第7章
第446話 あの日がまた来てしまった……
《アバレー王国 アオイ家》
あぁ……神様、許してくれ。
「大丈夫なのじゃ?」
「大丈夫じゃない、痛い、苦しい」
来てしまった……来てしまったのだ。
頭痛、目眩、吐き気、貧血、体の節々の痛み。
……そして股を中心に広がる不快感。
「あの日が来てしまった……」
「のじゃ……」
現在自分の家の硬いベッドで寝ていてルカに看病してもらっている。
ムラサメさんは察してくれて何日か前に個人で情報収集に行ってくれていて、エスは俺が魔神に会うと決めたその日からすぐにどこかへ行ってしまった。
「そう言えば、ルカはこの日が来るの?」
「うむ、ワシもお主ほど重くないが来るのじゃ、まったく……人間のメスと言うのは面倒なのじゃ」
「うん、ホント女って面倒だよね……」
「何か食べたいものはあるのじゃ?」
「食欲ないなぁ、すぐ吐いちゃうし」
「でも少しでも胃に入れておかないと身体が弱っていく一方なのじゃ」
「じゃぁミクラルで最近噂の《キコアプルン》で」
「それは遠慮が無さすぎるのじゃ!?せめてアバレーの《甘樹液寒天》にするのじゃ!」
「甘さのベクトルが違うもん」
「ぐぬぬ、何とかギルドから取り寄せれるかの……」
あぁ、食べたいキコアプルン……後なんだろ、むしょうにお酒も飲みたい。
「ねぇ、ルカ」
「なんなのじゃ?今ムラサメに連絡を取ろうと__」
「ただいま戻りましたですぞ我が君!」
扉を勢いよく開けて来たのは国の代表騎士ムラサメさん。
おい、扉の建て付け悪いんだからゆっくり閉めてよね。
「おぉ、ちょうどお主に連絡しようとしてたのじゃ」
「ほほう?何ですぞ?その前に、我が君、どうぞですぞ」
「え?」
「お、お主……こ、これは!」
机に置かれたもの、それは!
「今ミクラルの若い人たちの間で流行ってる《キコアプルン》と言うデザートですぞ、我が君がこんな事態になっているのでせめて食べやすく美味しいものをと魔神の情報のついでに調べに調べて朝早くから並んで買って来たですぞ」
ふぁぁぁぁぁぁああああああああああ!?
「お主は未来予知か何か出来るのじゃ!?」
「む?何を言ってるのですぞ、こんなもの紳士として当たり前ですぞ」
「ム、ムラサメさん……ありがとう!」
「グハッ!わ、我が君が我輩に……我輩に感謝の言葉と笑顔を!ぐわぁぁぁあ」
ムラサメさんは殺虫剤あびた虫の様に床に転がり周り喜んでくれている……いや!でもヤバいよ、なんなのこの人かっこよすぎ……弱ってるからキュンとなっちゃうよこれは。
ちなみに1人称が変わっているのは俺がルカ同様で“友達として接して”と言うと本人は悩みに悩んだ末1人称を変えることで許してほしいとの事なので了承した。
本人曰く、親しすぎる仲になると逆に辛いと言う事らしい……うん。
「それで、情報はどうじゃったのじゃ」
ルカがそんなムラサメさんを無視しながら机に置かれたキコアプルンを俺に渡してくる。
「確かに、どうだった?今まで誰も知らなかった事だし大変だったでしょ?あむ」
あぁ、口の中で広がる甘さが身体の芯まで染み渡る……そして唾液と絡むと溶けてより一層脳が喜ぶ。
うまい!
「確かに、今までは隠されている……いや、国王しか知らずその国王同士で呪いを掛け合ってでも黙っていた事ですぞ、かなり動き回ったですぞが出て来たのは1つだけ」
「むしろ1つ出て来たのがすごいよ」
「もったいなき御言葉ですぞ、その1つと言うのがサキュバスの魔王、ロビンも言っていたですぞが《六英雄》を見つけて書き出す方法ですぞ」
「なるほど、確かに前に戦った事がある人達なら詳しいだろうね」
「と、言う事で、6人の内4人の六英雄の居場所をつきとめたですぞ」
「え!?そんなに!?」
さ、流石と言うべきか、この数日で半分以上見つけてくるなんてどれだけすごいんだこの人。
「これに関しては簡単でしたですぞ、だって__」
「?」
「我らの仲間の中に《六英雄》の1人が居るのだから」
「え?」
えええええええええええええええぇええ!?
「おぉ、あいつなのじゃ?あむあむ」
いやいやいやいや、プルン食ってないで、ええええ!?
「ど、どうして言わなかったの?」
「一言で言うと我輩はアイツ嫌いですぞ」
「ワシは《六英雄》とやらがよく分からないので完璧に忘れていたのじゃ」
「えぇ……そんな人いったい誰が連れて来たのよ」
「お主なのじゃ」
「我が君ですぞ」
「あー、はいはい『僕』ね」
ホント、何考えてんの『僕』は!
いや、待て、もしかしてこれを見越して?……なわけないか。
「じゃぁその人に話を聞いてから残りの人たちの場所を?」
「そうですぞ、まぁ場所を聞くと言うより誘き出し方と言う方が適切ですぞ」
「誘き出し方ねぇ、まぁ取り敢えず詳細は今度聞くよ」
ちょっと今は気分が優れないからそんなに頭が回らないしね……まぁいつも回ってないけど。
「もちろんですぞ、今日来たのはその途中経過とこのキコアプルンを美味しいうちに届けるためですぞ」
そう言って3個あったプルンを机に置いて家を出ようとした
「あ、1個自分の分忘れてるよ?」
「あぁ、これは我が君が気に入ったらおかわりにと買っておいたものですぞ、是非食べてくださいですぞ」
「うぉっふ……」
何この人かっこよ……心身ともに疲れた俺にはキラキラして見えるよぉ。
「では、我が輩はこれで__」
「……」
「おぉ、エス殿」
ムラサメさんが入り口ドアを開けるとちょうどエスが入る所だったらしい。
「!?……退け!」
「うお!ですぞ!?」
「のじゃ!?」
そのままベッドでやつれた俺の顔を見てエスは顔色を変えてムラサメさんとルカを押しのけながら俺の所に来た。
「ど、どうしたの?」
「誰にやられた!」
…………………へ?
「え、えーっと」
「毒か!毒を盛られてたのか!__これか!」
「あ!それは!」
俺のおかわりのキコアプルン!
「何の毒か調べる!」
「ま、待って!」
もはや俺の静止は間に合わずエスは素早く魔皮紙にキコアプルンを入れてしまった!
あの魔皮紙は冒険者の間で使われる魔皮紙で物を中に入れれば最後、分解されて成分を魔皮紙に表示する魔皮紙!
「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」
俺を含め3人は声に出てしまった!いや!出るよ!それより!
「な、なんだ?お前ら」
「エス……」
「!?」
普段の俺ならばこんな事で怒らなかっただろう。
だが、俺の身体、心の全てに余裕がない中……キコアプルンと言うオアシスを削除された【怒り』
【ルカ……ムラサメさん……ちょっと外に出てて』
言われた通り2人は出てくれた。
「何なんだ!アオイ!」
【黙れ!こんのオタンコナスウウウウゥ!』
「っ!?」
【座れ』
「……」
【違う、床に正座しろ』
「…………………」
【教えてやる、今から徹底的に保健体育の授業じゃぁぁぁあ!』
俺は怒りに任せてエスに“女の事”を教育した。
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