別に今お金には困っていないが“敢えて”安いものを揃えたのだ。


 「……」


 「えーっと、これはどうするんだろ?あれ?」


 うん、だけど安すぎるの買っちゃったな、どれがどう組み立てればいいのか解らない。


 「……これはこうするんだ」


 「え、あ、ほんとだ」


 リンは俺がモタモタしてるのを見て居ても立っても居られないのか次々とテントを組み立て始めた。


 「流石だね」


 「元々、俺はゴールドの冒険者だったんだ、こういうのは慣れている」


 「そっか♪」


 「…………」


 黙々と2人でテントを組み立ていく。


 「《メルキノコの採取》……この時期になるとメルピグが栄養をたくさん蓄えててそれを貰うメルキノコはすごく美味しいんだってね」


 「…………」


 俺はテントを組み立てる片手間に話を続ける。


 「元々はクバル山のクバル草を食べるんだけどクリスタルドラゴン討伐の時に山は半壊、だけどクバル草事態はどう言う訳か近くにあったこのクローバー山に繁殖しだして自動的にメルピグもそこへ……て事で、この依頼が復活した訳だけど」


 「……」


 「あの時、僕とエスが出会った時ってこの依頼だよね?」


 「……あぁ、正確には俺達はヒロユキのパーティーについていったって感じだがな」


 「フフッ、さて、っとテントも終わったし、行こっか」


 「……」


 

 依頼事態はゴールドの仕事、今回は特別にムラサメさんを使ってこの依頼を取ってきて貰ったのだ、あの人は頼めば本当に何でもしてくれるなぁ。


 俺は身体は子供頭脳は大人の○ナン君が犯人を倒す時の様に足装備に指を当てて魔力を流して一気にかけあがっていく。


 「……」


 思った通り、この程度の加速ならエスは普通に着いてきてくれていた。


 「どう言うつもりだ?今更こんな事して」


 「ん?まぁいいじゃない?時間なら急いでる訳じゃ無いし、エスには何で魔神に会うかとか僕の考えを言ったこうかとね」


 「…………どうして俺なんだ?」


 「何か悪い事でも?」


 ちなみに風を切る音で会話が聞こえないなんて事がない様にちゃんと装備にそれをシャットアウトする魔法がついていて使っているよ!


 「他にも居るだろう、ルカとか……ムラサメとか」


 「まぁその2人にも今後話す時が来たら話すよ、でも1番最初にエスに話すのは____おっと」


 そこで俺は止まる。


 「キウルーの群れか」


 「そうみたいだね」


 森の中を走っていると目の前に道を塞ぐ様にキウルーの群れがお食事中だった。

 

 「えーっと、22頭くらいいるね、食べられてるのは草食大型魔物の大マンモスかな?」


 「どうする?殺すか?」


 別に遠回りも出来るけど……


 「いや、ここは僕に任せてエスはそこで見ていて」


 「解った」


 俺はゆっくりと正面から堂々と群れに歩いていくと


 「ガルルルルルル!ガウ!」


 全員が警戒して俺に牙を向けて威嚇してくる。


 「大丈夫、痛みは一瞬だから」


 腰のベルトに魔力を流すとクナイが2本出てきたのでそれを掴み、【獣人化】して身体能力をあげる。


 「そりゃ!」


 クナイを群れの1頭に投げると命中、威力は無く、かすり傷を負わせただけだが俺の攻撃を受けたキウルーはその場で泡吹いて倒れた。


 「まだまだ行くよ!」


 クナイのお尻につけていた【糸』を引き寄せてクナイを回収して俺は群れの中に突っ込んだ。


 「ガゥガゥ!ガッ」


 クナイの切れ味と痺れ毒はアバレー代表騎士のお墨付きだ、一撃攻撃を当てればすぐに戦闘不能に出来る。


 「よいしょ!」


 「キャイン!」


 次々と来るキウルーを痺れさせていく。


 


 


 __そして






 「はい、君が最後の1匹」


 

 数10分で片付けた。



 「……」


 「ごめん待たせた?」


 「いや、大丈夫だ」


 「そかそか、じゃ行こ」


 何事も無かったかの様にまた走り出す俺たち。


 「さっきの話の続きだけど」


 「あぁ」


 「魔神に魔王ロビンを復活させてもらいに行こうと思う」


 「なに!?」


 「後、魔神と取引をしようと思う」


 「相手は魔王より上の存在だぞ?そんな取引に耳を傾けるとは思わない」


 「うん、だから戦闘には絶対になると思う……この依頼にエスを連れてきた理由もある」


 「なんだ?」


 「さっきの戦闘を見て僕はまだ足手まといになる?」


 「………」


 「ハッキリ言って?」


 「ハッキリ言うとあの程度の相手にあれだけ時間がかかってはダメだ、アオイが時々だす【本気の姿』を使ったとしても魔神に敵うかすら怪しい、もちろんそれは俺も言えるが」


 「そっか……エスも気付いてる通り僕は望んで【あの姿』にはなれないんだ、それこそ【目撃】魔法みたいに突然来る」


 「なら尚更だな、さっきのキウルーを倒すのがお前の動きだとすれば殺されるだろう」


 「そっか……言ってくれてありがとう」


 「大丈夫だ、お前は俺が守る」


 「違うよ__“みんなで”戦う、だから僕も強くなる……その為に……いや、僕の為に……なんだろ?うまく言えないや、だから直球で言うね」


 「……」



 「僕を強くして」










 「了解した」






 


 


 


 


 

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